カテゴリーアーカイブ:行政

若い日本人の持つ能力の生かし方

2026年9月14日   岡本全勝

9月9日の各紙が、世界各国の学習到達度調査(PISA)の結果を報道していました。例えば、朝日新聞「数学・科学、世界上位を維持 読解力やや低下 15歳国際調査」

・・・経済協力開発機構(OECD)は8日、世界の15歳を対象に、2025年に実施した学習到達度調査(PISA〈ピザ〉)の結果を公表した。日本の順位は「科学コンピテンシー(課題解決力)」が5位(前回22年調査で2位)、「読解力」が4位(同3位)、「数学的リテラシー」は5位(同5位)と上位を維持した。
PISAは00年から3~4年ごとに実施。3分野に即した文章やグラフを読み解く問題で、知識や技能を実生活の課題解決に活用する力を測る。25年の調査には91の国と地域から約76万人が参加し、日本では高校1年生約6500人が受けた。

OECD加盟国(38カ国)全体の科学コンピテンシーの平均得点は、前回と有意な差はなかったが、読解力や数学的リテラシーは下がった。一方、日本が低下したと認められるのは、516点から503点に下がった読解力のみで、OECD加盟国の中では初めて全分野で1位となった。
文部科学省は、課題解決能力の育成を重視した学習指導要領の定着や、1人1台の学習端末環境の整備が、好成績につながったと分析している。
日本、OECD全体ともに、AIを学校の学習で適度に採り入れている生徒ほど科学コンピテンシーの得点が高い傾向がみられた。ただ、日本は学校の勉強におけるAIの利用頻度がOECD加盟国で最も低かった。
今回は3分野とは別にプログラミングツールなどの技術を使った課題解決能力を測る調査も行われた。日本の順位は4位で、OECD加盟国では1位だった・・・

記事では、さらに詳しく説明されています。上位にはいますが、課題もあるようです。
ところで大きな疑問は、高校生までは世界でもこんなに優秀なのに、日本経済はなぜダメなのでしょうか。
・この調査で測る能力と、仕事での能力が異なるから
・高校生までは優秀だけど、大学生になると勉強しないから優秀でなくなる
・成人も優秀だけど、その能力を生かし切れない会社や社会が悪い
・・・・

内閣人事局幹部の公務員論

2026年9月13日   岡本全勝

月刊『中央公論』10月号に、青木栄一・東北大教授、北村亘・大阪大学教授、辻恭介・前内閣人事局総括参事官による座談会「内閣人事局の視点から 国家公務員の変貌とあるべき未来」が載っています。お勧めです。関心ある方は、ぜひ記事をお読みください。

青木先生と北村先生は、『現代官僚制の解剖Ⅱ』(2026年、有斐閣)を出版するなど、現在の官僚研究の第一人者です。その質問に、内閣人事局で総括参事官を務めた辻君が答え、また辻君が内閣人事局で考えていたことを語っています。
国家公務員の離職、やりがいと業務負担軽減と給与の上昇の影響、モチベーション、人材不足、特定の省の離職意思、多様化する職歴、中途採用、労働市場と公務員試験、嫌われる地方勤務、人脈づくりで地方公務員に負けていないかなどなど。最近の国家公務員の動きや志向がよくわかります。

この鼎談や『現代官僚制の解剖Ⅱ』を読むと、官僚論が変わったと感じます。かつては、官僚が国家の政策を支えていること、その誇りや権力志向、政策の作り方、関係者との調整を含めた行動論、組織内での競争などが主でした。優秀な若者(かつては男性)が国家のために官僚を目指すこと、そして就職してからは滅私奉公であることは疑われませんでした。ところが、優秀な若者が官僚を目指さなくなり、中途退職も珍しくなくなりました。「官僚の魅力」を説明しなければならなくなったのです。

記事の最後にもあるように、官僚は名前を出さなくなりました。辻君が実名で出て現状を説明し、自分の考えを述べていることは立派です。同僚や後輩たちも、見習ってほしいと思います。
なお、このような発言に対し、匿名の批判がなされることがあります。意見があるのなら、匿名で無責任な批判するのではなく、責任を持って実名で書いてほしいです。

総理の指示書と閣僚の評価

2026年9月12日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第29回「所管のみ、目標なき役所」(7月10日配信)で、次のようなことを指摘しました。
「役所の各部局には、「任務と所管」は定められていても、「目標」は与えられていない。各省設置法や組織令には任務のほか、所掌事務が詳しく書かれていますが、その目標は書かれていない。何が課題なのかを考え、それら課題に優先順位をつけ、いつまでにどのように進めるのかを考える。そして、大臣や首長の了解を取って、部下を指揮して解決に導く。それが幹部の役割だ」

9月9日の日経新聞に「内閣改造、首相指示書が占う「高市人事」」が載っていました。「指示書」と聞いても、知らない人が多いでしょう。総理は内閣発足時に、各閣僚に何をしてほしいかを紙に書いて渡します。それが指示書です。
総理の政策の重点は、国会での所信表明演説や施政方針演説で示されますが、それを各大臣に示したものと言えるでしょう。各省からすると、各省設置法による任務(各省とも広範です)の中で、この内閣が何に力を入れるかが示されることになります。

内容には具体的なものとそうでないものが含まれているようです。しかし、このように項目として指示が出されると、どこまでそれを達成したかが評価できます。もっと知られてもよいことであり、そしてこれによって閣僚を評価するべきです。

ところで、この指示書は役所の文章としては、どのような位置づけにあるのでしょうか。各大臣からは、職員に対しどのようなかたちで指示が降りてきているのでしょうか。
また、これも秘密事項以外は国民にわかるように、総理官邸のホームページなどに載せればよいと思います(すでに載っていたらごめんなさい)。「高市早苗首相の18閣僚への指示書、全文明らかに」(2025年10月23日づけ日経新聞)

政策立案での人工知能の利用

2026年9月10日   岡本全勝

9月3日の日経新聞に「霞が関にAI課長? 生産性向上に期待、官僚の役割の再設計迫る」が載っていました。機械を使うことで便利になりますが、下請けに出すことですよね。表計算や調べものなどは、効率化できると思います。しかし、企画立案に使うようでは、職員の能力向上にはなりません。難しいところです。

・・・「概算要求に関する財務省への説明にどの資料を持っていけばいいでしょうか」。8月上旬、総務省の若手官僚が問いかけると、間髪を入れずに助言が返ってきた。相談相手はパソコンの画面の向こうにいる「AI(人工知能)課長」だ。
AIが霞が関官僚の育ての親になる――。そんな未来が少しずつ現実味を帯び始めている。
総務省の事業展開技術課。デジタルインフラの海外展開などを所管する部署で今夏から嶋田信哉課長の「分身」のAIが若手官僚の教育係を担う。政策の起案から議員への説明資料の添削、他省庁との交渉術まで何でも相談できる。
AIには経歴や過去の講演資料から生活習慣まで読み込ませ、嶋田氏の仕事の進め方や政策判断の基準を再現できるようにした。所管する海底ケーブルや通信インフラの最新動向も把握する。
課長本人は海外出張で不在の場合も多い。「時間を選ばず何度でも壁打ちができる」と部下からも好評だ。
嶋田氏自身も国際会議でのプレゼン資料のたたき台作りなどを任せている。ブラックとやゆされる霞が関でも定時帰りがほとんどだ。
「下調べを頼むならAIの方が圧倒的に速い」と内閣府の幹部は語る。「部下に頼むことはだいぶ減った」・・・

・・・AIは使い方を誤れば将来の行政能力を損なうもろ刃の剣にもなる。あるベテラン官僚は「目先の生産性は上がっても次の世代を担う人材まで効率よく育つとは限らない」と懸念する。
大臣らが答弁に使うデータを集めたり、他省庁や企業との打ち合わせの準備をしたり。こうした下積みを通じて若手は霞が関特有の仕事を身につけてきた。先輩の判断を間近で学ぶ職場内訓練(OJT)が日常だった。
「答弁作成ではAIを使わないようにしている」。ある省の課長はそう言い切る。組織の経験知が細ることへの危機感が強い。「ただでさえ外注が増えている。そこにAIまで入れば、部下が自分で手を動かす機会がさらに減る」・・・

非公開の与党事前審査

2026年9月9日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」の続きにもなります。
役所の意思決定にかかる文書は、保存され、情報公開の対象となります。
法律や予算については、政府決定の前に、与党審査が必要です。各省の意向だけでは決められず、与党の承認が必要です。そして、しばしばその過程で原案に修正が加えられます。

ところが、その与党審査はほぼ非公開で、記録も残されません(ですよね)。
与党審査に提出した各省の文書は、保存対象の行政文書に該当するでしょうが、それらがどの程度保存されているのか。また、与党による修正過程が残されているのか。
日本の政治を分析する際に、重要な要素だと思うのですが。