カテゴリー別アーカイブ: 分権改革

地方行財政-分権改革

市長が手を出せない職業紹介

31日の朝日新聞が、国の行政改革の影響で、地方のハローワーク(職業安定所)が廃止されることを解説していました。その中で、地方団体が「国がやらないなら地方にやらせてほしい」と主張していることが、紹介されています。また、経済財政諮問会議は、職業紹介業務を民間に開放することを求めています。しかし、厚生労働省は、「雇用の確保は最低限のセーフティネット」であり、国が担うべきだとして拒否しています。
私は、地方団体に移管し、民間開放もすべきという考えです。セーフティネットであっても、国が直接執行していない分野は、たくさんあります。義務教育・生活保護・保育園・介護保険・警察などなど。命に関わる医療も、民間の医師や病院がやっています。「セーフティネットだから」という理屈は、通りません。国として一定の基準を定め、実行は地方団体なり民間に委ねればいいのです。
住民の雇用の場確保や紹介は、地方団体にとって、重要な責務です。それについて、知事や市長が手を出せず、責任も持てないのです。企業誘致をしても、従業員確保はできません。地域の問題なのに、国の行革で減らされては、市長もたまったものではありません。実は、地方行政にとって、労働行政は最も「縁遠い」分野なのです。ほとんどの業務が、国の直接執行となっていて、地方団体ができることはありません。職業訓練校くらいでしょうか。厚生労働省が、本当に職業紹介業務を充実しようとするなら、基準を決めて地方団体に委ねるべきでしょう。

2007年の分権の動き

26日の読売新聞「潮流2007」で、青山彰久編集委員が、「地方格差、分権改革は・・」を、大きく解説しておられました。
・・「分権よりも格差是正を」というのが2007年だった。たしかに、政府は4月、地方分権改革推進委員会を12年ぶりに設置した。委員会は「基本的考え方」をまとめ、中間報告を出した。だが、ねじれ国会の下で福田政権の意欲は見えず、地方も改革熱が冷え込んでいる・・
これまでの過程を見ると、地方分権をめぐる勢力には、①地方への権限と財源を求める伝統的な「自治・分権派」、②肥大化した政府を民営化と分権化によって変えようとする「小さな政府派」、③どの自治体も分権に耐えられるとは限らないと見る「行政統制派」、④緩やかな中央集権の継続を求める「集権養護派」の4つがある・・詳しくは、原文をお読みください。

国の出先機関移管・知事会試案

全国知事会が、19日に「国の地方支分部局の見直し案」を議論しました。そこに試算が出されています。それによると、検討対象の地方支分部局の国家公務員95,901人のうち、地方に移譲すべき業務に係る職員数は、最大で約75,000人です。また、廃止すべき業務に係る職員数は、約1,000人としています。国に残るのは、約20,000人です。地方に移譲すべき業務に係る職員数は、二重行政の解消や組織等の見直しなど大幅な合理化を行うと、必要な職員数は約55,000人と見込まれます。すなわち、約20,000人もの削減ができるのです。
新聞記事によると、各省が抵抗するので進まないだろうとの、予測もあります。削減対象になった者に意見を聞けば、反対するに決まっています。まな板の上の鯉に包丁を持たせても、自分では切ることはできません。それを決定するのは、料理人である政治の仕事です。

分権勧告があぶり出すもの

30日の読売新聞に、青山彰久編集委員が「分権改革推進委中間報告。官の抵抗、どうさばく」を解説しておられます。
・・「本当にこんな改革ができるのか」と多くの人が思うに違いない。中間報告に盛り込まれたほとんどの事項に、各省が反対しているからだ。同委員会は来年5月を目標に、中間報告を基にした第1次勧告を首相に行う。「省庁の壁を突破するのをバックアップするのは福田首相の情熱」と丹羽委員長は言う。今後は、来春が一つのヤマ場になりそうだ・・官の抵抗を首相はどうさばくか。「政と官」の関係を問う場面がありそうだ・・首相に勧告尊重の義務を課さない今回は、委員会が言いっぱなしで終わる危険はある。だが、委員会は、筋を通した勧告を作って首相に委ねれば、「最後は政治が決定する」と促すこともできる。政策過程が透明になり、首相の責任をはっきりさせることになるかもしれない・・

分権改革委員会・中間とりまとめ

22日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」は、谷隆徳編集委員の「分権改革委、省庁に切り込む。地方政府、3度目の正直?」でした。・・1990年代後半の第一次分権改革でも、国道や一級河川の管理権限の地方への移管が一時検討されたが、実現しなかった。官僚と族議員がタッグを組んで徹底抗戦したうえ、当時の橋本龍太郎首相が省庁の事前了解を勧告案の前提に求め、自ら汗をかくことを避けたためだった。小泉政権が取り組んだ税財政の三位一体改革も「地方案を尊重する」と繰り返し発言した首相自身が指導力を発揮する場面は最後までなかった。過去二度の改革ともに中央省庁の権限はほぼ無傷で終わったといえる・・今度は三度目の正直となるのかどうか・・