今日から、日大大学院での授業が始まりました。初日から、学生さんも集まり、早速、授業を開始しました。今学期は、「公共経営論」です。市役所組織の経営だけでなく、地域社会の経営まで広げて、話をしようと考えています。
地方自治体の課題は、組織の課題と、地域の課題の二つがあります。前者は、行革であったり、NPM、組織と人の管理などです。後者は、不況と不安に悩む地域社会を、どのように活性化し安心な社会にするかです。市役所組織は、あくまでも住民生活を豊かにするための「手段」であって、地域社会の経営を考えないと、組織経営論だけでは狭いのです。「夕張市の経営」といった時に、市役所だけを考えていても、市域の活性化にはなりません。「国家経営」といった時には、国家行政組織(省庁組織)の経営ではなく、日本国・日本社会の経営を考えるでしょう。
実は、自治大学校の基本課程(幹部養成課程である第1部、第2部)は、公共政策(政策立案能力養成)と行政経営(組織管理能力養成)の2本柱からなっています。それと同じです。また、春学期に講義した、地域社会のリスクと行政組織のリスクの2つにも、対応しています。
春学期もそうでしたが、このテーマをまとまって話すのは初めてなので、準備が大変です。でも、自分の考えを整理するのには、良い機会です。
参加の院生さんたちに連絡です。今日使わなかった配付資料は、来週使うので、持ってきてください。
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講義など
日本大学2010年秋学期
2010年秋学期は、「公共経営論」です。
授業の内容
主に市役所を例に、「地域社会の経営」と「市役所組織の経営」を議論します。
「国家経営」が、行政機構(省庁)の管理だけではなく、国民の集合体としての国家を経営すること、豊かで安全な社会を発展させることを指すように、公共経営も地方自治体の組織を運営することだけではありません。社会は、政治システム、経済システム、社会システムの3つからなっていますが、経済システムと社会システムをうまくいくようにすることも、政治と行政の仕事です。
何を行政の課題とするかは、その時代と社会を反映しています。今、行政改革だけでなく、地域経営が議論になるのは、それが社会の課題であると認識されたからです。
講義では、これまでどのような課題が認識され、どのように取り組まれてきたか。また、これからの課題は何かを議論します。
授業計画
はじめに
1 講義の狙い
2 公共経営、2つの次元
3 公共とは何か
4 政治と行政の役割:3つのシステムの統合・経営
第1部 公共経営論の現在
第1章 今、なぜ議論されるのか
1 停滞する日本と地域
2 行政と日本社会の成功、その後に来た停滞
第2章 「日本の改革」:行政改革から社会の改革へ
1 行政改革の歴史
2 近年の改革の分類
3 行政改革から構造改革へ
第2部 自治体は地域を経営したか
第3章 市役所は「良い地域」を作っていたか
1 住みよい地域とは何か
2 地域の課題は何か
3 市役所はマチをつくってきたか
第4章 地域を経営する
1 住みよい地域をつくる主体
2 政府の役割
3 行政の役割の変化
第3部 市役所の経営
第5章 組織管理論から経営論へ
1 官と民のガバナンス論
2 行政改革の進化:スリム化から新公共管理論へ
3 社会の制度設計
第6章 市民の満足
1 市民の満足を得る成果(アウトカム)
2 市民を納得させる説明(アカウンタビリティ)
第7章 組織の管理
1 部門の管理
2 全体の管理と部分の管理
3 役所では経営と管理が行われているか
第8章 大きな政府と小さな政府
1 政府の大きさとは何か
2 大きな公共と小さな政府
授業の予定
シラバスに記載した内容を、少し順序を変えて講義します。
9月18日 はじめに
9月25日 第1章 今、なぜ議論されるのか
10月2日 第1章続き
10月9日 第2章 「日本の改革」
10月16日 第2章続き
10月23日 第2章続き、運営・管理と経営・統治との違い
10月30日 (大学院休み)
11月6日 第3章 市役所は「良い地域」をつくっていたか
11月13日 第4章 地域を経営する
11月20日 休講
11月27日 第4章続き
12月4日 第5章 組織管理論から経営論へ
12月11日 第5章続き
12月18日 第6章 市民の満足
1月15日 第7章 組織の管理、第8章 大きな政府と小さな政府
大学院出講準備
今日は、朝から気合いを入れて、日本大学大学院の講義の準備を再開しました。18日から秋学期が始まるので、そろそろ本腰を入れないと。
秋学期は、「公共経営論」です。これは、これまで、地方行政や日本の行政を、講義したり書きためてあるので、しゃべる分には困りません。もちろん、最新の情報に入れ替える必要があります。
その後に気づいた素材や、講義のアイデアは、例によって「紙封筒」に入れて用意してあるのですが、それを並び替え、各回の講義ノートにしなければなりません。そして、レジュメをつくり、配付資料をつくらなければなりません。全体を、14回の講義にバランス良く配分する必要も、ありますしね。
大変ですが、締め切りがあるから、日頃考えていることが、整理できます。ありがたいことです。
大学院春学期終了
日本大学法学部大学院での春学期講義が完了しました。講義では、社会のリスクと行政の役割を鳥瞰し、行政のリスク管理・危機管理の問題点を整理しました。
これまで、行政の危機管理に関する本をいくつか読んで、疑問に思っていました。私の経験に照らして、違和感があるのです。大災害にあった時と不祥事を起こした時を、一緒に論じるのは変です。危機の際の指導者論も不祥事の際のおわびの仕方も、それぞれ重要ですが、それは行政学の本筋ではありません。
県庁総務部長、総理秘書官、そして消防大学校の勤務を通して、いろいろ考えました。今回、講義の機会をいただいたので、今までの考えを整理することができました。このような「締め切り」が無いと、なかなか考えをまとめることができません。また、学生という「観客」兼「批評者」がいてくれると、独りよがりにならずにすみます。毎週土曜日におつき合いいただき、ありがとうございました。この後、レポートの採点が待っています。
2010.07.10
今日から、授業は第2部「行政のリスク」に入りました。第1部は社会のリスクに対し、行政はどう対応するかを議論しました。第2部は、行政にとってのリスクです。そこには、市役所の建物が被災した場合のように、社会の危険が市役所にも及ぶ場合と、市役所が問題を起こして市民におわびをする場合の2つが含まれます。本屋に並んでいる「危機管理」は、しばしば後者です。しかし、これは、社会のリスクではないですよね。
まず、社会のリスク特に災害などは、危機管理監の仕事です。これに対し、市役所の危機は、総務部長の仕事です。これで、違いがおわかりいただけると思います。
次に、市役所の危機のうち、被災した場合は「業務継続計画」の出番です。それに対し、おわびの場合は、法令順守(コンプライアンス)や「おわびの仕方」「再発防止策」の出番です。
危機管理やリスクという言葉は便利で、多用されています。そこで混乱が生じています。
今日までで春学期は終わりなのですが、休講した分の補講を、来週行って終わりです。