カテゴリーアーカイブ:行政

法令通りとこれまでにないこと

2026年7月5日   岡本全勝

公務員を目指す大学生に、体験談を講義をすることがあります。その際に、公務員には、「法令通りにする仕事」と「これまでにないことを考える仕事」があることを説明すると、多くの学生が驚きます。

「法律による行政の原理」を勉強したのでしょう。もちろん、国民の権利義務に関することは、法令による必要があります。予算の執行は、議決された予算の範囲内で行わなければなりません。しかし、社会に問題が生じているときに、知らぬ顔をするようでは公務員は失格です。国民や住民の幸せために働いているのであって、機械的に法令を執行するのが公務員ではありません。
困っている住民がいるのなら、どのようにしたらそれを救えるのかを考えるのが、公務員の役割でもあります。新しく生まれる課題は、法律や予算には載っていません。改善と改革を考えなければならないのです。

「法令に書かれていません」「予算がありません」というのは、仕事をしたくない公務員が考えた「屁理屈」でしょう。
まことに便利な言葉ですが、そこで立ち止まったり、思考停止したりするのではなく、だったらどうすればよいのかを考えなければなりません。

模索中のケアラー支援

2026年7月5日   岡本全勝

6月10日の読売新聞に「ケアラー支援のあり方は」が載っていました。ところで近年できた「ケアラー」という名称、もう少しわかりやすい日本語、その人たちの苦労を表す表現はありませんかね。

・・・高齢者や障害者、病気、ひきこもり状態の家族らを日常的に世話している人(ケアラー)たちへの支援を求める声が高まっている。少子高齢化の進展で家族を取り巻く環境が変わり、孤立したり、困窮したりするケースがあるためだ。求められる支援のあり方について、専門家3人に聞いた・・・

田村憲久・自民党ケアラー議員連盟会長の発言
・・・この数十年間で人口構成や社会構造が激しく変化した。今後も変化が続くことが予想されているにもかかわらず、日本独特の家族観や社会的な価値観を背景に「介護は家族がするものだ」という考え方が残っている。
高齢者の介護だけではない。障害のある人や心身に不調を抱えている人の家族が、「ほかに世話をする人がいないから」と、働きたくても働くことができずに世話に専念しているケースがある。子どもや若者がケアを担っていることも少なくない。
家族がケアをしなくていいと言っているわけでは決してない。私たちは今、家族だけでケアを完結することができない時代を生きている。そうした認識を社会に広げて、ケアラーの皆さんが健康を損ねることなく、自分らしい生活を送れるように、環境を整えていきたいという思いがある。

私が会長を務めている自民党ケアラー議員連盟は、全国の当事者たちの声を聞く窓口だ。その声を「見える化」して、国の政策に反映させる役割がある。24年に改正された「子ども・若者育成支援推進法」では、国や自治体にヤングケアラー支援を努力義務として求めている。適切な支援につなぐため、議連では、学校で状況を把握するための調査を定期的に行うように国に働きかけた。
今後は、大人のケアラーについても実態を把握するための調査を行い、課題を「見える化」する必要があるだろう・・・

・・・高齢者や障害者を介護する人、ヤングケアラーなどへの支援は、各省庁で徐々に整えられてきている。しかし、まだまだ不十分だ。内閣府にケアラー支援の所管を一元化することも一案だろう。ケアラーを支える法律を作ったり、政府として「骨太の方針」にケアラー支援の強化を盛り込んだりすることも考えられる・・・

渋谷区 ポイ捨てに過料 1か月で324件

2026年7月4日   岡本全勝

NHKウェッブが「東京 渋谷区 ポイ捨てに過料 開始から1か月で324件」を伝えていました(7月3日)。

・・・ごみをポイ捨てした人に対し、先月から罰則として2000円の過料を科している東京・渋谷区は、開始から1か月で過料を科した件数が324件だったことを明らかにしました。

渋谷区は、渋谷駅や原宿駅周辺の繁華街を中心に路上などでごみが増えていることを受け、先月1日から、ごみをポイ捨てした人に対し罰則として2000円の過料を科しています。区の職員などおよそ50人が24時間体制で巡回していて、区によりますと、過料を科した件数は、先月30日までの1か月間で324件だったということです。
場所は渋谷センター街や道玄坂の周辺が多く、年代別では20代や30代が半数以上だったということで、過料が科された人のほとんどはその場で支払いに応じたとしています。また、ポイ捨てされたごみで最も多かったのはたばこの吸い殻で、そのほかペットボトルや空き缶などがあったということです・・・

過料を定める条例はありますが、それを実行しないと、効果は限られるでしょう。特に一般の人に制限をかける場合は、取り締まりと徴収を行わないと無視されます。「条例に定めてあっても、違反しても大丈夫」だと。それはまた、ほかの禁止規定と罰則に悪い影響を与えます。

官僚の出張哀歌が映す国力

2026年6月26日   岡本全勝

6月14日の日経新聞「風見鶏」、「官僚の出張哀歌が映す国力」から。

・・・2024年、約40年ぶりに大型の法改正をして国家公務員は気兼ねなく海外に出張できるようになったはずだった。聞こえてくるのは涙を誘う体験だ。
25年夏にパリの国際会議に出張した霞が関のある課長は施行したばかりの改正旅費法に沿ってホテルを探した。海外の宿泊費は1984年以来の改定のおかげで、課長級なら1泊3万8000円まで認められるようになった。それでも宿泊費上限を下回るものは見当たらない。会議場周辺のホテル価格は高騰していた。
出張ルールは「公務運営上支障のない範囲で検索した最も安価な施設」を選ぶと定めている。結局、片道1時間ほどの郊外から連日通うことにした。どうしても近場に泊まる必要があった同僚は安価なカップル用のホテルを選ばざるを得なかった。「職員の持ち出しを防ぐ」とうたう法改正の理念とほど遠い現実だった。
国内出張でも官僚の哀歌はやまない。国内外から2900万人を集めた2025年の大阪・関西万博。当時、課長級が大阪で認められた宿泊費は1泊1万3000円まで。カプセルホテルや風呂なしの宿を利用するしかなかった職員がいた。
別の官僚は「土日を含んだ連泊は基準額を大幅に超える。途中でホテルを移動しなければならなかった」と打ち明ける。

公務員の経費は税金が原資だ。過剰な支出は厳に慎むべきだが、ほとんどの公務員はぜいたくを望んでいるわけではない。哀歌の裏には円安や物価上昇の勢いに基準額の改定が追いつかない実態がある。
HISの出張費に関する調査によると25年のパリの主要ホテルは1泊平均6万382円で、24年の4万6039円から3割も上がった。法改正で宿泊費用を実勢価格並みに合わせたものの、1泊3万8000円という基準との差は広がるばかりだ。

単なる宿泊代の問題とみていいのだろうか。円安に代表される国力の衰退を直視すべきではないか。
円安は13年ごろに始まったアベノミクス以来の長期の趨勢だ。民主党政権で1ドル=70円台まで付けた円相場は足元で160円近辺まで下落している。日米の金利差や潜在成長率の低さを解消しないまま、為替介入といった対症療法で流れを変えるのは難しい。
政も官も現状から目を背けているように映る・・・

被災自治体への応援職員、総括役登録1000人に

2026年6月21日   岡本全勝

6月6日の日経新聞に「被災自治体への応援職員、総括役登録1000人に」が載っていました。

・・・大規模災害時に都道府県などから派遣され、被災自治体の首長らを補佐する応援職員の登録数が1千人に到達した。ここ2年で7割以上増え、南海トラフ巨大地震をにらんだ国の目標に届いた。ただ人数には地域間で偏りもみられ、さらなる人員の充実が求められる。

応援職員の名称は「災害マネジメント総括支援員(GADM、ギャドム)」。地元で災害対応の経験があるなど、知見を有する管理職経験者らを対象とする。都道府県や市区町村の推薦により総務省が登録する。
創設の契機は2016年の熊本地震だ。
11年の東日本大震災で対応にあたった仙台市や宮城県東松島市などの職員が熊本県内の被災地に入り、避難所や災害対策本部の運営などをサポートした。
これらの実績から政府は18年にGADMを導入した。同年に始まった「応急対策職員派遣制度」の一環だ。

GADMは災害時、総務省などとの調整を経て被災自治体に派遣される。住民の安否確認や避難所運営、家屋被害の調査といったフェーズごとに、首長や幹部職員へ対応について助言する。
これまでに18年の西日本豪雨や24年の能登半島地震などで活用された。
跡見学園女子大の鍵屋一教授(地域防災)は「災害時は安否や避難所などに関する情報が飛び交い、幹部職員はどう対処したらいいか混乱しがちだ」と話す。その際に支援するGADMの役割は円滑な災害対応のためにも重要だと説く・・・