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行政-災害復興

日本行政学会の報告レジュメ

2012年5月19日に、日本行政学会で報告した際のレジュメです。そのほかの添付資料は省略します。

日本行政学会・共通論題(資料)                 平成24年5月19日
復興庁岡本全勝

大震災からの復興ー政府の役割と組織の運営

1 今回の特徴ーこれまでにない国や自治体からの支援
・被害がこれまでにない大きさと範囲、市町村役場が被災
・阪神淡路大震災(1995年)の教訓
(1)政府の支援(タテの支援)
①責任組織の設置と一元化(被災者支援本部、復興本部、復興庁)
②直接の被災者支援
・緊急物資の調達と配送、被災者への支援情報の提供(壁新聞など)
③市町村役場への支援(財政、職員、技術など)
④インフラだけでなく、生活や産業の復旧を重視
・雇用創出基金(被災者を臨時雇用)、仮設工場や仮設店舗の貸し出し
⑤制度改正と特例制度
・民間アパートを仮設住宅として借り上げ
・復興特区制度と交付金制度
⑥増税をして、資金を確保

(2)各セクターによる積極的な支援ーお金と物資だけでなく、知恵や労力を提供
①他自治体からの応援(ヨコの支援)
職員の応援、避難者の受入れ、役場機能の代替
②企業の貢献とボランティアの活躍(外からの支援)
・支援物資の提供、支援活動、企業の社会的責任(CSR)
・サービスと生産の早期再開(基礎的インフラ以外に、ガソリンスタンド、コンビニなど)

2 復興に向けて
(1)地震津波被災地
・道路や堤防などの本格復旧ー計画を策定済み
・住宅と町並みの復旧ー津波被害地域で再建は危険。移転の住民話合い
(2)原発事故災害地域
・放射線量の低い地域から、住民の帰還
・当分の間、帰還できない地域の住民への支援
(3)街が復興する3つの要素
①インフラの復旧=道路、住宅、施設、ライフラインなど
②暮らしの復旧=公共サービス(教育、医療、介護)と商業サービス
③働く場の復興=雇用と産業(企業活動と事業の再開)

3 臨時組織の運営ーこれまでにないことをする。そのための組織をつくる。
(1)組織の設置と運営
①被災者生活支援本部の設置
②職員の招集、組織の立ち上げ
③任務の発見・確認と日々の作業

(2)一元的組織設置の機能と効果
事業官庁と自治体の役割を前提として、「司令塔」を作る意義
①情報の集約と業務の調整
・現地の状況と課題を全体的に把握
・各府省の情報交換の場
・府省間で課題と問題意識を共有
・各府省への連絡と指示
②各組織の補完
・市町村役場や県庁を補完ー直接支援
・各省庁の隙間を埋める
・企業やNPOとの連携
・関係府省を束ねる
③「見える組織」
・自治体、被災者、関係団体、議員、マスコミからの「窓口」ー指摘、不満、問合せ
・被災者、関係組織、国民に対して、情報提供と政府がしていることを伝える
・存在自体が「政府を見せる」

被災者生活支援本部の記録http://www.cao.go.jp/shien/index.html
山下哲夫執筆「政府の被災者支援チームの活動経過と組織運営の経験」季刊『行政管
理研究』2011年12月号(行政管理研究センター)
復興庁http://www.reconstruction.go.jp/
岡本全勝のページhttp://zenshow.net/

復興会議

今日18日朝、総理官邸で復興推進会議(全閣僚会議)を開きました。今、私たちが抱えている主な復興の現状と課題インフラ事業などの進捗状況原発避難区域への取組方針などを報告しました。
インフラの復旧については、一部の事業を除き、おおむね計画通りに進んでいます。ただし、問題はこれからです。道路や堤防は、関係者の同意があれば工事を進めることができます。ガレキの片付けも、仮設焼却炉をたくさんつくっています。これで急速に進むでしょう。
問題は、街並みの再建です。地震被害地はガレキを片付ければ、そこで住宅や商店を再建することができます。津波被害地は、その場所で再建することは危険です。街ごと移転する必要があるのです。多くの住民のこれからの生活がかかっています。合意は、並大抵ではありません。
また、原発避難区域での現状と課題を、お示ししました。除染、賠償、インフラ復旧、当分帰還できない方への支援と、省庁の内外を含めて総合的に対策を打つ必要があります。それぞれは専門家・責任者がいますが、復興庁が全体を統括し始めています。まだ、この一覧表は十分ではありませんが、地元市町村と課題を解決していきます。
また、復興の現状データを最新のものにしました。ご利用ください。

復興支援ファンド

企業や民間は、さまざまな形で、復興を支援しています。その一つに、お金を集めてあるいはお金を出して、復興にかかわる事業を支援するものがあります。「民間復興ファンド」と呼ばれるものです。ファンドとは、一般的には投資信託のことをいいますが、復興関係では「多数の人から集めた資金で投資を行う集団投資スキーム」と解説した方がよいでしょう。
いくつもの形があるのですが、おおまかに分類すると、次のようになります。
①投資信託(本来の意味のファンド)
②集団投資スキーム(投資事業有限責任組合等)
③基金・財団
①②は、配当を受けつつ、出資したお金を第三者に売却して回収することを前提としています。金融機関が行っています。③は、補助や助成などのいわゆる寄付を行うものを指しています。主に、財団や基金が行っています。

まずユニークな例として、小口の資金を募って、地場産業への投資と支援を組み合わせたものを紹介します。
ミュージックセキュリティーズ「セキュリテ被災地応援ファンド」は、1口10,500円で出資を募り、5,000円は出資金(うまく行くと配当がもらえます)、5,000円は応援(寄付です)、500円は手数料です。そして自分が応援したい企業を選びます。特典として、商品などがもらえます。ぜひ、ご覧ください。

金融機関が被災地の企業を支援するものの例としては、次のようなものを挙げておきます。
日本政策投資銀行と七十七銀行「みやぎ復興ブリッジ投資事業有限責任組合
野村證券「東日本復興支援債券ファンド1105

財団が支援するものとしては、
ヤマト福祉財団(クロネコヤマト)「東日本大震災 生活・産業基盤復興再生募金」=被災地の生活基盤の復興と水産業・農業等の再生支援を目的に活動している公的な団体や基金などに寄附・助成を行います。
三菱商事「三菱商事復興支援財団」=被災地の復旧・復興支援に携わるNPOやNGOなどの団体の活動をサポートするために助成金を交付します。
まだまだたくさんあるのですが、今日はこれだけにします。事例を集めてくれた職員に感謝します。

復興推進委員会の現地調査

昨日と今日(15、16日)と、復興推進委員の方々のお供をして、宮城県・岩手県の現地調査に行っていきました。推進委員会は、いわば「復興庁のお目付役」です。「どこが進んでいないか、どこに問題があるか」を、第三者の目で、見ていただきます。私たちにとっては、「怖い存在」です。
しかし、政府や自治体が独りよがりにならないためにも、他方で、現場を見ない情緒的な批判ではないように、この委員会の存在は重要だと考えています。委員の方々の指摘は、私たちにとって、有意義な要素です。今回も、耳に痛いことをいくつも指摘いただきました。順次、お答えしていきます。

私は最近、福島県への対応が多く、岩手県と宮城県への視察は久しぶりでした。「変わったなあ」と思うところと、「まだ進んでいないなあ」と思うところがありました。そして「こんな課題も出ている」「こんな試みもでているのだ」と思うこともありました。
私たちの仕事は、「これだけのことをしました」で満足してはだめで、「これだけのことが現地で実現しました」ということで評価しなければなりません。難しいことです。
途中のバスから見る山々の新緑は、それはきれいでした。八重桜が残り、田植えが始まり。昨年この時期に訪れた時のことを思い出しながら、いろいろと考えました。