読売新聞は、毎月11日に、復興の特集を組んでいます。5月11日は、「玉浦西、集団移転」でした。宮城県岩沼市では、津波被害に遭った沿岸部6集落を、集団移転して1か所に集めました。これが「玉浦西地区」です。 農地を2メートルかさ上げし、20ヘクタールの宅地を造成しました。ここに、約千人が移住します。
住民が話し合い、移転計画をまとめました。それには、1年半もの時間が、かかりました。しかし、工事を始めると、この方が他の地区と比べて、完成は早かったのです。しかも、住民の満足度も高く、防災集団移転の成功例となっています。もちろん、住民の意見が、すべて実現したわけではありません。
すでに8割の世帯が引っ越しを終え、地区内にスーパーマーケットが開店する7月に、まちびらきが行われます。私も、先月視察に行きましたが、きれいな戸建て住宅が並んでいます。しかも、随所に気配りと工夫がしてありました。
記事をお読みください。写真入りで、わかりやすく解説してあります(インターネットでは、読めないようです)。
カテゴリーアーカイブ:災害復興
様々な復興支援
みずほ銀行が、「福島産直市」を応援してくださっています。以下、その宣伝です。主催は東京都です。
福島県産の新鮮な農産物や地酒のほか、会津柳津名物の「あわまんじゅう」等の名産品の販売や観光名所のご紹介など、日々多くのお客様でにぎわう都営地下鉄神保町駅から福島の魅力をお届けします。
5月14日(木)、15日(金)12:00~19:00。神保町駅地下1階改札外 新宿線コンコース。アスパラガス、トマトなどの農産物、日本酒、銘菓等の販売及び観光PR
近畿大学が、福島県川俣町を支援してくださっています。そのニュースです。「川俣町の木、近畿大に植樹 復興支援への感謝込め」福島民友5月3日。近大の川俣町復興支援プロジェクト。
「東北応援ビレッジ 2015」、5月9日、10日、東京丸の内で。
いろんな方々が、いろんな支援をしてくださっています。全体像は、とても把握できません。今日は、「紹介せよ」と指示されたもの、そのごく一部を紹介しました。
社会科学による大震災の分析
日本学術振興会による東日本大震災学術調査の成果が、東洋経済新報社から、「大震災に学ぶ社会科学」として発刊されます。その第1回として、第4巻『震災と経済』が発行されました。編集は、齊藤誠・一橋大学大学院経済学研究科教授です。内容は、次の通りです。
第1章 東日本大震災の復興予算はどのように作られたのか?
第2章 東日本大震災が消費支出と物価に与えた短期的影響:高頻度データによる実証分析
第3章 東日本大震災の家計消費への影響について: 恒常所得仮説再訪
第4章 労働市場から見た震災直後・復興過程における経済状況
第5章 決済システムから見た震災直後の金融経済状況
第6章 大震災と企業行動・企業金融
第7章 災害と自治体間の協力関係
第8章 東日本大震災が日本人の経済的選好に与えた影響
この巻は、経済学の立場から、様々な角度で大震災の影響を分析しています。目次を見ながら、「このような課題もあったなあ」と、分析角度の多様さを感じています。社会科学者を動員して、このような調査研究をしてくださった関係者、とりわけ代表である村松岐夫先生に感謝します。
政府の対応について、辛口の検証も書かれています。私たちとしては精一杯したつもりですが、第三者の目から見た評価も重要です。勉強させてもらいます。ご関心ある方には、お薦めです。また、公共図書館にも、備えていただきたいシリーズです。
賠償が、難しい問題を生む
産経新聞のオピニオン欄「iRONNA(いろんな)」に、大江紀洋さんが、「原発賠償は終わりにしよう」を書いておられます。
・・・「賠償金でパチンコ、高級車」。よく耳にするこんな話だけでは本質は捉えられない。移住しようとしても帰還しようとしても、賠償金の格差が人々を曇らせてきた。損害賠償では未来は作れない・・・
・・・もちろん、避難者の生活再建はいまだ十分ではない。しかし、とくに「避難生活に伴う精神的苦痛に対し1人あたり月額10万円を支払う」という精神的損害賠償のあり方は、自立に進もうとする人を足踏みさせてしまうように見える。例えば、除染やインフラ整備が終わった楢葉町で、昨年前半には行うはずだった避難指示解除がいまだ実行されていない大きな理由の一つがこの賠償金である。避難指示解除から相当期間(この場合1年とされている)が過ぎると賠償金が打ち切られるからだ。
ある程度の期間分を算定して一括で前払いする、弱者への対応は別途用意するなど、細やかな制度設計は必要だろうが、震災後5年というこのタイミングで、避難区分などによらず、全域における「打ち切り」という方向性を打ち出していくことが、福島の未来のために必要ではないだろうか・・・
・・・現状、支払われている賠償金は不十分なのだろうか? 実は、これまで合意に達して支払われた賠償金の平均額はきちんと開示されている。最新の資料は、2014年12月末時点でのもので、原子力損害賠償紛争審査会の配布資料として公開されている。これによれば、4人世帯の場合、詳細は表のとおりだが、個人賠償(精神的損害賠償、避難費用、就労不能損害等の計)は4人合計で約4000万円、宅地・建物で約4000万円、家財で約500万円、田畑・山林で約500~1000万円、住宅確保損害で約2000万円が支払われている。 これらの各項目ごとの平均額は、それぞれ母集団が異なる(全てを請求しているとは限らないし、持家や田畑は所有している人といない人がいる)ため、足し上げることには注意を要するが、単純合計すれば、帰還困難区域で1億5318万円、居住制限区域で1億503万円、避難指示解除準備区域で1億351万円となる。賠償金がどの程度であれば適切かという判断は非常に難しいが、政治のリーダーシップでそろそろ区切りを示していくことが欠かせないのではないだろうか・・・
難しい問題です。原文をお読みください。
心の復興事業
東日本大震災から4年以上が経過し、仮設住宅での避難生活が長期化する人や、災害公営住宅に移転した人の、心のケアやコミュニティづくりが重要な課題となっています。このため、被災者の人と人とのつながりをつくり、生きがいを持って前向きに暮らしていくための取組を、支援することにしました。「心の復興事業」と名づけています。その第1次採択が決まりました。
人とのつながりをつくること、生きがいを見いだすことを、他人が働きかけることは、なかなか難しいことです。本人にその気がないと、できません。しかしすでに、各地で町内会やNPOによって、その機会をつくる取り組みが試みられています。畑作業や手仕事をしてもらうなど、住宅に引きこもらず、体を動かすこと、皆と一緒に活動することです。これは、行政がこれまで取り組んだことのない分野です。中央省庁には「人とのつながり支援・生きがい作り担当省」はありません。
復興庁では、「インフラ復旧と住宅再建」「産業となりわいの復興」「被災者の健康とコミュニティ再建」の3つを、復興の柱にしています。この3つは、モノの復旧、機能の復旧、つながりの復旧と、言い換えてもよいでしょう。しかし、インフラ整備、産業振興、医療福祉などの担当省はあるのですが、人とのつながり支援やコミュニティ再建を担当する部局はありません。また、住宅建設や産業振興、医療提供は、資金を出せば「整備や提供」を担ってくれる企業・団体・専門家があります。しかし、人とのつながりやコミュニティ再建は、それを提供する企業などはないのです。というより、お金で提供できることではありません。モノと機能の復旧に対し、つながりの復旧は、行政にとって難しいのです。行政・政府が試みる新しい挑戦です。
このページで何度か繰り返していますが、私は、これを「サービス提供国家から安心保障国家への転換」と位置づけています。参照「被災地から見える「町とは何か」 ~NPOなどと連携した地域経営へ」