カテゴリーアーカイブ:行政

最高裁判所の違憲判断を支えるもの

2016年12月12日   岡本全勝

12月2日朝日新聞オピニオン欄「憲法の価値を守るもの」、見平典・京都大学准教授の発言から。日本の最高裁判所が、アメリカなどと比べて、違憲判断に消極的だったことについて。
・・・二つめが「規範的資源」です。積極的な違憲審査の根拠となるような、法理論、判例、司法の果たすべき役割に関する共通理解がどの程度存在しているか、ということです。日本では米国と比較して司法が議論の分かれる社会問題の解決にどの程度踏み込むべきかについて狭く理解されてきました。
三つめが「政治的資源」です。最高裁が違憲判決を下したときに最高裁を政治的攻撃から守る政治勢力のことです。米国では法曹集団や訴訟団体、公益団体が裁判所を支えてきました。政治指導者も、連邦と州が対立した時や立法による政策実現が困難な場合などに、しばしば積極的司法を支持してきました。しかし、日本ではこうした基盤が欠けていました。
近年、婚外子の相続分規定や投票価値の格差に関する判決にみられるように、最高裁は従来より積極的に違憲審査に取り組んでいます。司法制度改革で立法・行政に対する司法のチェック機能の強化に政治的正統性が付与されたことや、裁判官・調査官の世代交代と努力が背景にあるとみられます・・・
原文をお読みください。

この記事は、12月11日に書いています。新しいホームページ作成ソフトには、「公開予約機能」がついているので、12日17時半過ぎに公開するように設定しました。「土日の投稿が多いですね」との、読者の意見があります。時間があるときに書くので、どうしても休日の執筆が多くなります。そこで日曜に書いて、公開日をずらしました。うまく行くかな?

真実をつかんだトランプ候補、2

2016年11月23日   岡本全勝

朝日新聞11月17日オピニオン欄「見過ごされてきたもの」、渡部恒雄・笹川平和財団研究員の発言から。
・・・今回、重要な役割を果たしたのは白人中心の「忘れられた層」でした。所得層の最下層は今回も過半数はクリントン氏に投票していますが、その上の中流の過半数がトランプ氏を支持した。彼らは「現在の不満」と「将来への不安」を抱えていました。
ニクソン、レーガン、ブッシュ親子というこの半世紀の共和党政権は、この層を取り込んできましたが、実際に不満や不安を取り除く有効な政策を何もやってきませんでした。彼らは共和党主流派には希望を託せないことも肌で感じ取っていました。そこにトランプ氏という門外漢が出てきて、共和党の主流派にも矛先を向けた。「どんな政治をするのか分からない」というリスクは、この層も分かっていましたが、むしろ「旧来の共和党とは違う変化をもたらす」可能性に賭けたのでしょう・・・

真実をつかんだトランプ候補

2016年11月21日   岡本全勝

朝日新聞11月17日オピニオン欄「見過ごされてきたもの」、エマニュエル・トッドさんの「真実語っていたトランプ氏」から。
・・・歴史家として見るなら、起きたのは当然のことです。ここ15年間、米国人の生活水準が下がり、白人の45歳から54歳の層の死亡率が上がりました。で、白人は有権者の4分の3です。
自由貿易と移民が、世界中の働き手を競争に放り込み、不平等と停滞をもたらした、と人々は理解し、その二つを問題にする候補を選んだ。有権者は理にかなったふるまいをしたのです。

奇妙なのはみんなが驚いていること。本当の疑問は「上流階級やメディア、大学人には、なぜ現実が見えていなかったのか」です。
選挙戦では、候補個人について多くのうその応酬がありました。しかし、社会について語る場面では、真実を口にしていたのはトランプ氏の方でした。
彼は「米国はうまくいっていない」と言いました。ほんとうのことです。「米国はもはや世界から尊敬されていない」とも言いました。彼は同盟国がもうついてこなくなっている事実を見ています。そこでも真実を語ったのです・・・

 

トランプ大統領、「アメリカの強さ」意味の違い

2016年11月12日   岡本全勝

日経新聞電子版11月11日、ファイナンシャルタイムス提携記事「トランプ氏の「米国第一」、退廃と衰退の始まり」から。

・・・ケネディのビジョンの寛大さと広大さ、力強さはトランプ氏の宣言――我々の計画は米国が最優先となり、グローバリズムではなくアメリカニズムが信条となる――の狭量な国家主義との悲しいコントラストを描く。この2つのビジョンの違いは計り知れないほど大きく、不吉だ。米国の戦後世代が世界中の自由を守ると固く誓うようになったのは、理想主義からだけではなかった。ケネディが述べたように、この世代は「戦争によって鍛えられ、つらく苦い平和によって自制心を培った」。トランプ氏に投票した世代と好対照を成す。すなわちファストフードによって太らされ、テレビのリアリティー番組によって幼稚化された世代だ。

ケネディ世代は大恐慌と第2次世界大戦から厳しい教訓を学んだ。あの世代は「アメリカ・ファースト(米国第一)」――米国を広い世界の問題から隔絶しようとする政策――が最終的に、経済と政治の大惨事につながったことを知っている。だから1945年以降、共和党、民主党双方の新世代の指導者たちは世界のために経済と安全保障の構造を築いた。米国のリーダーシップと、北大西洋条約機構(NATO)、国連、世界銀行といった国際機関、同盟関係を軸とする構造である・・・

・・・中東での戦争にへきえきし、国際貿易が国内経済に問題を引き起こしていると説得されているようにみえる国では、「米国第一」政策に誘惑されるのは無理もない。米国には、経済を支えるだけの巨大な国内市場があり、国の安全も大西洋、太平洋という2つの大海で守られている。だが、もし世界から身を引けば、米国はやがて、今より貧しくなり落ちぶれるだろう。そして1930年代と同じように、最後には米国自体の安全と繁栄も、国際貿易の崩壊と権威主義者の復活に脅かされることになる公算が大きい・・・

原文をお読みください。

 

 

自動車行政の課題、藤井自動車局長

2016年11月10日   岡本全勝

藤井直樹・国土交通省自動車局長が、季刊『運輸政策研究』2016年10月号に「自動車を巡る課題―コンプライアンスと技術革新」を寄稿しています。
読んでもらうとわかりますが、成熟期に入っていると思われる自動車行政が、いくつもの新しい課題に直面しています。多くの乗客が亡くなった軽井沢スキーバス事故、三菱自動車工業とスズキの燃費不正事案、タクシーの呼び寄せアプリやライドシェア。これらを、コンプライアンスと技術革新という観点から整理してあります。そして、現在の課題を取り上げ、その社会的、構造的問題に切り込む。さらに、将来を見通す。
「それは、運転手が悪いのです」とか「会社の問題です」と、個別事象として片付けることも可能です。しかし、それを社会的問題として考えるのです。なかなかの論文です。ぜひ、原文をお読みください。
近年は、官僚が自説を述べない、論文を書かないような気がします。でも、所管行政の現状と課題を整理し、これからの取り組むべき方向を内外に示す。それが、局長や課長に期待されている役割なのですよね。そして、評論家にならず、その課題を解決することに取り組む。これが、官僚の役割です。
藤井局長に続く官僚を期待します。(2016年11月10日)