22日の読売新聞「論点」は、八代尚宏先生の「ハローワーク民間開放、行政効率化へ大きな意義」でした。
・・社会保険庁による年金記録のずさんな管理は、公務員でなければ信頼できる業務ができないという長年の神話を打ち砕いた。世の中を見渡せば、電力・ガス・鉄道など、公共的なサービス業務が民間によって立派に運営されている。
公務員の業務が民間に委託される例も増えてきた。昨年の道路交通法の改正で導入された駐車違反の取り締まりは、民間委託で違反件数が大幅に減少している。山口県では初の官民合同刑務所が誕生した。こうした改革の目的は、たとえ警察官や刑務官の仕事でも定型的な部分を民間に委ねることで、その本来の業務に専念させることである・・
ハローワークの民間開放は、官界や学界に多い官尊民卑の思想を変えるとともに、公務員を本来の業務に専念させるきっかけなるに違いない・・
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行政
政策の統合
21日の日経新聞経済教室は連載「環境力」、加藤三郎さんの「方向の確立は立法の場で」でした。
・・日本では、欧州のような規制と経済手法を組み合わせて急所をつく対策は、見あたらない。その最大の原因は、相変わらず関係省庁が縦割り行政で、業界団体などの利害の調整に審議会・調査会などの従来のシステムに寄りかかり、大胆な対策を打ち出せない点にある・・
しかし、日本ではこの方法しかないのかというと、そんなことはない。その好例が、60-70年代に産業公害が社会問題化した折、国を挙げて取り組んだ象徴である「公害国会」である。
60年代に入ると開始された日本の高度経済成長は、一方で極めて深刻な産業公害を日本の各地にもたらした。まず地方自治体が条例などで対応しだしたが、国の対応は後手に回った感がある。
・・政府は公害対策本部を設置。公害対策閣僚会議を開催して対応に努めたが、官僚主導の限界はもはや明らかであった。そうした折りに注目が集まったのが、70年11月末から暮れまで開かれた臨時国会である。「公害国会」と称されたその場では、わずか1か月足らずで、一気に14本の公害立法を整備。それらの法律いずれもが、その後の公害対策に大きな役割を果たしたのである・・
70年代といえば、まだ官僚の力も強く、各省に設けられた審議会の権威も今とは比べものにならないほど高かった。制度設計の大枠もそうした行政の場で作られることが大半だったが、公害国会の例は、官僚機構や審議会だけでは遅々として進まない国の方向や枠組みを定めるという機能を果たしたといえよう・・
2007.06.20
昨日「事後監視型行政」を書きました。今朝の朝日新聞は、「ニュースがわからん」で、「耐震強度検査、どう厳しくなった」を解説していました。建築確認審査は、これまで、自治体や民間検査機関が行っていました。今回新たに、第三者機関で再計算することが、義務付けられました。
昨日書いたように、確認審査をするのが官であろうが民であろうが、それを第三者が再確認することが必要なのです。こうして、事後監視型社会になると、行政の仕事は増えます。もっとも、それを官が担う必要はなく、官が認定した民が担うことも可能です。
事後監視型行政
18日の日経新聞は、「コムスン不正請求問題。介護保険、自治体チェック不十分」を解説していました。2000年に介護保険制度が導入されてから、2007年3月までに、指定取り消しなどの処分を受けた介護保険事業所は、全国で478件になるとのことです。介護が行政(自治体)による「措置」から、民間事業所と要介護者との「契約」になりました。すると、事業者が不正をしていないかを検査監督する必要が出てきたのです。類似の例として、建築確認があります。耐震性能を偽装したマンションが、昨年大きな問題になりました。これも、建築確認業務を民間に開放したことから、生じました。
もっとも、官が直営していると安心かというと、そうではありません。社会保険庁のずさんな年金記録問題は、官であっても問題を生むことを、しかも民間より大きな問題を生むことを示しました。
課題は、官の直営であっても、民の活用であっても、検査監督が重要だということです。しかし、事前調整型行政から事後監視型行政への転換は、まだ始まったばかりです。事後監視手法に慣れていないのです。また、人員も必要になります。金融行政が、事前調整から事後監視型に転換しましたが、その際には膨大な検査員の増員が必要だったのです。