カテゴリーアーカイブ:歴史遺産

三位一体改革49

2005年6月14日   岡本全勝
7日の読売新聞には、青山彰久解説部次長が「中教審、議論迷走」「義務教育国庫負担金で対立、公立校活性化の視点必要」を書いておられました。
「これまでの審議で見ると、論点の一つは『全国的な教育の水準と質をどう確保するか』であり、もう一つは『確実な財源保障をどうするか』になってきた」「だが、この(財源)論点だけでは、『財政再建に迫られる国の負担金制度と、改革が必要な地方交付税制度のどちらが安定的か』という水掛け論になる可能性もある」
「多くの国民が知りたいのは、どちらの方法なら、学力低下や不登校などの様々な問題を抱える公立小中学校がよくなり、現場の学校が活気づくか、という点だろう」
「地方側にしても、分権を言うなら、国庫負担金を地方税に変えるとどんな教育が今以上に実現するのか、最終的に市町村や学校の権限拡大につながる『都道府県内の分権』の制度設計案まで示されなければ、観念的な主張になりかねない」
指摘の通りです。
1 財源議論なら、一般財源化しても問題ない。いいえ、一般財源化すべきです。
負担金護持派の主張は、「交付税総額の先行きが不安」ということです。でも、かつて解説したように、地方財政より国家財政の方が赤字である=国家財政(国庫負担金)の方が心配なのです。
この主張なら、もし水掛け論になっても、国庫負担金を廃止した方がよいのです。なぜなら、国庫負担金をもらうために、あるいは配るために、膨大な人件費と事務費がかかっているのです。負担金制度を廃止すれば、それだけで大幅な経費削減になるのです。
もっとも、文科省は「職員がいらなくなる」から、一般財源化に反対しているのすが。
2 負担金がなくても、教育水準は変わらない。
どうやら、この点は理解されてきたようです。国庫負担金がない高等学校が、問題なく運営されていることについて、中教審の委員の方々は反論されませんね。
3 地方は、国庫負担金がなくなったら、今以上に教育がよくなることを示すべき。
そうです。一般の人が、三位一体改革を理解しにくいのは、「教育がこれだけよくなりますよ」という、説明が足らないからでしょう。
もっとも、1で述べたように、教育が今まで通りであっても、事務費と人件費が減って、日本にとってはプラスなんです。(6月7日)
月刊「地方財政」(地方財務協会)6月号に、遠藤安彦元自治事務次官の講演録が載っています。前に紹介した矢野浩一郎さんの講演の続きです。バブル期前後から現在までの交付税の歴史を語っておられます。交付税に関心のある方は、必読です。議論のある事業費補正についても、拡大のいきさつなどを知ることができます。私は、交付税課補佐として、財政担当審議官である遠藤さんにお仕えしました。
また、同号には、青木宗明神奈川大学教授が、フランスの地方分権を日本と比較して考察しておられます。「ともに単一制の国家形態をとりつつ、中央集権と官僚主導の代表国家、ワールド・チャンピオンとして名を馳せた末に、今や地方分権に向けた改革を進めている」「ところが、内面を凝視すると、両国の状況はまったくといって良いほど異なっている」「フランスからみて、昨年夏に我が国で繰り広げられた補助金削減をめぐる騒動はまったく理解できない。一国の総理大臣から要請され、地方が苦労の末に削減案を取りまとめたにもかかわらず、最終的には地方の意に反した政府決定がなされるというのは、フランスでは想像すらできない事態なのである」。
その他、井手英策横浜国大助教授の「義務教育費国庫負担金制度をめぐる政策論争史」、平嶋彰英地方債課長による「最近における憲法論議と地方自治、地方財政」なども載っていて、内容が濃いです。(6月13日)
「骨太の方針2005」の策定作業が、行われています。昨年この時期には、「3兆円税源移譲目標を書き込むか」が大争点になりました。また「補助金削減案は地方団体に考えてもらう」という「小泉・麻生ウルトラC」が提案され、すごく盛り上がりました。去年と違い、今年は地方財政・三位一体改革については、争点になっていません。
記者さんたちが、残念そうに「今年は静かですね」と、愚痴を言いに来ます。彼らは「記事を書いてなんぼ」ですから、活躍した去年が懐かしく、今年は力のふるいようがないのです。
今年が静かなのは、三位一体改革の目標数値は昨年すべて決めたこと、また18年度までの「全体像」を去年11月に政府与党で決め、実行中だからです。もちろん、全体像には積み残し(残る6,000億円の補助金廃止、義務教育国庫負担金の扱い)がありますが、これも別途作業がされているので、今回は新しく書き込むことがありません。
もっとも、三位一体改革は、地方団体が「口やかましく騒がないと」前に進みません。静かになって、先送りできたら、守旧派の勝ちですから。その点について、記者さんたちはみんな心配してくれています。「こんなに静かだと、火が消えますよ」。「6団体は何をしているんでしょうか」と。(6月14日)

佐藤徹著「市民会議と地域創造」

2005年6月14日   岡本全勝

高崎経済大学の佐藤徹講師が、「市民会議と地域創造」(ぎょうせい)を出版されました。市民参加によるまちづくりの方法として、近年多くの市町村で取り入れられている手法です。これまでの審議会とか、またNPOとも違い、市民やNPOなどの参加による協働型の政策形成です。

三位一体改革48

2005年6月6日   岡本全勝
5月30日の産経新聞は「義務教育費国庫負担、三位一体改革に赤信号」を解説していました。「最大の焦点である義務教育費国庫負担金制度をめぐって、存続を求める文部科学省と自民党文教関係議員の巻き返しが功を奏しつつあるからだ。また生活保護費と児童扶養手当の見直し問題でも厚生労働省が押し気味で、いずれも地方側は後退を余儀なくされている。」
毎日新聞は、「知事たちの闘い-地方分権は進んだか」第13回「義務教育論争、国庫負担はなぜ必要?」を載せていました。2004年7月15日の知事会議での義務教育国庫負担金をめぐるやりとりです。(5月30日)
1日の日本経済新聞は、「補助金削減、自治体、足並みに乱れ」「義務教育費巡り溝」を書いていました。その中に「地方案実現率わずか5割」として、各省別の金額が出ていました。拙稿「続・進む三位一体改革」では資料16として、各省ごとに、地方案と、各省回答と、政府与党合意の金額を3つ並べておきました。こちらの表の方が、おもしろいですよ。ちなみに、地方案は3.2兆円、実現したのは1.1兆円ですが、各省回答はたったの810億円でした。これが、日本の官僚の実態です。
骨太の方針で、3兆円の税源移譲を閣議決定したのですから、各省は補助金の一般財源化を拒否するなら、代案を出すべきでしょう。去年の秋には、官房長官が繰り返し、各省大臣に指示を出しました。
また、公共事業補助金の一般財源化について、財務省は反対だと記事は伝えていますが、それなら別の補助金の一般財源化を提案しないと、責任は果たせませんよね。
サボタージュする官僚に対し、内閣がどのような政治主導を発揮するのか、見守りたいと思います。
ところで、中教審を始め、義務教育費国庫負担金の一般財源化に反対する人が、その一番の根拠に「交付税は借入金が多く、今後交付税が減らされ、義務教育費が十分確保されないおそれがある」ことを挙げられます。
でも、これって、一方的な指摘ですよね。国と地方の財政を比べれば、国の方がはるかに悪いのです。借金はフローでもストックでも、国の方が多いです。「プライマリーバランスは地方の方が良い」という、攻撃すらあるのですから。
「今後、交付税が減らされるおそれがある」と主張するなら、「交付税より財政状況の悪い国家財政が削減され、義務教育国庫負担金も交付税以上に減らされるおそれがある」と、主張すべきでしょう。
「国庫負担金だから削減はないだろう」という考えは甘いです。現在でも、不交付団体に対する義務教育費国庫負担金はカットされています。また、これまで国は、財政難を理由に補助率カットを行ってきました。
もっとも、この理由での反対には、反論が簡単です。「じゃあ、財源さえ確保されれば、一般財源化で問題ないんですね」と。この反対は、分権論や制度論には何にも応えていない、いわば逃げですから。(6月1日)
4日の朝日新聞社説は「三位一体改革、決着への論議が始まった」でした。「ことし、まず決着を迫られるのは、この6千億円の中身だ。地方は公共事業への補助金の廃止を求めるだろう。福祉など使い道が限られている負担金に比べ、廃止されれば地方の裁量枠が広がるからだ。義務教育の国庫負担も、廃止か存続かを決めなければならない。」
「三位一体改革の二つの潮流のうち、まず分権を進めて効率化を図り、その結果として財政再建を実現させていくのが筋である。昨年までの論議が混乱した一因は、この道筋が共通認識になっていなかったからだ。今年はまず国と地方で、改革の順序を確認すべきだ。」
「昨年、最終局面で沈黙した小泉首相と、新しい知事会長の麻生渡福岡県知事の責任は重い。」
よく整理してある主張だと思います。このような、マスコミの監視と後押しがなければ、分権は進みません。ありがとうございます。どんどん、注文を付けてください。(6月4日)
6日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘いー地方分権は進んだか」14回を載せていました。
月刊「自治研究」(第一法規)6月号に、岡崎浩巳総務省官房審議官(自治税務局担当)が、「平成17年度の三位一体の改革と税源移譲」を書いておられます。この間の税源移譲に関する議論とあわせ、現在、所得譲与税などで暫定的とされている「移譲」を、実際に地方税とする場合の課題などについても整理されています。(6月6日)

2005年度

2005年5月29日   岡本全勝

28、29日と、地方財政学会2005に、大阪まで行ってきました。会員は600人となり、出席者は350人を超えたそうです。学者の先生方と旧交を温めるとともに、多くの地方団体職員からあいさつを受けました。「ファンです」とか、「HP見てますよ」とか(ぐふふ・・)。
このようにたくさんの公務員が参加しするのは、良いことですね。大きな市や近くの団体からだけでなく、小さな村や遠くは佐賀、長崎、沖縄からも。勉強しようという意欲に、敬意を表します。また、研究の方も空論にならず、より実態に即したものとなるでしょう。
来年は、東洋大学(東京)でです。会員でなくても、参加できます。その頃になったら、このHPでも案内しましょう。多くの方の参加を歓迎します。もちろん、会員になっていただくことも大歓迎です。
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私の出番は、「第10分科会-交付税・補助金改革Ⅱ」での討論でした。発表のうち、矢吹初先生「地方財政の外れ値の分析」と星野菜穂子さん「地方交付税の財源保障―高齢者保健福祉費を対象に」は、出色の報告でした。
前者は、交付税の算定結果から、平均像から外れた市町村を「機械的に」選び出し、その原因を探るものです。後者は、交付税の財源保障機能について批判があるが、それは主に投資的経費であり、それに対し福祉の経費ついて財源保障の重要性を主張します。また算定方法・結果と実際の支出との関係を分析したものです。
いずれも、これまでにないアプローチで、新たな研究の地平を拓いています。論文が完成したら、ぜひ広く読んでいただきたいです。
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持田信樹東京大学教授と一緒にコメントするのは光栄でしたが、鋭い持田先生の後に意見を述べるのはつらいものがありました。また、交付税制度の改正やその影響を分析していただくのはありがたいですが、1990年に交付税課補佐となって担当した者としては、「被告人の弁明の場」でもありました。それでも、交付税に関心を持っていただき、正しく理解していただくことは、ありがたいです。逃げ隠れせず、説明しますよ。(5月29日)
【訂正】
今年度の地方財政学会の参加者を350人と書きましたが、1日目約400人、2日目約250人だったそうです。(6月12日)

三位一体改革47

2005年5月26日   岡本全勝
18日の読売新聞は、青山彰久記者が「三位一体、税源移譲・交付税改革、見えぬ決着点。最終年度に問われる小泉政権の力」を解説しておられました。
「改革のヤマ場は越えたかのような空気が漂う。だが、補助金を削って税源を移し、地方の自由を広げて歳出構造を変え、交付税をスリムにするのがゴールとすれば、現状は遠い」。
ご指摘の通りです。(5月18日)
18日の経済財政諮問会議で「三位一体改革の議論」が再開されました。麻生大臣は、「地方税財政改革の推進」を説明されました。
19日の日本経済新聞は「三位一体改革攻防再び」「義務教育争点に」を書いていました。「『6000億円の税源移譲に結びつく補助金改革を確実に実施すべきだ』会議では麻生太郎総務相がこう述べ、公共投資関連の施設設備の補助金などを削り税源移譲するよう主張した」。朝日新聞は「財務・総務省対立再び」「地方交付税改革、抑制・維持、深い溝』と書いていました。
財務省は、地方の歳出削減ばかり要求していますが、平成13年度(小泉内閣発足時)を基準に取ると、平成17年度では、国の一般歳出は1.4兆円削減なのに対し、地方の一般歳出は6.6兆円もの削減です。しかも、国の予算は、この間の国庫補助金の一般財源化での減も含めてです。これを考慮すると、横ばいです。交付税総額も3.4兆円削減しました。この点は、拙稿「続・進む三位一体改革」をご覧ください。(5月19日)
18日の経済財政諮問会議での麻生大臣が説明した「地方税財政改革の推進」のうち注目すべきは、情報公開です。今までも各団体の財政状況や職員給与の状況は公表されていましたが、住民によりわかりやすくするため、全団体について同じ様式で公開することを進めます。インターネットで見ることができます。これによって、他団体との比較が簡単にできます。「地方税財政改革の推進」のp10です。(5月21日)
月刊「地方財政」5月号(地方財務協会)に、坪井ゆづる朝日新聞論説委員が「3年目の三位一体改革、民意の追い風が要る」を書いておられます。
「だれのための何の改革なのか、がはっきりしない。改革がうまくいけば、主権者である国民、住民が恩恵を受けるはずだが、その具体的な中身がなかなか見えてこない。だから、論議が3年目を迎え、いよいよ決着が図られるというのに、住民の生の声はほとんど聞こえない」
「国民、県民、市民といった、さまざまな立場を併せ持つ住民が主役である以上、個々の自治体が担う役割は大きい。住民がそれぞれの場面で主権者として発言し続けなければ、この改革は進まない。今こそ民意をまとめ、それを追い風にする工夫が自治体に求められている。」
また、矢野浩一郎元自治省財政局長の講演録「高度経済成長から安定成長へ~地方交付税の成長と質的転換」が載っています。交付税の歴史に関心のある方は、是非お読みください。昭和30年代から50年代の間の、交付税改革の歴史、交付税が果たした役割などが、コンパクトにまとまって、またポイントが的確に解説されています。長い論文より、わかりやすいです。
矢野さんは、交付税創設期、充実期、投資的経費算定改革期に担当された方です。また、その後も財政局幹部として、交付税に携わってこられました。私もご指導を受け、矢野さんを「交付税の生き字引」と尊敬しています。(5月23日)
25日の毎日新聞社説は、「三位一体改革-地方分権推進が出発点だ」でした。「既得権益や省益をからませてはいけない。地方財政改革といいながら、自らの権限を維持しようという思惑が見え隠れするのでは、住民自治に反する。」
「その観点からすれば、今秋までに中央教育審議会で結論を得ることになっている義務教育費8500億円の扱いは、補助金削減、税源移譲が当然である。文科省や自民党文教族の主張は、義務教育には国が責任をもつべきだという論理のもと、地方への関与を継続しようという意図が明白である。」(5月25日)
25日に中央教育審議会義務教育特別部会で、国庫負担制度の本格的な議論が始まりました。今朝の各紙は、大きくその様子を伝えていました。「制度堅持派と廃止を主張する地方側との間で、激しい応酬となった」と。(5月26日)