カテゴリーアーカイブ:行政

新・官僚の類型

2026年4月27日   岡本全勝

連載「公共を創る」第253回で、かつて議論された「官僚の類型」に言及しました。識者によって異なるのですが、官僚の思考と行動を次のように分類します(例えば、真渕勝著『官僚』(2010年、東京大学出版会)。
「国士型官僚」=官僚が国家を背負っているという自負心を持ち、国家のあるべき姿を考えて仕事をする。
「調整型官僚」=本来政治が行うべき利害調整や政治家同士の調整までも官僚が担う。
「吏員型官僚」=政治家の下で官僚の自立性を守るために必要最小限の仕事だけをこなす。

長屋聡執筆「官僚制の変容と若手官僚」(季刊『行政管理研究』2025年9月号)には、これに加えて、次のような分析も書かれています。
・・・さらに近年の官僚の状況と意識を考えると、官僚が政治の下請けになっている点に着目すれば、下請け型と名付ける(田中秀明「官僚たちの冬」)ことも可能であろうし、若手官僚は民間への転職も視野に入れている点で勤労者型といった表現も取り得るかもしれない。これらの変化は、政党の優位、右肩上がりの経済社会構造の終焉、負の配分の行政、官における自律性・当事者性の低下などの時代背景を投影したものととらえることができよう。
ただし、これらの類型はあくまで中央官僚の理念型としての一般的な類型化であろう。官僚個人に着目すれば、場面により、複数の類型の顔を見せることもあろうし、政と近接する幹部職員について見ると、現状では国士型はほとんどおらず、他方吏員型の行動に終始するだけでは幹部職員としての職責は十分果たし得ないように思われる・・・

ある人に意見を求めたら、自分の経験を踏まえて次のような類型もあると、笑いながら指摘してくれました。
「ひまわり型」=上司や親元の方だけを見ている。「コバンザメ型」とも言います。
「玄関先掃除型」=仕事が自分の所に来ないことに最も注力する。

市道補修を民間に一任

2026年4月17日   岡本全勝

3月31日の日経新聞に「市道補修は民間に「お任せ」新潟県三条市、エリアごとに5年契約」が載っていました。
・・・新潟県三条市は土木部門の人手不足に対処するため、民間への包括委託で発注業務を大幅削減している。簡易な補修などは5年間の長期契約でプロに一任し、市職員の負担軽減とインフラ維持を両立させている。どのように「官民分担」が進んでいるのか、記者が寒さの厳しい同市の現場で探った・・・

通常は、道路など自治体が管理する施設は、自治体職員が現場を確認して、補修工事の範囲などを指示する仕様書を出します。土木業者から見積もりを取って、発注します。
三条市では、市内を4区域に分けインフラの補修や巡回を民間企業に包括委託しています。費用が130万円未満の案件は市が個別に指示せず、受託企業が判断し作業します。背景には、自治体の職員特に技術職員の不足があります。
企業による作業の成果評価をどうするか(作業不足、作業過大など)など課題はあるでしょう。

法律に出てくる「市民」

2026年4月15日   岡本全勝

法律に規定された「消費者市民社会」」の続きです。残る「市民」に関する法律の規定は、次の2つになります。
「市民」特定非営利活動促進法、成年後見制度利用促進法
「市民生活」暴力団不当行為防止法、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律など

市民という言葉は、市の住人という意味でも使われますが、ここでは、西欧近代で生まれた「政治参加の主体となる自立した個人(citizen)や地域社会を担う主体」として取り上げています。その観点では、警察関係で出てくる「市民生活」は「住民の生活」と言い換えることができるようで、少々異なります。

成年後見制度利用促進法には、ずばり「市民」が出てきます。
(基本理念)
第三条 2 成年後見制度の利用の促進は、成年後見制度の利用に係る需要を適切に把握すること、市民の中から成年後見人等の候補者を育成しその活用を図ることを通じて成年後見人等となる人材を十分に確保すること等により、地域における需要に的確に対応することを旨として行われるものとする。

しかし、市民の定義はないようです。どの範囲を指して市民というのか、国民とはどのように異なるかは不明です(専門家の方に教えていただけると幸いです)。

もう一つ「市民」は、特定非営利活動促進法に出てきます。

特定非営利活動促進法
(目的)
第一条 この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

この法律は、案の段階では「市民活動促進法」という名前でしたが、自民党内での反対で、現在の名前になったという経緯があります。ここに出てくる「市民」は、「政治参加の主体となる自立した個人や地域社会を担う主体」という意味だと考えられます。
「市民社会」は歴史学や政治学、社会学でよく使われる言葉ですが、歴史的にそれを勝ち取った西欧諸国と異なり、日本では違った歴史を歩んだので、「市民社会」や「市民」という言葉がなじんでいないのかもしれません。

法律に規定された「消費者市民社会」

2026年4月14日   岡本全勝

「市民社会」とは歴史学や政治学、社会学でよく使われる言葉です。ウィキペディアでは、概ね次のように定義されています。「市民社会とは、ブルジョワジー(市民)が封建的な身分制度や土地制度を打倒して実現した、民主的・資本主義的社会」。しかし、政府の文書で使われることは、見たことがありませんでした。
消費者教育の推進に関する法律に、「消費者市民社会」という言葉があることを教えてもらいました。この法律は、平成24年(2012年)に作られました。議員立法のようです。第2条に定義があります。

消費者教育の推進に関する法律
(定義)
第二条第2項 この法律において「消費者市民社会」とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう。

ただし、これは「市民社会」という言葉ではありません。消費者が積極的に参画する社会を指しているようです。歴史的な意義を持つ「市民社会」とは違うように思えます。
そこで、知人に教えてもらって、e-Gov 法令検索で「市民社会」を検索しましたが、法律には「消費者市民社会」以外は出てきません。次に「市民」で検索してみました。すると、次のような単語と法律が出てきました(これらの法律を引用しているような法律は除きます)。
「市民」特定非営利活動促進法、成年後見制度利用促進法
「市民生活」暴力団不当行為防止法、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律など
「市民権」出入国管理法など
「市民農園」「市民緑地」市民農園整備促進法、都市緑地法

このうち「市民権」は外国人についての規定であり、日本人についてではありません。「市民農園」「市民緑地」もここで取り上げている「市民」とは異なるようです。(この項続く)。

自治体情報システム標準化の遅れ

2026年4月10日   岡本全勝

時事通信社の地方団体向け専門情報サイト「iJAMP」4月1日に、庄司昌彦・武蔵大学教授「システム標準化「多くの犠牲の上でたどり着いた60点」」が載っていました。
この問題(期限に間に合わないこと)は、当初から指摘されていました。現場での移行が遅れたのではなく、そもそも期日の設定に無理があるというのです。突然、現場の意見も聞かずに、移行期限を決められたとも言われています。記事でも、意思決定過程の不透明さが指摘されています。

・・・地方自治体の情報システム標準化は2025年度末に移行期限を迎えた。「半数超の自治体で遅れ」と報じられているが、1システムでも遅れる自治体がいくつあるかというより、約3万4000のシステムのうち、どれだけ遅れているかという視点の方が重要だ。大いに心配していたので、期限までに移行完了したシステムが半分を超える見込みという現状は「なんとか大失敗にはならなかった」と捉えたい。多くの障害を乗り越え、いわば文字通りの不眠不休の努力の上に何とかたどり着いた「60点」と評価できる。ぎりぎり合格点といったところだが、途中でもっと判断を誤れば、50点、40点、もしくは30点となったリスクもあっただろう・・・
・・・スケジュールを巡って、自治体関係者の反応が厳しいことは承知している。ここまできたら遅れの有無そのものを問題にすべきではない。遅れを問題視すれば、「危険でも早く終わらせろ」という動機が働きかねない・・・

・・・心身を病んで離職した職員や「もう行政のシステム市場には関わりたくない」と言っている業者も存在する。意思決定をする立場の人は、こうした事実を認識すべきだ。特定の悪者がいて、どこかと癒着していたというような単純な構図ではなく、情報共有や意思決定に関する構造的な課題が主な原因であると考えられる。今後もシステム改修は続くので、今回の反省を次に生かしていかなければならない。
標準化20業務のうち9業務について座長として仕様書策定に関わった立場でも見えない部分が多いくらい、標準化やガバメントクラウドに関する全体像や意思決定過程は不透明だった。会議としてはデジタル庁に「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」が存在するが、3年ほど開催されていない。司令塔的な会議体がない上、公開の場で外部の視点による検証の仕組みもなく、方針が突然示されるような状況が続き、適切な意思決定プロセスとは言いがたかった・・・