「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

大きな政府、小さな政府

日本は先進諸国に比べ、公務員数は少なく、予算規模(国民負担)も小さいので、「小さな政府だ」といわれます。もっとも、歳出予算は結構大きく、正確には、国民負担では「小さな政府」で、歳出額では「中くらいの政府」です。
いろいろな議論がありますが、混乱しているように思います。そこで、次のように整理できるのではないかと、考えました。
1 行政機構の規模
これは、簡単には公務員数です。そして、同じ成果を出すなら、より小さい政府=効率的な政府が望ましいです。
2 政府の出力
行政機構が、どれだけの仕事をしているかです。例えば公共事業の額、社会保障の額です。社会保障を考えてもらえばわかるように、これは必ずしも、小さな政府がよいわけではありません。健康保険、介護保険、年金、生活保護が小さいほど良いとは、国民は考えないでしょう。
なお、「出力」と言ったのは、単純に「歳出額」では測れないからです。ムダな予算だと(人件費に消えたりすると)、「有効な仕事」にならないからです。「国民に届く予算額」といえるでしょう。
3 政府の守備範囲
しかし、政府の仕事は、予算だけでは測ることはできません。法令による規制が多いと、国民が政府に依存する範囲が大きくなります。これは、大きな政府です。例えば、文科省が補助金を出さなくても、小中学校を細かく規制で縛ると、大きな政府になります。もちろん、これも小さな方がよいとは限らず、必要なところは政府が責任を持つべきです。
行政の力の源泉は、人=公務員、金=予算、権限=法令です。上に述べた3つは、おおむね、これに合致します。これまでは、ヒトとカネを問題視して、比較していましたが、権限についても取り上げるべきでしょう。国にあっては、公務員数は総務省行政管理局が管理しています。予算は財務省主計局が管理しています。権限については、そのような仕組みはありません。

赤字でも良い第三セクター、悪い第三セクター

自治労の月刊誌「自治研」2008年3月号に、宮木康夫さんの「第三セクターの抱える財政的問題」が載っています。宮木さんは、元日本開発銀行マンで、横浜市の第三セクターである横浜新都市交通(横浜シーサイドライン)の取締役でした。第三セクター経営の専門家として、著書を出すなど活躍しておられます。
この論文では、ほとんどすべての第三セクターは、実質的な赤字である。もうかるのなら、第三セクターで行う必要はない。赤字だといって、すべての第三セクターが不健全ではない。悪い第三セクターと良い第三セクターに分けて、異なった対応をすべきであると、主張しておられます。詳しくは、論文をお読みください。

予算の見える化

23日の日経新聞で、大林尚編集委員が「予算見える化、日本版へ議論。使い切り主義、転換迫る」を解説していました。
・・国の予算は国会承認によって初めて支出が可能になるが、使い道は事実上、役所が決めている。A省の予算を誰がどういう目的でいくら使ったのか、瞬時に網羅的に把握するのは面倒だ。簡単に知る手立てはないか。その仕組みづくりに、経済財政諮問会議が動き出した。
15日の諮問会議では、民間議員の丹羽宇一郎伊藤忠商事会長が「官庁は予算を使い切ることを重視する傾向がある。国民からすると重要なのは結果だ」と改善を求めた。これを受けて、額賀福志郎財務相が新しい仕組みづくりを担当することになった。今年度中に試行し、2009年度から本格稼働させる。
予算の使い方を監視するのは本来、立法府の仕事だが、サイトができれば誰でも骨を折らずにタックスイーターを突きとめられるようになる。
使い切るのが善とされた予算主義。「見える化」はその転換を迫るための簡便なしかけであり、公益法人改革の一里塚にもなる。

税制改革の議論

読売新聞18日、近藤和行編集委員の「政府税調、議論進めず。消費税上げ、唐突感に国民の反発も」から。
・・政府与党は、消費税を含む税制改革の議論を、7月の参院選まで封印することを決めており、調査分析に徹する政府税調の姿勢は、それに足並みをそろえているだけとも言える。また、消費税は過去に政治問題化したこともあり、「参院選の争点にすべきではない」(自民党税調会長)との主張にも一理はある。
しかし、安倍首相や与党は、ともに消費税引き上げなど抜本改革のスケジュールについて、「来年度改正の中で全体像を明らかにしたい」としている。その場合、実質的な議論の期間は、夏休み明けの8月下旬から12月中旬まで、わずか3か月余。消費税率引き上げという事の重大さや、過去の導入・税率引き上げ時に比べ、極めて短時間での政策決定になる可能性がある。
・・選挙戦術上、与党が消費税に関する発現を封印するのはともかく、政府や政府税調は、税制改革への取り組みや課題を、もっと前倒しで発信すべきではないか。

パラサイト・ミドル

19日の朝日新聞に、三神万里子信州大学客員准教授が、「パラサイト・ミドル。若手の成長遅らせる原因に」を書いておられました。
・・近年、日本企業の間で、若手社員の対人能力や行動力に不満を抱く様々な調査結果がでているが、中堅のもたらす弊害にも着目したい。・・発端は「45歳を境に現場の情報をゆがめる。波風を立てずに退職まで過ごそうとするためで、企業の動きが遅れる」という現場の声にある。大企業では、若手の成長機会が遅れるキャリアの足踏み現象が起きている。高齢化と年金受給年齢の引き上げに伴い、定年延長の動きから、意思決定権限が高齢層に移っているためだ。55歳定年制が一般的だった80年代は、日本の部長職の平均年齢は40代だった。しかし現在、就職後20年を経ても、上場企業の平均値では42歳で係長であり、45歳で課長に届かない。他の先進国や中国、インドなどの成長国では、45歳といえば経営層の年齢である。福井県の繊維メーカー、セーレンは80年代後半からこの問題に策を講じ、下請け繊維加工業から短期間で世界企業に脱皮した。変革当時から陣頭指揮をとる川田達男社長は語る。「社員個々人の意識改革では限界があった。効果が出たのは、昇進するほど働かなくなる中間管理職の評価方法を変えてからだ」。中高年は、大組織に所属していることを実力とはき違え、若手は、組織内の同僚や上司との比較で自分を測っていないか・・
とても刺激的な指摘です。原文をお読みください。