カテゴリー別アーカイブ: 慶応大学

慶応大

慶應大学、公共政策論第11回目

公共政策論も、第11回目。政府の役割に入りました。
まずは、これまでの政府が果たした役割と、条件が変わったことについてです。
戦後日本の経済社会の発展と、バブル後の停滞について、数字やグラフで説明しました。わかりやすいグラフを示したので、高度経済成長を経験していない学生にも、理解しやすかったと思います。それに加えて、私自身の体験を交えました。

戦後の日本は、経済発展に成功しました。キャッチアップ型の経済発展です。安くて勤勉な労働力と、先進国に学んだ最新鋭の技術とによってです。政府・自治体は、潤沢な税収で、サービスやインフラを作ることに邁進しました。そして、それに成功しました。
しかし、右肩上がりの時代は終わり、経済は長期停滞し、人口の減少と高齢化が進んでいます。バブルがはじけて25年以上たち、人口が減り始めて10年になります。社会が大きく変わり、政府の目標や役割が変わりました。ところが、いまだに「昭和の発想」にとらわれている人が多いようです。

平成10年代を境に、新入社員・公務員が変わったという人が多いです。その背景は、この日本の経済社会の変化だと、私は思います。
バブル崩壊が平成3年。平成10年代に社会人となった人たちは、日本経済が発展した時代を知らないのです。それまでに入った人たちは、いわば「昭和の人たち」です。
そうすると、私などが、日本社会や政治、経済を話す際に、戦後から始めることは、もう古いのでしょう。平成から始めても、30年の長さがあるのですから。

慶應大学、地方自治論Ⅰ第11回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅰの第11回目の授業でした。
今回は、条例について説明しました。条例の法的位置づけとともに、具体事例をたくさん見てもらいました。
地方公務員でない限り、具体の条例を見ることはないでしょう。それを知らずに、制度論をしても、理解しにくいですよね。かつては、法律との関係、横出しと上乗せが大きな論点だったのですが。
今回は、民泊法と条例、受動喫煙防止法案と都の条例(成立したばかりです)を例に、説明しました。また、これまで自治体が国に先導した政策なども。たくさんの事例に、学生たちもびっくりしたようです。

慶應大学、公共政策論第10回目

公共政策論も、第10回目。今日は、良い社会は、どのような要素でできているか。それを実現するためには、どのような方策が必要かについてお話ししました。

社会のいろいろなリスクを軽減するのが、行政・公共の役割です。反対から見ると、どのような社会が理想なのか。それを要素に分解しました。これまでに使っている「地域の財産」の表を使ってです。
すると、自然環境、公共施設(狭い意味での社会資本、インフラ)以外に、各種の制度、人間関係、(伝統)文化など、目に見えない要素も、重要なのです。これらを総称して、社会的共通資本(資産)と呼びます。

女性が夜一人で歩くことができる街、自動販売機が人気のない地域に立っていて壊されない社会。老人が電車に乗ってきたら席を譲る社会。勤勉と清潔を尊ぶ気風。これらは、暮らしていく上で安心できる重要な要素です。いくら道路ができても、電車走っていても、このような安心がないと、暮らしにくいです。
この写真に撮ることができない、金額で表せない「財産」については、日経新聞夕刊コラム「社会の財産」(3月15日)にも書きました。

これまでの、行政や公共論は、インフラ(狭義)などを議論し、視野が狭かったです。
難しいのは、これら関係資本をどのようしたら作り、維持することができるかです。道路や箱物なら、お金と技術があればできるのですが。
社会関係資本を支えている「住民の意識」。これをどのように育てるかです。
これから、文化的背景が異なる外国人(移民)をたくさん受け入れるとなると、対策が必要です。

慶應大学、地方自治論Ⅰ第10回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅰの第10回目の授業でした。議会について説明しました。制度とともに、運営の実際と、期待されている役割を果たしているか、その評価についてもお話ししました。
「地方自治論」は、かつては制度と仕組みを話せば良かったのですが、今は定着した仕組みが期待通りの機能を発揮しているか、それを検証する時代になりました。
ここは、実務家教員の得意とするところです。教科書には書かれていないので、新聞記事などを配って、説明しました。

慶應大学、公共政策論第9回目

公共政策論も、第9回目。
前回、企業の方に、企業の社会的貢献を話してもらったので、まずはそれのおさらい。

さらに、これまでの私の講義の全体像を、図示して解説しました。
新しい社会のリスクが生まれていること、個人の責任だと思われていた問題が社会の課題になっていること。
他方で、社会・公共空間は行政だけが責任を持つのではなく、企業も非営利組織も重要な主体であること。
すると、官民二元論ではなく、官共私三元論がふさわしいこと。
その変化の背景には、自立した市民による社会という近代市民国家像から、自立できない人もいることが発見されたこと。労働者、病人、障害者、子供、高齢者、消費者・・・。それを救うのが公共の役割となったこと、などなど。
この視点からは、これまでの公共政策論は行政が主で、狭いこと。これからは、3つの主体による課題解決、さらには3主体の協働をどのように進めるかが重要になる。

これで、全体像が見えたでしょう。学生諸君も、理解しやすくなったと思います。