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地方行財政-三位一体改革

三位一体改革45

17年度の動き
4月3日の毎日新聞は「発言席」で、佐藤栄佐久福島県知事の「地方分権と地方自治の本旨」を、4日は連載「知事たちの闘い・分権は進んだか」の第5回目を載せていました。
4日の朝日新聞社説は、「地方行革・競い合って成果を出せ」を書いていました。「地方自治体は、三位一体改革で、分権社会の担い手としての資質を問われている。ここで行政改革をさぼれば、住民の不信は高まるばかりだ」と主張しています。
同感です。国より進んだ行革の成果を見せて、国より頼りになる行政であること、住民による監視が効果的であることを、示そうではありませんか。(4月4日)
11日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘い-地方分権は進んだか」第6回を載せていました。
10日の日本経済新聞は「規制改革推進3か年計画」を解説していました。「規制改革」は「地方分権」と並び、「官僚主導型国家」を変える2つの柱です。
地方分権は、行政分野での改革、地方自治体に対する規制改革であり、官僚主導・中央集権を改革しようとするものです。規制改革が、経済や社会分野において、民に対し、官僚主導・市場統制を改革しようとするものです。
1995年に規制緩和として始まった動きは、経済的規制から社会的規制へと範囲を広げ、規制改革と呼ばれるようになっています。いくつか効果が上がっているのですが、国民からの認知はいまいちのようです。ここでも、地方分権と同様、官僚の抵抗・サボタージュがきついので、国民に目に見えるような改革が進まないのです。
自動車の車検期間の延長と、幼稚園・保育所の一元化が象徴的だと思います。
かつてに比べ、自動車の性能は格段によくなっています。それでも、業界の反対で、車検期間は延長されません。なぜ、自動車会社は「うちの車はそんなに簡単に故障しません」と主張しないのでしょうか。車検制度のない国も多い、と聞いたことがあります。
幼稚園と保育所の統合も、なぜ進まないのですかね。かつて調べたら、幼稚園ばかりの市町村と保育所ばかりの市町村がありました。利用者からすれば、その違いは理解できないと思います。たぶんこんな縄張り争いをしているのは、日本だけだと思います。官僚って、こんな時には「外国では・・」を主張しないんですね。
官僚制は、業界の利益を考える仕組みであって、消費者の利益を考える仕組みになっていません(「新地方自治入門」p290)。(4月11日)
遅くなりましたが、月刊「地方税」17年3月号(地方財務協会)に、小西砂千夫関西学院大学教授が「税源移譲・受益と負担・地方税負担率」という論文を書いておられます。三位一体改革が進んだ先の、地方税財政制度のあり方論です。
「受益と負担の一致は、平均概念でなく限界概念であるはず」「統治という観点からすれば、地域別に受益と負担の一致が望ましいということにはならない」
「地方交付税が必要なのは、国が地方に対して、財政力格差の制約を受けることなしに、権能配分ができるためである」「それをしないならば、地域への権能配分に、経済力に応じて格差をつけることが考えられる」など、これまでにない、しかしなるほどと思う議論が展開されています。
また、「標準的行政を、補助事業であるとか法律に根拠があるといった理由に求めることは無理であり、最適な財政規模は税負担との比較考量で決めるしかない」と述べておられます。
三位一体改革が進み、ようやく「これまでの地方財政のドグマ」「既存のパラダイム」を超えた議論ができるようになった、という思いがします。一部の学者にありがちな「理論倒れ」でなく、説得力ある議論です。ご一読をお勧めします。(4月12日)
18日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘い」第7回を載せていました。(4月18日)
18日に、地方6団体代表と麻生総務大臣との会合が持たれました(19日付、日本経済新聞など)。議論の課題は、大きく言って2つです。1つは、三位一体改革の最終年度(平成18年度)の完成。すなわち、残っている義務教育・生活保護・公共事業を決着すること。もう1つは、19年度以降の「三位一体その2」の道筋をつけることでしょう。(4月19日)
三位一体改革のうち、生活保護費についての国と地方の協議が、20日から始まります。今朝の朝日新聞は、詳しく解説していました(4月20日)
21日の日経新聞は、「三位一体改革最終攻防・上」を載せていました。最終局面を迎えているのに、国側の関係者に補助金廃止に切迫感がなく、地方団体が焦りを感じている、という趣旨です。(4月21日)

三位一体改革44

中央教育審議会の委員問題について、地方6団体は、4日「このまま議論に参加しないわけにはいかない」として、審議会の本委員会への委員推薦はしないものの、特別部会に委員3人を推薦することを決めました。そして、「最終的な結論は、国と地方との協議の場で出す」よう、官房長官に申し入れました。
地方側の不信は、理解できます。このHPでも何度か書きましたが、中教審は文部省の機関です。文部大臣の意向に反する答申が出ることは、期待できません。しかも、会長が審議入りする前から、「国庫負担金堅持」を公言しておられるのです。「とほほ・・」ですよね。
審議会は「広く専門家の意見を聞く」という建前ですが、多くの場合、原案は官僚が書きます。「官僚の隠れ蓑」との批判は、当たっているのです。
このあと、どのような審議がされ、答申が出るのか。新聞もきっちり報道してくれるでしょうから、日本の政治過程の実例として、ご覧ください。そういう観点から見ると、国民が「審議会とは何か」を勉強する、良い機会です。(3月5日)
7日の日本経済新聞には、中西晴史編集委員が、世論調査をもとに、「三位一体改革わからない8割。分権の利点、地方に説明責任」を書いておられました。
三位一体改革を、「急ぐべき改革とは思わない」という人が52%、「早期に断行すべきだ」が38%です。前者は、「地方に権限を移しても、行政が良くなるとは思わない」「国と地方がお金の奪い合いをしているだけだから」という理由が多いです。
ただし、「地方より国の人材の方が優秀」の回答は3%しかありません。「税金の使い道を国、地方いずれで決めるべきだと思いますか」という質問に対しては、地方が43%、国が12%でした。
「既得権益を握る者が、自ら手放さないのは古今東西共通の現象だ。ならば、国民が追い込む以外にないが、盛り上がりに欠ける」「税金の無駄遣い排除に三位一体改革が役立つのかどうか。地方側が分権の利点を国民にわかりやすく訴える必要がある」という主張です。
毎日新聞は「知事たちの闘い、地方分権は進んだか」連載3「新段階へ発言と行動」を、載せていました。(3月7日)
3月11日、小泉総理大臣は、衆議院文部科学委員会に出席しました。これは、義務教育費国庫負担金改革についての、総理のこれまでの発言に対し、野党が真意を質したいと要求したもので、異例のことです。NHKニュースによると、次のとおりです。
〈総理は、「わたくしは、地方に裁量権を拡大しても教育の軽視にあたらないと思っている。全国知事会など地方団体も『任せてもらえばできる』と言っており、その考えは今後も尊重していきたい」と述べ、平成18年度以降も、国の負担を削減し、地方に移譲すべきだという考えを示しました。ただ、小泉総理大臣は、「この問題で、意見の対立があっておかしくない」と述べ、中教審での議論に加え、国と地方の協議の場での意見も聞いて、結論を出していく考えを示しました。〉
総理は、ぶれておられません。心強いことです。一般財源化反対論者からすると、総理を呼びだしたのは、やぶ蛇でしたね。(3月11日)
新聞記者さんとの会話
記:最近、三位一体の話題がなくって。
全:そうだね。3月いっぱいは、知事さんも議会があるし。
記:でも、今からいろいろ仕込んでおかないと、これからの戦いに勝てませんよ。
全:新知事会長も、いろいろ考えておられると思うよ。
(3月15日)
21日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘い・地方分権は進んだか」4を載せていました。三位一体改革のスタート時に、地方自治体が参加していなかったことが取り上げられています。このような検証は、どんどんしてほしいですね。(3月22日)
26日の日経新聞は、「三位一体改革、国と地方対立再燃」を書いていました。4月から新たな議論が動き出すことや、義務教育・生活保護・公共事業についての国と地方の対立を解説していました。(3月26日)
27日の日経新聞は、「義務教育費国庫負担、堅持へ与党攻勢」を書いていました。負担金維持派の主張は、相変わらず、「教育水準と教職員の質を維持するため、負担金が必要」ということです。しかし、ここで何度も解説したように、またこの記事も書いているように、「国庫負担金は教員給与の問題で、教育論とは関係がない」のです(三位一体改革17三位一体改革26)。
こんな主張をされたら、負担金を受けていない高校の教員や私学の先生は、怒るべきです。いつまで、こんな「変な理屈」を主張し続けるのでしょうか。(3月27日)

三位一体改革43

9日の読売新聞に、「地方財政計画」が解説されていました。「スリム化改革どこまで、巨額の使い回し検証なおざり」という副題でです。いかにも、地方財政にムダがあるかのような解説でした。
財務省の主張は載せながら、地方団体や総務省の主張はまったく取り上げていません。まるで「××省の広報紙」みたいでした。解説という形を取っているだけに、よけいたちが悪いですね。たとえ××省の主張が正しいとしても、両方から取材し、「被告」側の主張も載せるべきでしょう。それが記事の基本であり、解説ならなおさらです。読売新聞らしくないですね。(2月9日)
【国の基準】
10日の朝日新聞は、厚労省による児童福祉司の配置基準見直しを伝えていました。児童虐待など児童相談を行う、県や大都市に置かれている専門職員です。
記事にもあるとおり、地方交付税では「人口6万8千人に1人」の基準で計算(交付税が配られるように)しています。一方、厚生労働省は「10万~13万人に1人」を配置基準にしてあるそうです。
交付税の計算基準も、かつては厚生省の基準に合わせていたのですが、近年、問題が大きくなり、各県の要望や実態に合わせて人数を増やしてきました。現場では、国の基準の改定など待っておられないのです。これが、分権が進んだ一つの形でしょう(私は、厚生省も基準を変えていたと思ってました)。(2月11日)
17年度の地方財政計画、地方交付税法等の改正案、地方税法改正案が、8日に閣議決定され、国会に提出されました。審議を待ちます。自治財政局のHPに載りました。(2月13日)
12日の産経新聞は、「三位一体改革論議再起動」として、1面を使って解説していました。読売新聞は、「知事講座シンポジウム、地方はどう自立するか」を載せていました。また、毎日新聞は社説で「全国知事会、国と闘う力量をつけよ」を主張していました。(2月14日)
全国知事会長が決まりました。記者さんたちとの会話です。
「会長選挙がこんなに注目されるのは、初めてですね」
「それだけ、知事会が力を持った、しかも中央政界が気にするようになった、ということでしょう」
「でも、穏健派の麻生知事では、急進派の増田知事に比べ、三位一体改革は進みにくくなりませんかね」
「それは違うだろう。穏健派が会長になると、急進派の突き上げを気にせざるを得ない。急進派から『手ぬるい』と批判されないために、積極的にならざるを得ない。逆に急進派が会長になったら、穏健派と妥協しなければならないから、ペースを落としただろうけど。『軍縮ができるのはタカ派』と同じだね」
新会長と知事会に期待しましょう。このHPでも書いているように、地方団体から次々と仕掛けていかないと、この改革は進みません。(2月17日)
今朝の新聞各紙は、知事会長選の結果を解説していました。「分権改革、重い公約」(朝日)、「政府、地方無視できず。三位一体改革、協議を継続へ」「存在感を増す知事会、分権の具体像カギに」(日経)、「国との交渉力増す、投票手続通じ」「求められる施策能力」「自民に安どと警戒感」(毎日)、「政策能力持つ組織へ変革必要」(産経)などです。読売は、青山彰久記者の「意見提出権で内政に積極関与を」を載せていました。
社説は、「痛み覚悟で結束を保てるか」(日経)、「新会長に三つの注文」(朝日)、「地方の時代、調整型では通らない」(毎日)でした。
知事会への期待がいかに大きいか、そして何を期待しているかがわかります。(2月18日)
19日の読売新聞社説は、「全国知事会長、自己改革への指導力も大事だ」を書いていました。21日の毎日新聞は「知事たちの闘い、地方分権は進んだか」連載1を、日経新聞は「麻生知事会スタート、懸案山積の船出」を載せていました。(2月22日)
24日の産経新聞は「知事会長、昔名誉職、今は激職」を書いていました。日経新聞夕刊は、中西晴史編集委員の「全国知事会長に麻生氏、容易でない改革の成果」を載せていました。(2月24日)
28日の毎日新聞は、「知事たちの闘い・地方分権は進んだか」連載2を載せていました。主張は「国民の共感を味方に」です。
2日の朝日新聞では、坪井ゆづる論説委員が「三位一体決着なるか。改革3年目、今後の行方探る」を書いておられました。「改革は3年目に入り、いよいよ決着のときを迎える」です。問題点を、切れ味よく分析しておられました。ご一読ください。(3月2日)
3日の朝日新聞夕刊には、新藤宗幸千葉大教授が、「全国知事会、制度構想で官僚と闘え」「地方分権改革の政治勢力へと成長」を書いておられました。(3月3日)

三位一体改革42

30日の読売新聞は「国・地方協議の場作り難航、三位一体改革での義務教育費、生活保護費」を詳しく伝えていました。「義務教育費の自主財源化を目指す地方側が、中教審にも足場を築いて発言権拡大を狙おうとしているのに対し、文科省がこれを阻止しようとしている格好だ」。
ある記者さんとの会話
「中央教育審議会は文科大臣の諮問機関(文科省の一組織)ですから、よほど地方ががんばらないと、文科省の『言うとおりの結論』になりますよ」「文科省の意向に逆らった結論を出したら、文科省は怒るでしょうし、委員は次回から任命されないですよね」「審議会というのは、そういうものです」
たぶんこれからの審議を、新聞がウオッチしてくれると思います。この「予言」が当たるか、注目しましょう。(1月31日)
月刊「地方税」(地方財務協会)1月号に、板倉敏和総務省自治税務局長の「17年度税制改正と今後の地方税の課題」が載りました。
そのうち、特に「これからの分権の方向と地方税の展望」が参考になります。先日このHPに書いた「多くの人が住民税の方が所得税より大きくなる」ことや、「国地方の関係」「分権による国の活性化」が書かれています。(1月31日)
昨日書いた中央教育審議会の人選について、1日の読売新聞と産経新聞が大きく書いていました。「地方枠2 異例の空席、文科省と対立」です。3人の委員を要求した地方側に対し、文科省は2を譲らず、2人分を空席のまま残りの委員を任命しました。でも、この28人を見ても、義務教育の現場を知っている委員が、1~2人しかおられないようですが・・。(2月1日)
2日の朝日新聞「私の視点」には、千田兼蔵元横手市長が「三位一体改革、地域市民政治の始まり」を書いておられました。
「政府の全体像は不十分きわまる内容であった。しかし、今まで国政の基本方針について、地方自治体全体が国と四つに組んで戦ったことがあっただろうか」「三位一体改革は、単なる地方分権をめぐる攻防などではなく、明治以来の中央官僚政治が、地域市民政治に転換する大激動の始まりと解すべきではないか」「では、平成維新の原動力はだれか。それは、・・」続きは、原文をお読みください。ポイント押さえた、素晴らしい論文です。市長さんは、現職の時も論客でした。
東京新聞は「闘う知事会の行方、国にノー流れできた。地方から変わろう、親睦会に戻れば謀反」を2ページにわたって解説していました。(2月2日)
2日に、民間有識者らによる「日本再建のための行革を推進する700人委員会」が、「今、なぜ三位一体改革か」というシンポジウムを開催しました。今日の日経新聞などに出ていました。こうして世論を盛り上げていただくのは、ありがたいことです。また、三位一体改革が日本再建の重要なカギであることも、認知されているということです。(2月3日)
政府が実施した「郵政民営化に関する意識調査」(資料の7ページ目)では、政府が取り組むべき重要課題は、1位が年金・福祉改革、2位が景気・雇用、3位が治安・防犯・防災でした。以下は、4位財政改革、5位教育改革、6位特殊法人改革、7位外交・防衛、8位郵政民営化、9位規制改革、10位三位一体改革の順でした。
もっとも、この調査はインターネットを利用したもので、テーマは郵政民営化、回答者は2千人余りです。どこまで国民全体の意識を反映しているかについては、疑問があるでしょう。
けれども、結構いい結果になっているのではないでしょうか。国民が今何を不安に思っていて、政府に何を期待しているか。郵政民営化の調査なのに、当該項目が8位です。
三位一体改革が10番目というのは、こんなものですか。この改革は、国民の生活に直ちには影響しません。また、順調とはいえないけれど、他の項目に比べれば進んでいますから。10項目のうち、政府が取り組んでいて、進んでいるのは、三位一体改革が1番でしょう。(2月6日)
全国知事会長選挙が、始まりました。6日も朝日新聞が、大きく解説していました。考慮される要素は、「改革を進めることができる人」、また麻生大臣が4日の記者会見で述べたように「まとめる才能がある人」でしょう。
このページでも取り上げましたし、各紙が書いているように、知事会と知事会長の役割は、この2年の間に大きく変わりました。会長選びが、これだけ注目されたのは、初めてです。それも、ポスト争いでなく、これからの政治改革が進むかどうかとして、注目されているのです。地方団体以上に、中央政界が関心を持っています。(2月6日)
7日の読売新聞では、青山彰久記者が「全国知事会、闘う集団強さともろさ」を解説しておられました。
「『知事たちのサロン』に過ぎなかった組織が、いまや霞が関や永田町にとっては『やっかいな組織』へと変貌した」「知事会を支えてきた構造の一つは、知事を国の出先機関のように組み込んだ集権行政の仕組みだろう。もう一つは、従来の自民党政治システムだ。経済成長で得た税収を基に全国へ補助金や公共事業を配って・・」「組織に変化の兆しが現れたのは・・・」「今後は、・・国に圧力を加えるだけでなく、責任ある政策提言の力が必要となる」
戦後日本の政治構造から分析した、読み応えある論文です。ぜひお読みください。(2月7日)

三位一体改革41

13日の読売新聞「論点」に、松沢神奈川県知事が「三位一体改革、着実な達成へ推進法が必要」を書いておられました。(1月13日)
15日の読売新聞「50年目の自民党」は、「分権阻む族の構造」でした。「三位一体改革は、政府・自民党が長年築き上げてきた補助金による地方支配という構造を、根底から揺るがせた」「分権は、中央省庁だけでなく、自民党の政権党としての統治のあり方も変えることになる。・・だからこそ、三位一体改革への抵抗が激しかったのだ」「・・もう後戻りすることはない・・」
私が述べている「三位一体改革は行政改革でなく、政治改革だ」を、政治から書いていただいた論文だと思います。(1月17日)
19日の読売新聞は、塩谷祐一記者の「国にもの申す!力増す知事会」を載せていました。「三位一体改革を機に、地方分権のけん引役として存在感を増している・・・」(1月19日)
20日の読売新聞は解説欄で、青山彰久記者が「全国知事会の力、分権改革へ責任ある政策提案が必要」を主張しておられました。賛成です。思うのですが、こういう記事を、なぜインターネットで読めないのですかねえ。それでも、署名入りの記事は、良いですね。責任がはっきりして。(1月20日)
21日の小泉総理の施政方針演説(21日夕刊各紙にも載っています)で、三位一体改革は、郵政民営化に次いで大きく扱われていました。「『官から民へ』『国から地方へ』の実践」の項目の中でです。(1月23日)
24日の日本経済新聞には、中西晴史編集委員の「闘う知事会支える改革派。サロン的会議、一変させる」が載っていました。
三位一体改革をここまで進めた力は、小泉総理、片山・麻生総務大臣ですが、もう一つは知事会です。そして、この後、三位一体改革の残りと、パート2を進められるかは、知事会など地方団体の力量にかかっています。
待っていても進まない、それどころか、総理に言われて案を出しても進まないことは、昨秋よく見えたはずです。次々と仕掛けていかないと、この改革は進みません。守旧派は、先送りやうやうむやを狙っているのですから。
去年は、補助金廃止に対し一般財源化が少なかったこと、交付税などが大幅に削減されたことから、地方団体が猛反発しました。結果として、その不満が改革を進めました。今年は、交付税総額も減らず、地方団体には安堵感が見えます。すると改革は進まないおそれがあります。(1月25日)
26日の読売新聞「論点」には、梶原拓知事会長の「地方分権改革、住民参加の満足型社会に」が載っていました。「これまでの三位一体改革で、地方は1兆円余りの国庫補助金削減と3兆円弱の交付税削減を受け入れ、国の財政健全化に多大な協力をしてきた。新年度の地方財政計画で職員数も1万2千人純減する。これに対して国は、新年度予算でわずか624人の職員しか純減させない」「財務省は歳出削減を声高に叫ぶが、国が自らの身を削るスリム化の実績は、まことに寂しいものがある」「地方分権は真の構造改革、究極の財政再建策である」(1月26日)
(住民の監視)
三位一体改革が進むと、地方団体の自由度が高まるとともに、責任も増えます。「国が監視しなくて大丈夫か?」という質問を受けます。国の後見をやめ、地方が責任を持つというのが分権ですから、この質問は意味がありません。
市長さんの能力によって、地域間に格差が出るでしょう。競争が生まれることで、よりよい地域ができるのです。市民は隣の町と比較して「あっちの方が税金が安くてサービスもいい」と、我が市長を評価するのです。
もう一つ、興味深いことを紹介しておきます。サラリーマンの方は毎月給料日に、給料と一緒に給与費明細書を渡されるでしょう。そこには、給料明細の他に天引きされた税金や年金保険料が書かれています。天引きされる税金は、国税の所得税と地方税の住民税です。
今は多くの人にとって、所得税額の方が住民税額より大きいです。納税者のうち1~2割だけが、住民税の方が高いと推計されています(ただし、所得税はボーナスからも徴収しているのに対し、住民税は月給からだけ徴収しているので、年額が同じでも、月給からの徴収は住民税の方が多い場合もあります)。
今度、税源移譲が実現し、住民税が10%定率になると、納税者の8~9割の人が、住民税額の方が所得税額より大きくなると予想されます。毎月、給与費明細書を見るたびに、地方税負担の大きさが「実感」できるようになるのです。これまでなら、「税金が重い」とか「行政サービスが悪い」と思ったときに、小泉総理の顔を浮かべていた人たちが、市長の顔を思い浮かべるようになるのです。
私は、この効果は、住民に地方自治の意義を100回解説するより、効果があると思っています。(1月27日)
この点について、「どうしてですか?」と質問がありました。確かに、税率の折れ線グラフを見ただけでは、ピンとこないですよね。
現状では、住民税額の方が所得税額より大きい人が少ないことは、折れ線グラフでもわかります。どの所得段階でも、所得税率の方が、住民税率より高いか同じなのですから。住民税額の方が多いのは、①所得が少なく住民税が5%かかって所得税がかからない人と、②所得税は10%・住民税は5%かかるが住民税額の方が多い人です。②は所得税の方が課税最低限が高いので、こんなことが起こります(絵を描くか数字で示さないとわかりにくいのですが、ここでは省略します)。
改正後では、③年間給与収入が約600万円までの人(4人家族のモデル試算)は、住民税が10%、所得税が5%かかります。この人たちは、住民税額の方が大きくなります。
次に、600万円を超える人たちには、住民税率は同じく10%ですが、所得税はそれを超える収入につき順次10,20,23%と高い税率がかかります。しかし、この率は限界税率=低い部分は5%、その次の部分に10%がかかる仕組みです。
④例えば収入700万円の人は、限界税率は住民税・所得税ともに10%ですが、納税額は住民税の方が多くなります。この人には、所得税は600万円以下の収入には5%しかかからず(住民税は10%)、600~700万円部分だけ10%かかるからです。それで、所得税率(限界税率)が20%でも、住民税額の方が大きい人も出てきます。
⑤所得税額の方が住民税額より大きくなるのは、収入約900万円以上の人と試算されます。そして納税者の数は、900万円以下が圧倒的に多い(8~9割)のです。(1月29日)