自治大学校の幹部(と言ってもまだ若いのですが)に、本間奈々研究部長がいます。かつて、自治大で教授をしていたことがあり、この夏に、春日井市副市長から転勤してきました。
実名で、ブログをつくっています。ブログを読んでいただくとわかりますが、パワフルな女性です。担当業務や授業のほかに、自主ゼミ(読書会)を開講するとのことです。1日で30人の申し込みがあったと、うれしい悲鳴を上げています。その積極性といい、参加する学生といい、うれしいことですね。
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地方行財政-自治大学校
女性向け研修
今日は、第1部・第2部特別課程の入校式がありました。女性109人、男性2人です。平均年齢は41歳です。
この不思議な名前は、次のような理由です。自治大学校の第1部課程は、都道府県職員と市(かつては大規模市)職員向けで約5か月間、第2部課程はその他の市と町村職員向けで約3か月の宿泊研修です。23年前に、「第1部特別」が始まりました。長期間の研修に来にくい、家を空けにくい女子職員向けに開設しました。もちろん、女性幹部職員が増えてきたことが背景にあり、女性幹部を育てたいという自治体の要望にも沿ったものです。
私はその時、ちょうど教授でした。入校期間を3週間に短縮する代わりに、事前学習として通信添削を入れました。その添削が、教授の仕事でした。その後、第2部にも広がり、女性限定も外しました。といっても、男性が入校したのは、今回が初めてです。
政府は、男女共同参画型社会を掲げていますが、それを掲げなければならないほど、まだまだ女性には家事労働などが片寄せされています。いつもは男性が多いので、校長講話では、「慣れない寮生活で大変でしょう・・」と励ましているのですが、今日は勝手が違います。「ご家族の世話から解放され、羽を伸ばしておられることと思いますが・・」と申し上げました(笑い)。皆さん緊張されているので、ふだん以上に笑い話を盛り込んで、研修の心構えをお話ししました。
今日は、その後、中国の青年公務員一行をお迎えし、日本の地方行政と公務員制度を勉強してもらいました。結構、外国のお客さんも来られます。
ロールプレイング式授業
今日は、自治大学校税務専門課程徴収事務コースで、ロールプレイング方式の授業(第1回目)を行いました。私も、参観させてもらいました。
納税者(滞納者)と行政(税務職員)に分かれて、与えられた設定(事例)で、交渉を行います。滞納している市民に、税金を納めるように交渉するのです。
最初に、留意点の説明を受け、ビデオを見ます。そして、学生を5班に分け、別々の演習室に入れます。5つの教室に分かれるということです。それぞれの部屋(班)に、専門の講師(地方税のベテラン)がつきます。各班は、4グループ(5~6人)に分かれ、1事例ごとに、納税者役、行政役、タイムキーパー役、感想を述べる係を担当します。1事例が終わるとグループを入れ替え、同じ事例で、2回対戦します(班を入れ替えます)。これを今日は、3事例で行いました。3事例×2回対戦=6対戦。
納税者役グループと行政役グループは、対戦前に、それぞれ作戦会議を持ちます。この際も、作戦がばれないように、部屋を別にします。
行政役は、学生のふだんの仕事の延長ですが、納税者の役割も、ふだん相手をしているので、よくわかっています。「滞納者役をやりたい」という申し出が多いことも、理解できますね。関西弁の「迫真の演技」で、納税に応じない市民を演じている職員もいました(笑い)。
納税交渉は、自治体の業務でも、もっとも基本であり、かつ困難なものです。98%の市民は、きちんと納めてくれています。残りの人が、責任を果たさないのです。しかし、この人たちを放っておくと、まじめな人が馬鹿を見て、誰もまじめに納めなくなります。私は、公務員たるもの、一度はこの苦労をするべきだと考えています。これまでは、ややもすると、使う人が威張っていました。ここに、行政と公務員の、民間との違いがあります。極端に言うと、民間は儲けてなんぼ、公務員は使ってなんぼでした。
この仕事は、法令を勉強したらうまくできる、というものではありません。優しく下手に出ればよい、というものでもありません。それなりの訓練が必要です。まさに、ロールプレイング方式が、ふさわしいのです。また、各市町村では、なかなかここまでの授業はできません。
畳の上の水泳教室より、水の中の水泳訓練の方が、効果がありますね。部屋の数といい、講師の数といい、準備も大変なのですよ。また、設定した事例も、よく考えてあります。そのノウハウは、企業秘密なので、ここでは紹介できません。講師の先生方、ありがとうございました。
第1部課程卒業式
今日、第1部課程の卒業式がありました。62人の学生が、それぞれの県や市に戻っていきました。彼らは4月に入学して以来、約5か月、寮生活を送り、研修に励んできました。この間の総授業時間は、445時限(自治大は、1時限=70分)。そのうち、講義が295時限、演習が135時限、そのほか効果測定などが15時限です。
自治大は、地方自治体幹部養成機関です、一言で言うと「実践的大学院」でしょう。
教育内容は、「行政経営」と「公共政策」の二本柱からなっています。最高水準の大学教授や研究者による講義、それも「制度・最新の知識」と「応用・現在の課題」の両方があります。予習や復習、与えられた教科書や資料を読むために、放課後の自習も不可欠です。寮は個室ですし、図書室や演習室も充実しています。
演習に時間を割いていることも、特徴です。先日紹介した政策課題研究など、いくつもの演習があります。座って聞くだけの講義でなく、自分で考え、汗と知恵を出す、そしてそれを説明し説得する。一般の大学院の方には申し訳ないのですが、単に分析するだけでは、自治体現場では役に立たないのです。実現可能性のある提言を、しなければなりません。このような能力は、実践的訓練でないと、身につきません。
演習方法も、それぞれに工夫を凝らしています。今日も、教官たちが集まって、第1回目の反省会を開きました。次回に向けての改善点を議論するためです。
卒業式では、やっぱり涙する学生が、何人も出ました。5か月間の苦労と達成感からでしょう。うれしいですねえ。彼らは、平均年齢40歳です。これから、それぞれの自治体で、活躍し出世してくれることでしょう。
校長の余禄
今日、自治大学校では、第1部課程の最終講義。童門冬二先生の「リーダーシップ論」でした。先生は、都庁職員の経験も、お持ちです。ご挨拶の折りに、「どうしたら、あれだけの作品を書くことができるのですか」と、その秘訣を伺いました。
また、税務専門課程では、宇賀克也教授の授業がありました。これまた、ご挨拶の際に、行政改革の話をさせてもらいました。日本の各分野の第一人者に来てもらえるのが、自治大学校のありがたいところです。