15日の日経新聞は、未就学児を持つ専業主婦の95%が再就職を希望していると(リクルート社の調査結果)伝えていました。また、育児・介護支援制度を利用している部下を持つことについて、約7割の管理職が抵抗感はないと答えていると(日本能率協会の調査結果)も伝えていました。
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行政
新しい仕事58
14日の日経新聞は、OECDの労働市場分析を紹介していました。日本では、正社員の保護に比べ、非正社員の保護との差が大きいことを、指数で示しています。ヨーロッパは正社員も非正社員も保護が強く、アメリカはどちらも保護が弱いのです。日本は、正社員はヨーロッパ並み、非正社員はアメリカ型のようです。現在の日本社会は、いろんなことが過渡期にあるようです。
行政の手法の転換
生活者保護に、話を戻しましょう。ある分野で行政を進める際、限られた業者・業界団体を相手にするのと比べ、消費者・生活者一般を相手にするのは、なかなかやっかいなことです。特定少数から、不特定多数になるのですから。
手法も変わります。業界=供給側への補助・指導でなく、生活者=需要側への補助・支援と業界への規制です。業界を集めて指導したり、補助金を出す方が、簡単で早いです。それに比べ、生活者を相手にすると、指導とか補助金という手法は使いにくいです。
多分、業界が活動する際のルールを定め、それに違反したら罰則をかける、業務を停止・是正させる、という方法に変わるのでしょう。また、公費補助が必要だとしても、業界に補助金を出すのでなく、消費者に補助金を出すのでしょう。機関への補助から、利用者への支援(お金や情報)になります。こうすることで、消費者が良い業者を選ぶという、市場原理が働きます。
介護保険を考えて下さい。かつては老人福祉措置として、老人ホームなど入所施設に措置費(公費)を出していました。今は利用者が施設を選び、その利用に対して公費を出します。医療も基本はそうなっています。患者が病院を選び、費用の3割を窓口で払います。残る7割は、あとから保険者が払います。バウチャーといわれるのが、これの典型です。教育の場合は、父兄に切符を渡して、学校を選んでもらえばいいのです。
霞ヶ関に緊張関係を持ち込む
「生活省をつくって、生活者保護を担わせる」と提案しました。この提案に対しては、業界を担当していたこれまでの省(事業省と名付けましょう)の方が知識が豊富なのに対し、生活省はそれだけの知識がないので、対等に戦うのは難しい、との批判があるでしょう。それは承知しています。しかし、対立する使命を担わせるには、組織を分けなければならないと思います。
今、霞ヶ関にあるこのような対立は、経産省対公正取引委員会、経産省対環境省でしょうか。違った角度では、分権推進の総務省対各省、構造改革についての経済財政諮問会議対各省や規制改革会議対各省などがあります。
省として分けるのが望ましいのですが、そこまで分けられないときは、同じ省にあっても、局や課を分けることがよいと思います。たびたび取り上げた医薬品については、厚労省のなかで医政局と医薬安全局に分かれています。農水省に消費安全局があり、経済産業省に製品安全課などがあります(最近も、ガス湯沸かし器による事故が問題になっています)。そしてこれからは、消費者保護。生活者保護の政策分野が大きくなるべきなのです。それを担う組織を独立させることで、それがはっきり見えるのです。
生活省と事業省を対立させることについては、「今でも調整が困難な霞ヶ関に、さらに対立を持ち込むのか」との批判が出そうですが、これは必要な緊張関係だと思います。そして、国民の前にその対立を見せるのです。これまで、それを官僚同士で調整しようとしたから、問題解決が遅れたのです。
生活者保護だけでなく、構造改革についても、担当省をはっきりすべきでしょう。今は、経済財政諮問会議(それを助ける内閣府)や規制改革会議(それを助ける内閣府)が担当しています。これらの仕事を担う省を、はっきりと位置づけるのです。
省庁再編の軸
これから行政の使命は、これまでのような業界振興ではなく、生活者保護になるべきではないか、というのが私の考えです。そこで、省庁再編も、この哲学に沿って行えないか、と考えています。「生活省」をつくり、生活者保護を担うのです。
今、暮らしという観点で、内閣府にある組織が「暮らしの相談窓口」としてくくられています。クリックしてみてください。そこには、男女共同参画、配偶者暴力、消費生活、個人情報保護、NPO制度、公益通報、食の安全、インターネット上での違法・有害情報、交通事故被害、学校生活・友人関係等、社会生活における深刻な悩み、といった事項が並んでいます。
これらを見ると、これまでの官庁とは違ったイメージを、持たれるでしょう。道路を造ったり、農地を整備する仕事とは違った役割が、求められているのです。そして、一般の国民には、これらの方が切実なのです。
もちろん、各省にもそれぞれの分野で、業界でなく生活者・利用者側にたった施策、窓口があります。これらを軸に、生活省をつくれないかというアイデアです。地方団体には、すでに、生活部とか県民部、市民局があります。
次回に続く。