カテゴリー別アーカイブ: 図書紹介

地方行財政-図書紹介

新しい地方財政論

中井英雄先生、齊藤愼先生、堀場勇夫先生、戸谷裕之先生が、『新しい地方財政論』(2010年、有斐閣)を出版されました。コンパクトな本ですが、地方財政制度の解説・自治体の経営・公共経済学の理論・地域づくりなどの実証、という4つ分野を含んでいます。多面的な視野から地方財政を分析しておられて、類書がないと思います。詳しくは、リンク先の目次をご覧ください。良い入門書だと思います。これだけの内容を、コンパクトにまとめるには、かなりご苦労があったと思います。

2008.04.26

矢吹初青山学院大学教授らが、『地域間格差と地方交付税の歪み』(勁草書房、2008年4月)を出版されました。
地方交付税による財政調整の結果を各団体ごとに調べ、通常の値から外れている「外れ値」となっている団体を調べるのです。もちろん、政令市や特別区のように、行財政制度が違う団体は当初から除外しますが、その他の団体は対象とします。小規模団体も豪雪地帯も、貧乏団体も富裕団体もです。すると、「交付税の歪み」が出てくるというのが、先生の主張です。
その際に「遺伝的アルゴリズム」という手法を使って、外れ値を探し出すのです。ここは難しくて、かつて先生に教えてもらった時も、十分理解できませんでした。人為でなく、機械的にシミュレーションするのです。ここが、客観的に「外れ値」を検出する核心です。
ちなみに、交付税の算定には、足し算・引き算・かけ算・割り算しか使っていないので、はるかに簡単な知識で理解できるようになっています。「一般の方でもわかるように」というのが、地方交付税の哲学です。
さて、元交付税課長としては、この外れ値を説明しなければなりません。離島や豪雪地帯では、割高になる行政コストを、算式を使って基準財政需要額に加算します。これが、外れ値になる可能性があります。港湾があるかないかなども、要因となります。
次に、ふるさと創生事業や公共事業促進のため、事業費補正を使って、各団体が発行した地方債の元利償還金の一定割合を算入しました。これは、各団体の発行額という「非客観的数値」を基礎としているので、外れ値になることが多いと思われます。ただし、これについては、2001年以降廃止縮小しました。その後、頑張る地方応援プログラムが始まっており、これは外れ値になる可能性があります。
本には、CDーROMも付いています。各団体でも、調査検証が可能です。ご関心ある方に、お勧めします。

2008.01.25

小西砂千夫関西学院大学教授が、「自治体財政のツボー自治体経営と財政診断のノウハウ」(関西学院大学出版会)を出版されました。宣伝せよとのご指示ですので、ご紹介します。
先生の言葉によれば、売りは「住民の目線で自治体財政を解説するのがねらいです。初めて話し言葉で書いてみました」とのことです。住んでいる市町村の財政を勉強するには、もってこいの本です。市町村議会議員や職員、市役所の財政に関心のある方にお勧めします。