カテゴリーアーカイブ:行政

旧優生保護法、遅かった救済

2024年10月3日   岡本全勝

9月19日の日経新聞「強制不妊、逃した「救済」機会 司法判断で政治解決再び」から。

・・・強制的な不妊手術という国による重大な人権侵害に対する補償制度法案が18日、超党派の議連で固まった。旧優生保護法の成立から76年。国際社会からの批判や当事者の訴えという「救済」の機会があったにもかかわらず政府は動かず、司法に迫られる形で政治決着に至った。約2万5千人とされる被害者へ補償が行き渡るかが問われる。

旧優生保護法は1948年に議員立法で成立した。戦後の深刻な食糧不足から人口抑制を図りつつ、復興に携わる人材を確保する狙いがあったとされる。「不良な子孫の出生を防止する」ため、正当な理由なく不妊手術を認める規定が盛り込まれた。
同法が示す「優生思想」を批判する声は80年代ごろから国内で高まり、旧厚生省内でも「人道的に問題はあるのでは」と指摘が上がったという。しかし法改正の動きは鈍く、90年代に入っても不妊手術は続けられた。

見直しを迫ったのは国際社会だ。94年、カイロで開かれた国連の国際人口開発会議で本人の同意なく子宮を摘出された日本人の事例が紹介された。「日本にはなお優生保護法が存在し、障害をもつ女性の人権が侵害されている」との訴えは大きな反響を呼び、障害者の国際団体などから法改正の要望が殺到した。
国会は96年に旧法を母体保護法に改正し、手術の規定を削除した。しかし手術を受けた人への補償は見送った。同様に不妊手術を強制し、見直し後に正式な謝罪や補償をしたスウェーデンやドイツとは対照的な対応だった。
国際人権規約委員会が98年、必要な法的措置をとるよう勧告した際には「過去に遡って補償することは考えていない」との政府見解を示した。

国による補償がないまま法改正から20年超が経過した2018年1月、当事者が声を上げた。手術を受けた本人が初めて訴訟を提起。これを受けて同年3月に超党派の議員連盟などが発足し、補償に関して初めて具体的な検討が始まった。
19年に全会一致で成立した一時金支給法は手術を受けた本人にのみ一律320万円を支給することを柱とする。320万円は「見舞金」という位置づけで、賠償の趣旨は含まれていない。国の法的責任は明示せず、全面的な補償はまたも置き去りとされた。

背景には旧法により障害者への社会的差別や偏見が助長されるなかで、当事者が訴え出る心理的負担が重かった点がある。約2万5千人が手術を受けたとされる一方、一時金の支給を受けたのは24年7月末時点で1129人にとどまる。今なお家族や周囲にさえ明かせていない人も多いとされる。
「国会は適切に立法裁量権を行使して速やかに補償の措置を講ずることが強く期待される状況にあった」。最高裁は24年7月の判決で、立法府としての役割を果たさない国会や政府への批判を強くにじませた。
最高裁判決を受け、岸田文雄首相は7月、原告らに直接謝罪した。面会で「政府の主張自体が原告の気持ちを傷つけるもので、政府の姿勢が問題の解決を遅らせた」と言及した。旧法成立から76年が経過し、全面補償への道筋がようやく開けた・・・

小学生自殺の原因、家庭が4割

2024年9月29日   岡本全勝

9月11日の朝日新聞夕刊に「自殺の原因、小学生は「家庭」4割 「対策白書」24年版概要案」が載っていました。

・・・2024年版の「自殺対策白書」の概要案が判明した。22年に514人と過去最多を更新し、23年は513人で高止まりしている子どもの自殺について分析。09~21年のデータで原因や動機をみると、小学生は男女ともに、家族からの叱責や親子関係の不和といった家庭の問題が約4割を占めた。

昨年の自殺者数は2万1837人で、男性は2年連続増加し、女性は4年ぶりに減少した。年代別の10万人あたりの自殺者数は、20年以降多くの年代で上がっており、特に10代は上昇傾向にあるという。23年に自殺した子ども513人の内訳は、高校生347人、中学生153人、小学生13人だった。
白書案によると、子どもの自殺の原因や動機について09~21年のデータを分析したところ、中学生の男女ともに、学業不振や進路の悩み、人間関係など学校の問題が3~4割となった。男子高校生は学校の問題が約4割で、女子高校生はうつ病や精神疾患などの健康の問題の割合が高くなった。
自殺した子どもの自殺未遂の有無をみると、22年以降、男女ともに自殺の1年以内に自殺未遂となっていたケースが過半数を占めた・・・

舞台ファーム専務の独り言

2024年9月28日   岡本全勝

このホームページでしばしば紹介している、原発被災地で農業支援をしてくださっている「舞台ファーム」。ありがとうございます。
専務取締役の伊藤啓一さんが、ホームページで「ひとりごと」の欄を作られました。専務といっても、ネクタイを締めてソファーに座っている職業ではありません。「47歳で、この世界では若手」の農業従事者です。

「日本農業の歴史や、我々も含めた農家の考え方、農業関連の法律や農政、植物生理に関すること、海外の農業と日本農業の違い、そしてこれからの農業について」説明してくださるとのこと。
農業従事者数は、全産業の3%まで減っています。農業現場を知らない人も多いでしょう。ご関心ある方は、お読みください。
レタスのキモチ」(9月26日)も面白いですよ。

国会事故調査委員会のその後

2024年9月27日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞オピニオン欄に、東京電力福島第一原発事故に関する国会事故調調査統括を務めた宇田左近さんへのインタビュー「原発事故後、変わらぬ日本」が載っていました。

東京電力福島第一原発事故で時限設置された国会事故調査委員会のメンバーが今夏、「同窓会」を開いた。日本社会に突きつけた課題が、干支が一巡してもほとんど改善していないことを憂えた集いの名は「変わらぬ日本と変わる私たち」。調査実務を統括した宇田左近さんに、問題の所在と解決の糸口を聞いた。

――2011年の原発事故を受け、政府・国会・民間・東電と、いくつもの事故調査委員会ができました。その中で国会事故調は、どんな存在でしたか。
「当事者からの独立性は、政府と東電の事故調は弱く、国会と民間の事故調は強かったといえます。一方で調査権限は、民間と東電は弱く、政府と国会の事故調は強く広範だった。つまり、独立性と調査権限を兼ね備えていたのが国会事故調でした。だからこそ、その結論は海外からも信頼されました」
「委員10人は各党推薦で、私を含め調査実務を担った約80人は全員民間からの参加でした。政治家や政府関係者による接触も制限し、独立性を担保。調査権限では、いざとなれば国会に国政調査を要請できることが効き、広く協力が得られました」
「省庁の審議会と違い、結論ありきではありません。調査結果に基づき、委員全員が全体に責任を持つ形で報告書をまとめました。その結果、歴代の規制当局と東電の間で、津波や地震、過酷事故などの対策を見直す機会が何度もあったにもかかわらず、してこなかったことから『人災』だったと結論づけたわけです。また、いつしか規制当局が圧倒的に情報量が多い電力事業者の言いなりになってしまっていたことを『規制の虜』という言葉で指摘しました」

――その後への提言もありましたね。
「提言は(1)規制当局に対する国会の監視(2)政府の危機管理体制の見直し(3)被災住民に対する政府の対応(4)電気事業者の監視(5)新しい規制組織の要件(6)原子力法規制の見直し(7)独立調査委員会の活用――の七つでした。国会事故調は、実質半年で報告をまとめることが法律で定められており、12年7月に報告書を両院議長に提出すると翌日には解散しました。以降のボールは国会にあると考えています」

――提言の実施状況を、どう見ていますか。原子力規制委員会という独立性の高い規制組織は整備されたものの、事故や原子力のあり方について国会に検証や監視・議論を続けていくことを求めた提言は、ほとんど実現していないようにみえます。
「提言(1)に沿い、衆院原子力問題調査特別委員会が13年に設置されましたが、実質的な議論の機会は限定的に思えます。何を実施したのか、しないのならばその理由などを、国民に明らかにすべきです。関係者の証言記録を含め、集めた膨大な調査資料は、今も非公開のまま国会図書館に眠ったままです。提言の背景や趣旨について国民の理解を深めてもらうためにも、扱いを早急に判断すべきです」
「米国では、スリーマイル島の原発事故の際に民間人を活用した独立調査委員会が報告書をまとめ、規制当局と原子力事業者の関係見直しにつなげています。英国は、狂牛病やイラク戦争などの重大事には独立委員会で政府対応を検証し、批判も含めて報告書にしています。日本の国会も、政府が言ったことだけを議論するのではなく、自分たちで対案を出して議論していくということが大いにあっていい。そうでないと、世界の信頼はなかなか得られません」

地方公務員の離職防止対策

2024年9月24日   岡本全勝

9月7日の日経新聞に「地方公務員の離職防げ 福岡県、若手が「働きやすさ」提案」が載っていました。

・・・全国の都道府県が職員の離職抑制に力を入れている。2022年度の自己都合の退職者は全国平均で17年度より46%増えた。就職人気も低下しており、働きやすい職場づくりを進めて20〜30歳代などの定着を目指す。福岡県は若手職員による改善提案制度や長時間勤務の削減などを通じて退職者の増加を抑える。
総務省の「地方公務員の退職状況等調査」から、定年退職などを除く自己都合の退職者を抽出した。22年度実績を都道府県別データの公表が始まった17年度と比べると、全ての都道府県が増えた。県庁職員などの行政職や教育職の増加が目立つ。都道府県別では、鳥取と福岡が増加率を1割未満にとどめたのに対し、熊本は2.6倍、秋田も3.8倍となった。

福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・

・・・福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・