務台クレアロンドン事務所長に、「CITYMAYORS」というサイトを、教えてもらいました。世界の市長の取り組みを、紹介しているサイトです。非営利の団体が、運営しているようです。残念ながら、英語ということもあってか、日本の市長さんはほとんど載っていないようです。英語で投稿すると、編集者がチェックして載せてくれるようです。安くて手軽に世界に向けて発信できるのですから、もっと活用すべきですよね。また、世界の情報がたやすく入手できるようです。
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行政
出先機関見直し、官僚の対応
3日の日経新聞は、「地方分権に官庁の壁、出先機関見直しで激論」を解説していました。各省が主張する「国が行わなければならない理由」に対し、丹羽委員長らが反論し、「ふまじめだ」と激怒している状況が、書かれています。
ある記者さん曰く、「この理由では、官僚の評価を落としますねえ。本人も、こんなことを、本気で思っているのでしょうか」
規制の新設
28日の諮問会議では、規制の新設過程のチェックも議論になっています。現在ある事務事業をスリム化しても、新たに仕事を増やしては、尻抜けになるからです。
新たな規制の新設には、事前の政策評価が義務付けられれています。昨年3月に政策評価法施行令が改正され、項目が追加されたのです。しかし、民間議員ペーパーでは、自己評価であることなどの問題点が指摘されています。
課題の一つは、所管省の評価だけでよいかということです。規制は、いろんな方面に影響を与えます。例えば、過度の安全規制は、経済に悪影響を与えます。伊藤隆敏先生が、3月1日の日経新聞で、空港外資規制見直しについて、次のように述べておられます。
・・市場原理をうまく機能させるためには、規制をすべてなくしてしまえば良いというわけではない。安全保障など国の根幹にかかわる部分を守るために必要な規制もある。その際には、最小限で最も効果を上げられる規制のあり方を、慎重に探る必要がある。
所管省庁だけが縦割りで検討するのではなく、政府の規制改革会議や経済財政諮問会議の場を活用して、省庁横断的に多様な観点から規制の影響を分析・評価して判断すべきだ・・
もう一つは、規制の増殖をどう抑制するかです。
官僚の力は、金・組織と人・権限の3つだと言われます。お金については、財務省主計局が予算査定によって管理しています。組織と人については、総務省行政管理局が組織定員査定で管理しています。権限(許認可・規制)については、統一して管理されていません。もちろん、お金や人と違い、規制は数字で数えることは難しいという性質もあります。
大きな政府と小さな政府が議論になる際、日本は予算と定員では諸外国と比較して、大きな政府ではありません。しかし、この規制の量と範囲、そして国民がどれだけ官に頼るかが、大きな政府イメージをつくるのだと思います。
政府機能の見直し・国の出先機関の地方移譲など
また、読売新聞は、地方分権改革推進委員会の解説として、出先機関見直しを取り上げていました。
記者さんとの会話
記:いよいよ進みますかね。総理の指示も出ましたし。
全:それは甘いで。新聞に書いてあるように、霞ヶ関は大反対らしい。
記:なぜ、反対するのでしょうか。だって、職員の身分が、国家公務員から地方公務員になるだけでしょ。
全:そうなんよ。地方機関の職員の大半は地元採用で、勤務地も変わらないんだけどね。
記:首を切るとか、事業予算が減るとかと違いますよね。行革といっても、国民生活にな~んにも影響ないですよね。リストラを進めてきた民間企業からすると、理解できませんよ。
全:そうだろうね。伊藤忠で大リストラをしてこられた丹羽会長からすると、理解不能だろうね。
記:受ける知事会は、引き受けても良いと言っているし。クビを切るわけでもないでしょう。反対する官僚は、エゴとしか見えないんですけど。
全:そう言われても仕方ない。
記:決めるのは誰ですか。
全:それは、総理だ。官僚は内閣の従業員で、各省の組織は内閣の下部組織だから、社長である総理が決めること。官僚が反対しているけど、それは従業員の抵抗であって、この場合は被告人でしかない。被告人が決定権を持っているわけではないのよ。
記:官僚が国家の将来を考え、彼らが決めているというのじゃないのですね。
全:日本国憲法には、そんなことは書いていない。行政=内閣の責任者は総理であって、官僚は従業員。
記:でも昔は、官僚が日本を引っ張っていったのでしょ。なぜ、官僚は、国家を考えなくなったのでしょう。
作り上げる過程
ドイツでは、連邦と州との間の権限改正の議論がまとまり、関係法が改正される見通しになったとのことです。ポイントは、連邦参議院(州代表で構成)で審議する法律が、これまでの全法律の70%から40%程度まで減少すること、連邦と州との競合的立法であった項目のいくつかが州へ移管され、またあるものは連邦の専属になります(デュッセルドルフの石山英顕君の教示によります)。ドイツでは連邦制度の改革ですが、日本でいえば国と地方の権限整理・分権に相当するでしょう。
こう言えば簡単に聞こえますが、結構、紆余曲折があったようです。まずは、2003年に改革委員会が発足し、1年あまり議論を重ねましたが、教育行政の権限を巡って対立し、成果を出せないまま2004年には解散しました。昨年秋の総選挙を受けて、お蔵入りになっていた報告案について合意にこぎ着けたようです。もっとも、連邦と州との財政調整については、訴訟になるなど対立が続いていて、改革その2は困難と予想されています。
これを読んでいて、いずこも同じだなあと思うとともに、次のようなことも考えました。私たちは、明治以来欧米先進国の制度を学びに行き、それを輸入しました。そして、最新の最高と思われる制度や技術を導入することができました。しかし、各国とも、考えた制度を簡単に導入できたわけではありません。いろんな試行錯誤、利害の対立、妥協を重ねて、たどり着いたのでしょう。
ところが、完成品を輸入することに慣れた日本は、制度とは輸入すればいい、完成品はすぐに適用できると、思いこむようになったのではないでしょうか。何か問題が生じると、すぐに「海外視察」を行うのも、この一環かもしれません。
よりよい社会を作ること、そのための制度を作ることが政治なら、政治とは設計から実現までの過程を含んだものです。そこには、利害関係者の協議と妥協がなければ、合意にはたどり着きません。100点満点の答えがあって、全員一致で賛成するということはほとんどないでしょう(発展途上国ならそういうケースが多かったのでしょうが)。またそういう制度の導入なら、それは「政治」とは言わないと思います。
日本は、結論だけを輸入することで、作り上げる過程を重視しない、説得と妥協を軽んじる社会になったのではないでしょうか。これは、時には理想を美化して、妥協を批判することにもつながります。
新しい社会問題に対し、どのような対策を考えるかといった構想力とともに、どのように実現するかという「過程力」も、政治の大きな要素だと思います。
朝日新聞は8日から、「自民総裁選、点描・次への課題」を始めました。第1回目は格差問題として、都会と地方が取り上げられています。「全国2109集落消滅の危機」「地方は置き去りか、東京だけ別世界」というのが見出しです。(3月8日)
3日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅教授の「中流の解体、安定の基盤どこに?」でした。
「この『中流の解体』現象は『国民』経済の解体、経済のグローバル化の進展とともに先進各国において発生した。雇用の安定と社会保障の確保が経済活動の目標であったかのような『国民』経済の時代から、利益の極大化を求めて熾烈な競争を繰り広げるグローバル化の時代への変化は経済・社会システムを大きく変えることにつながった。『中流の解体』はその一つの帰結であった」
「ここでは2つのポイントに絞って議論を展開したい。第一は政府に可能な施策にはどのようなものがあるかという点である。グローバル化に直面した各国政府はおしなべて人的資源の充実へと政策の舵を切った。政府が所得水準を国民に保証する手段をもはや持たなくなった以上、可能な限り、機会を活用する能力を育成することによって政策を代替しようとしたのである」
「第二は所得格差の政治的帰結である・・20世紀中葉に樹立された中流型社会は民主主義の安定にとって重要な基盤であったが、日本においては着実な経済成長とこうした中流型社会の形成は、民主政治の安定にとって決定的な役割を果たしてきた。経済成長の成果を政府を通して全国津々浦々にまで均霑し、巨大な中流型社会を作り上げたのが伝統的な自民党政治であった・・・小泉政権がこうした伝統的な統治スタイルに明確に決別を宣言し続けたことは確かである。この古い利益政治が基盤を失ったとき、政治はどこに政治的統合の基盤を求めるかが次の問題となる」(2006年4月3日)
日経新聞は3日から、「日本を磨く」の連載を始めています。4日は中西寛教授の「アジア統合『扇の要』に、重層的強力束ねよ。国内、21世紀型制度確立を」でした。
「・・・しかし、いわゆる小泉改革は、必要な制度改革の端緒をつけたに過ぎない。福祉、医療、財政の基本構造を高度成長型から少子高齢型へ、すなわち20世紀型から21世紀型へと抜本的に転換させることが急務である。そしてこうした大変革を断行するには、これからの政権が小泉政権のトップダウン型の政治スタイルを基本としつつも、それ政策補佐機能の充実や指導者と国民とを結ぶ制度の確立で支えていくことが不可欠となる」
「ここで政策補佐機能の充実とは、官僚機構の位置づけの変更という歴史的な改革を意味する。明治期に形成された日本の国家官僚制は、全国から優秀な人材を中央に吸収するメカニズムとして高度成長期までおおむね有効に機能したが、今や空洞化し・・・一般官庁は地方への権限移譲、さらには道州制などの導入によってその主な役割を縮小させていくはずであり、そうした流れは続くであろう」(4月4日)