28日の日経新聞「東京市場改革、誰のため」から。
・・1984年から始まった日米円・ドル委員会の焦点は、日本の金融・資本市場の開放だった。「世界第二位の経済規模にもかかわらず、かなりの障壁が残る」。当時のアメリカ高官が示した不満は、いまの東京市場への国際的な見方を聞くかのようだ。円・ドル委員会から4半世紀たってなお、国際化が議論される日本。1996年冬には、当時の橋本内閣が金融ビッグバンを掲げ、総合的な改革案を打ち出した。「2001年までに東京をロンドン、ニューヨーク並みの市場に」という目標は、いまもスローガンの域を出ない。改革の速度はなぜ遅いのか。「真剣に国益を考えないから世界を見ようともせず、のんびりした規制緩和ですませることができた」、ある社長は手厳しい。
・・イギリスの金融と関連サービス業は、過去10年で雇用を3割増やし、国内総生産の伸びの4割強に貢献したという。産業としての金融を育成すれば、国益にもかなうわけだ。国をあげて金融を振興する動きは、世界的に広がっている・・
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行政
日本の農業
23日に、「コメ市場開放と農業強化」を書きました。24日の日経新聞「成長を考える」は「産業としての農へ」でした。それによると、国内総生産(GDP)に占める農業の割合は、1%台だそうです。農業就業人口のうち、70歳以上が43%を占めます。高齢化は、思った以上に進んでいるのですね。
投資協定と「省庁の怠慢」
15日の産経新聞「投資協定まだ12か国。日本・カンボジア締結」から。
日本とカンボジアは、14日に投資協定に署名した。規制や税制といった投資環境面で、両国が自国企業と同等に扱うことなどが柱。日本企業の海外投資促進につながる投資協定の締結に、日本政府がようやく力を入れ始めたことを象徴するものだ。
包括的な経済連携協定(EPA)に比べて、投資協定は国内の反発が少なく締結しやすい。ところが、日本の投資協定締結国はカンボジアが12か国目。132か国と締結済みのドイツはもちろん、113の中国、101のイギリスなどとの差は歴然としている。
それだけに、「投資協定を重視してこなかったのは、関係省庁の怠慢」との自責の弁が聞かれるほど。経産省の北畑隆生事務次官も14日の記者会見で、「投資協定は企業が国際展開する中で重要な役割を果たすと思っているが、非常に出遅れ感がある」と述べ、出遅れた現実を認めている・・
お金でできること、できないこと
12日の読売新聞スキャナーは、「骨太の方針、陰の主役。働き方の見直し」でした。目の付け所が良いですね。「今年の骨太は骨細だ」とか「総花だ」といった定型的批判に比べ、記者(大津和夫記者)がよく勉強しています。またそれを大きく載せたデスクも、たいしたものです。
詳しくは本文を読んでいただくとして、私が関心を持った部分を抜粋します。
・・1989年の合計特殊出生率が過去最低となった1.57ショックを受け、政府は94年のエンゼルプランで始まる少子化対策で、主に保育や児童手当の拡充に力を注いできた。働き方の見直しも対策に盛り込まれてきたが、「地味で票にならない。手当や保育園の拡充の方が、目に見えやすくPRしやすい」(自民党幹部)といった事情で、実効性の期待できる対策は導入されなかった。
結果として出生率は回復せず、政府は「仕事一辺倒の働き方を変えない限り、対策の実効性は上がらない」(内閣府幹部)と判断。「保育」「経済支援」に次ぐ対策の三番手だった「働き方」が、前面に押し出された・・・
1990年代は、暮らしに関して、もう一つ大きなプランが進んでいました。ゴールドプランという、高齢者対策です。老人ホームや訪問介護を増やすといったことで、これが順調に進み、2000年の介護保険導入ができました。私は、当時交付税課の補佐で、ベッド数を増やすために、市町村の財源を手当てしていました。あまりに急速に増やすので、「本当にできるのだろうか」と心配していました。でも、できました。
一方、エンゼルプランは、効果が上がりませんでした。この記事を読んでわかることは、介護は、サービスとしてお金と人があればできる仕事だったのです。少子化対策は、世の中のお母さんや若者を、その気にさせなければ進まない施策だったのです。意識の誘導であり、生みやすい環境づくりだったのです。そして、保育園の拡充や経済支援だけでは、達成できないのです。「行政の手法の変化」を考えさせる、いい教材です。
政府の役割、子育て後進国
もう一つ、少子化対策を。12日の日経新聞経済教室は、渥美由喜さんの「育児サービスの強化急務」でした。23年前、日本とフランスの出生率は、共に1.84でした。2006年では、日本が1.32だったのに対し、フランスは2.0です。
・・当時の日本が出生率の水準に「満足」、今後の方針は「介入しない」と回答したのに対して、フランス政府は「不満」「介入する」と回答した点だ(国連のアンケート調査)。以来、両国は大きく明暗を分けた。半年前に筆者がフランス政府高官にヒアリングした際、「子どもを持ちたいとの国民の基本的な生活ニーズを満たすのが政府の役割」と断言していた・・
フランスでは、ベビーシッターや家事代行サービスにかかる費用の半額が、個人の所得税から控除される。さらに、企業がそれのサービスに利用できるバウチャー(利用券)を従業員向けに発行した場合も、その経費の4割程度が法人税から税控除される。すなわち、企業が積極的に子育て支援をするようにインセンティブ(誘因)を引き出すとともに、バウチャーを介在した市場原理により民間保育サービスが競い合う仕組みを作っているのである。
英国の官民連携の試みも、興味深い。英国では「働きやすい企業表彰制度」が盛り上がり、企業が就労環境を競い合っている。英国の企業表彰制度の特徴は、従業員評価を組み込んでいる点だ。主宰団体は民間メディアだが、調査の実施主体は外部の民間シンクタンクや非営利法人に委託している。エントリーしたい企業は、さまざまなデータとともに全従業員の名前と連絡先を提出する。調査機関は、それぞれの企業が提出した名簿から無作為で抽出した従業員にアンケート調査を行う・・・働きやすい企業として高名になると、採用の応募に優秀な人が集まるようになるなどメリットが大きい・・・
最もワークライフ”アン”バランスなのは、中央官庁と一部の都道府県庁ではないか。率先垂範すべき行政が言行不一致ではいけない・・