23日の経済財政諮問会議で、「地方分権」が議論されました。分権委員会第1次勧告の作業が大詰めに来ています。道路や河川などについては、一部が国直轄から地方へ移管されるようです。これは大きな前進ですが、分権委員会の主張と比べると、まだ十分ではありません。また、諮問会議有識者は、国の出先機関の地方移譲を主張してこられました。しかし、国(出先機関)の権限が地方に移らないと、出先機関を地方に渡すことはできないのです。今日の有識者資料では、次のように主張されています。
「国と地方の役割分担は、次の大原則で振り分けるべきである。
【大原則】
地方ができることは、地方に委ねる。国は、全国的に統一して定めることが必要な事項に限り、標準となる基準を示すにとどめる。個別の運用については、地方がその実情に応じて、実施する。国は、必要に応じその事後チェックを行う。
・例えば、農地転用の許可にあっては、国として農地の総量を確保するための仕組みを講じ、事後チェックを強化しながら、個別の農地の転用については、国による許可権限の移譲や国への協議の廃止ができないか。」
そのとおりですね。義務教育だって国が基準を決めて、授業は市町村が担っています。農地転用許可も、一つ一つを国が行う必要はありませんよね。全国で一定規模の農地を確保する必要があれば、それを法律などで決めるべきでしょう。
これを受けて、総理は、次のように発言しておられます(大田大臣の記者会見での紹介によります)。
「丹羽委員長には、勧告の取りまとめに御尽力いただいて、お礼を申し上げたい。地方に任せられないと言っていると、いつまでたっても地方分権というのは進まない。住民にとって、より便利になるように、前に進めていかなくてはいけない。地方自治体も、国に依存するのではなくて、なすべきことを自らの責任で決定するように意識を改革していくことが重要だ。
民間議員提案の中に地方分権の大原則が書かれておりますが、大原則は、民間議員提案のとおりだと思う。増田大臣には、この大原則に立って知恵を出し、各省と意見の隔たりがあるところは、地方分権に向けて着実に前進させてほしい。私からも各大臣に、内閣の一員として分権を進めるよう指示しているところだ。」
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地方行財政-分権改革
道州制
20日の日経新聞経済教室「再考・道州制」は、齊藤愼教授と中井英雄教授の「財政的公平と効率追求を、道州間で水平調整」でした。道州制を単なる府県合併に終わらせるな、市町村を重視し道州はコンパクトに、と主張しておられます。(5月20日)
22日の日経新聞経済教室「再考・道州制」は、中村邦夫経団連副会長の「まず、国の出先機関改革を」でした。日本の課題の根本的解決へ、道州制導入を。行政サービスの向上、出先機関の整理で。地方への人材再配置で、地域活性化急げ、を主張しておられます。
心強い御主張です。経済界が主張してくださるの、ありがたいですね。ぜひ原文をお読みください。
2008.05.12
10日の読売新聞では、青山彰久編集委員らが、分権員会について、「省庁協議一巡、ゼロ回答続いたが。大胆な分権勧告へ」を書いておられました。
・・各省の反対はほとんど、国が関与する必要性や都道府県の力不足を理由としている。しかし、丹羽氏は周囲に「各省は地域を良くしようなんて考えていない。権限と財源を握って偉そうにしたいだけだ。そんなの許せない」と漏らしており、あくまで大胆な分権を勧告する考えだ。分権委では「政治判断を迫るべきだ」という声が強く、勧告には各省が反対する項目も入れる考えだ。今回の勧告の根拠となる地方分権推進法は尊重義務を定めていない。首相の決断次第の面があるため、首相の求心力低下に伴って各省の抵抗が強まっているという見方が出ている。「勧告を受けた首相が官僚に屈した判断を下せば、内閣支持率はさらに低下する」(首相周辺)という指摘もある・・
2008.05.09
9日の朝日新聞社説は、「地方分権―官僚になめられるな」でした。
・・あまりのやる気のなさに、ため息が出る。地方分権改革に対する官僚の態度のことである。
・・分権委のこうした要求に省庁側が示しているのは、ほとんどが拒否や先送りなどの「ゼロ回答」だ。 非協力的な態度に、福田首相は先月、「各府省の対応は不十分。閣僚は政治家としての判断で取り組んでほしい」と苦言を呈した。
たとえ国益に反しても自分たちの権限は手放したくないというのが、官僚の本音ではないか。そんな官僚を動かすことこそ、政治の役割である。政権の求心力の低下を見透かしたかのような、官僚のサボタージュを許してはならない。
分権委は抵抗にひるまず、大胆な勧告を打ち出して、首相に実行を迫るべきだ。勧告の内容をきちんと実行するためにも、増田氏は各閣僚を説得しておく必要がある。 福田内閣がいつまで続くかは定かでないし、議員バッジもない増田氏だ。だが、ここは地方自治での実績を武器に、役所の利益を代弁しがちな閣僚たちをねじ伏せる迫力を見せてほしい。
2008.05.06
6日の日経新聞社説は、「行財政の効率化へ地方分権の断行を」でした。
・・政府が最重点で取り組むべき課題のひとつは、行財政の効率化である。そのカギを握るのが地方分権だ。中央省庁の抵抗は強いが、福田康夫首相は強い決意で取り組むべきだ。分権は、首相の指導力抜きでは実現しない。官僚任せでは小泉純一郎内閣が取り組んだ、国と地方の税財政に関する三位一体改革の二の舞いになる。民主党も、この問題では政府・与党と一致点が少なくないだろう。