カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

政府の内部統制

15日の日経新聞「中外時評」は、平田育夫論説委員長の「信頼できる政府、ぜひ」でした。
・・企業の不正については公正取引委員会や金融庁が、厳しく摘発し処分する。また不正防止のため、法律で企業の内部統制を強化しつつある。だが、政府自身の内部統制の実態はお粗末だ。
不正の摘発や、政策が有効かどうかの調査には、会計検査院のほか、総務省の評価監視官と政策評価官が当たる。このうち評価監視官は地方を含め300人と小所帯ながら頑張っており、2004年秋には基礎年金番号を統一していない人が380万人にのぼる事実を指摘している。これは、宙に浮いた年金5千万件の該当者の一部である。ところが、この指摘は、厚生労働省に無視された。強制力がないから、頑張ってもむなしい・・

政策の評価

14日の朝日新聞「時々刻々」は、アメリカのブッシュ政権が議会に提出した、イラク情勢に関する中間報告を、取り上げていました。そこでは、政権の戦略とともに、イラク政府が果たすべき努力目標が18項目示され、達成状況が採点されています。及第点を与えられたのは、半分以下です。
先日、このHPで「検証・行政の評価」を書き、政策の評価にも言及しました。ちょうど良い例なので、紹介します。
この報告は、議会が政権に義務付けたものだそうです。「努力目標項目は、議会が設定した。よって、判断基準の一部に過ぎない」と、国防総省高官が語ったとも書かれています。政権側が評価するのですから、客観的でないとの批判も出るでしょう。しかし、それが次の政策への判断材料になります。
政策の評価、そして議会の役割を、考えさせる教材です。日本では、多くの審議会や懇談会がつくられ、政策の議論がされます。しかし、それは新しい政策を検討することが、多いのです。実績を評価する第三者機関としての働きは、ほとんどありません。官僚の隠れ蓑といわれるゆえんです。
また、評価するためには、評価する項目と物差しが必要です。「おおむね問題ない」では、次への参考になりません。

検証・行政の評価

11日の読売新聞1面には、2つの検証が載っていました。一つは、愛知県警によるもので、5月に起きた長久手町の籠城・発砲事件での初動捜査と救出作戦の問題点の検証です。もう一つは、総務省の年金記録問題検証委員会によるもので、社会保険庁の年金記録漏れ問題の原因解明と責任追及を行うものです。
行政の失敗や問題をなくすために、このような検証は必要なものです。問題が起きた場合、責任者がお詫びして、処分を受けるということは必要です。しかしそれは「責任を取る」ということで、原因究明・再発防止にはつながりません。空・鉄道事故調査委員会は、行政についてではありませんが、検証・原因究明を任務としています。今後、広く行政に関して、検証が行われるべきだと思います。
かつては、「官僚の無謬性神話」などもありました。私は、誰がこんな「神話」をつくったのか、不思議でなりません。「官僚は間違いを認めない人種である」ということが、間違って伝えられたのでしょうか。
行政執行の失敗の検証だけでなく、政策の検証も必要だと思います。課題は、誰がテーマを決め、誰が検証するかです。身内による検証も重要なのですが、客観性を担保するためには第三者による検証が必要です。
もう一つ、議会という最高の監視・評価機関があるのですが。

総理表彰

今日、総理官邸で、再チャレンジ支援総理表彰を行いました。24組の方に、総理から表彰状をお渡ししました。式の状況を写した写真は、でき次第載せます。NHKが報道しているので、それをご覧ください。
この表彰は、今年から始めました。再チャレンジに成功した人でなく、それを支援した人や組織を表彰するものです。24組の方の業績は、パンフレットをご覧ください。それぞれ、頭の下がるご努力をしていただいています。各店に障害者を雇う目標を立て8割まで達成した企業、多重債務者の相談に乗っている市職員、刑務所出所者をたくさん雇っている企業、母子家庭の母をたくさん雇っている病院・・。
パンフレットは、増し刷りしていますので、ご関心のある方は再チャレンジ室までお申し出ください。使っているコウノトリの写真は、選考委員である柳生博さんのアイデアをいただきました。柳生さんは日本野鳥の会会長です。30数年ぶりに自然繁殖したコウノトリを、再チャレンジのシンボルにしてはどうかと、助言してくださいました。
来年も行いますので、「私だってやってます」とか「あの人もすごいですよ」という方がおられれば、応募してください。こうして、再チャレンジ支援の方の実例が世の中に広がれは、再チャレンジが盛り上がり、社会を変えていくことができると思います。
官邸での総理表彰って、結構気を遣います。職員のおかげで、無事すますことができました。ありがとう、みんな。私は、司会を務めました。式の後、受賞者のお一人が、「岡本さんは、こんな時も関西弁ですか」と質問されました。そこで、「私は、きれいな日本語をしゃべってますよ。東京弁は苦手ですが」と申し上げました。(6月26日)
総理表彰式は、官邸のHPに写真が載っていました。

コメ市場開放と農業強化

23日の朝日新聞「変転経済」は、辻陽明記者による「コメ市場開放」でした。
・・世界の貿易ルールづくりをめざす多角的貿易交渉「ウルグアイ・ラウンド」(1986~94年)で、日本はコメ開国を迫られた。このとき部分開放で逃げ切った日本は、農業の体質強化を怠ってきた・・
コメは聖域として、「一粒たりとも入れるな」がスローガンでした。1993年、細川内閣(非自民連立内閣)が、コメの部分輸入自由化を受け入れました。外圧によってです。最低輸入量を、国内消費の8%に増やすという内容です。農業団体が、当時の社会党本部にデモをかけてきたのを、覚えています。当時私は、自治大臣(社会党)の秘書官でした。党本部の職員が、「今まで、さんざん自民党を応援しておいて、こんな時だけ社会党に来てもねえ・・」とぼやいていました。
その後、最低輸入量制度はやめ、700%という高関税に切り替えました。また、農業を強くするために、「ウルグアイ・ラウンド対策予算」が組まれました。総額6兆円という、巨額なものです。記事の中にも出てくるように、多くは農業土木に投入されました。しかし、日本の農業が強くなったとは聞きません。このような予算・事業こそ、成果を評価する必要があります。
ある記者によれば、日本の農政問題は次のようなものです。
日本の農政は、兼業農家を保護したが、農業は強化しなかった。日本の農業問題は、コメでも作物でもなく、農地である。農地は宝くじであると、農家は思っている。つまり、一度目は農地解放で、小作地がただ同然で手に入った。二度目は公共事業や宅地化で、当たると高く売れた。これからも、このような宝くじに当たらないか待っている。だから手放さないし、貸しもしない。兼業農家にとって、農地は生産の資本でなく、売るための資産である。農地解放の記憶があるから、貸すと今度は逆に取られると思っている。
農家の半数以上が、65歳以上である。新たに農業に取り組む青年は少ない。そこで、あと10年もすれば、農業問題は「なくなる」。冷たい言い方だが、こうなる。毎年の新規農業従事者数より、農水省・自治体の農業部門・農協の新規採用職員の数の方が多い。この人たちは大変だが。
なるほどねえ。と、納得していては、だめなんですが。食料・農業・農村白書で調べたら、新規学卒就農者は2,500人で、39歳以下の新規就農青年は1万2千人でした。2,500人ということは、47県で割ると、1県当たり50人ほどですね。1,800市町村だと、1町に1人ちょっとです。農業高校や農業大学・農学部の卒業生って、農業には就かないのですね。保護される・保護が必要ということは、魅力がないということなのでしょう。何か途を間違ったようです。