カテゴリーアーカイブ:行政

林・前駐英大使の新著

2016年12月28日   岡本全勝

林景一・前駐英大使が、『イギリスは明日もしたたか』(2016年、悟空出版)を出版されました。
イギリスは、今年6月の国民投票で、EUからの離脱を決めました。今年の驚きの国際ニュースの一つでしょう。もう一つは、トランプ大統領候補の当選です。
林大使は、2011年から今年まで、5年間にわたって駐英大使を務められました。その視点からの分析です。イギリスのEU離脱の意味、なぜそうなったか、イギリス人はどう考えているか、この後どのようになるのかといった、イギリスのこれまでとこれからのほか、現在の国際関係が鳥瞰されています。アメリカ、ドイツ、ロシア、中国など。

イギリスの国民投票とトランプ候補の当選は、事前予想を裏切る結果で、識者には大きな驚きです。その共通の原因として、国民の国際化への反発、移民への反発、エリートへの反発などが挙げられていますが、イギリスとアメリカでは、意味合いがかなり違うようです。イギリスでは、必ずしも国際化への反発ではなく、EUによって「主権が侵される」ことへの反発が大きいようです。もともと、統一通貨ユーロには入っていないのです。
この本は、話し口調で書かれているので、読みやすくわかりやすいです。しかし、世界を見渡しかつ歴史から説き明かす内容は、深いものがあります。著者の学識ならではです。紀伊国屋新宿本店でも、新書のコーナーに平積みされていました。

私が総理秘書官を勤めていたとき、林先輩は内閣官房副長官補(外政担当)で、ご指導をいただきました。私の帽子のお師匠さんでもあります。イギリス紳士然として、格好良いのです。ちなみに、本の帯に顔写真が写っています(帽子はかぶっておられません)が、「福島民報社提供」とあります。イギリスのウイリアム王子が福島を訪問されたときに、同行されたときの写真でしょうかね。

北海道は大きい

2016年12月25日   岡本全勝

今朝12月25日の朝日新聞に、「北海道「分県」の夢」という記事が載っていました。そこに引用されている「北海道にすっぽり入る都府県の地図」が、秀逸です。北海道広告業協会が、この夏に新聞に載せたもので、東京都や大阪府、新潟県など15の都府県が、北海道の白地図内に収まっています。改めて、北海道の大きさを実感します。それにしても、ジグソーパズルのように、うまくはめ込んだものです。岩手県の広さを表現する際に、「四国より少し小さいほど」と紹介することがありますが、北海道はこんなに大きいのですね。

この記事は、北海道をいくつかの県に分割してはどうかという主張です。詳しくは、記事をお読みください。北海道は、面積ではオーストリア並み、人口でもデンマーク並みです。GDP等も、ヨーロッパの中くらいの国と同じ規模を持っています。それを考えても、分割は非現実的ではないのです。
私も分割論者なのですが、課題はどのように分けるかです。札幌市に人口や商工業が集中しているので、単純に面積で分けると不満が出るでしょう。しかし、例えば2分割すると、もう一つの方の県の県都とその周辺は、間違いなく発展します。北海道全体の発展を考えても、札幌一極集中を改善する良いきっかけなのです。

地方自治体への信頼47%、中央省庁は31%

2016年12月21日   岡本全勝

12月21日の読売新聞が、日米共同の世論調査結果を載せていました。詳しくは本文を読んでもらうとして、ここでは公共機関や組織に対する信頼度を紹介します。
日本では、信頼の高い者から並べると、自衛隊72%、病院67%、裁判所65%、警察・検察57%、新聞54%、地方自治体47%、首相46%・・・です。中央省庁は31%と低く、自治体の方が高くなっています。喜んで良いことやら、悪いのやら。
国会は28%、大企業31%、労働組合37%です。新聞が54%に比べ、テレビは37%でしかありません。
ちなみに、アメリカでは、軍隊91%、病院80%、教会73%、警察・検察72%、学校65%、地方自治体63%、裁判所61%・・です。
大統領が47%、連邦省庁は42%、連邦議会は33%です。両国とも議会は低いですね。

明治維新の意義、北岡伸一先生。2

2016年12月17日   岡本全勝

北岡伸一・JICA理事長の「明治維新150年、開国と民主的変革に意義」の続きです。
・・・日本は戦前とは違って、軍事大国ではないし、経済大国としても一時のような勢いはない。しかし、このように先進国への道を歩み、伝統と近代を両立させてきたことでは、世界に並ぶ国はない。
こうした経験を、その過程における失敗の数々とともに、世界と共有することが、日本が世界に最も貢献できる点だと思う。
日本は、政府開発援助(ODA)でも、最も成功した国である。1950年代においては、西欧諸国が援助の対象としたサハラ以南のアフリカ諸国と、日本が援助の対象とした(日本以外の)東アジア諸国の経済水準は、ほぼ同じだった。現在、両者の間には、巨大な差がついている。
その原因の一つは、日本のODAだったと言っても、それほど誇張ではない。
現在、世界の大学、大学院で開発学(development studies)の本場はイギリスだということになっている。しかし、本場は日本であるべきだ。日本を開発学の本場として、世界に貢献することが、日本の義務ではないだろうか・・・

明治時代の意義、北岡伸一先生

2016年12月16日   岡本全勝

12月11日の読売新聞1面「地球を読む」は、北岡伸一・JICA理事長の「明治維新150年、開国と民主的変革に意義」でした。
・・・大正元年(1912年)9月、若き日の石橋湛山は、明治時代について次のように述べている。多くの人は、明治時代を戦争と植民地の拡大の時代だったと見るだろう。しかし自分はそうは考えない。国民は軍事費の負担にあえいでいるし、これらの戦争は、時勢上やむを得ず行ったものだ。その成果は一次的なものであって、時勢が変わればその意義を失ってしまう。
そして石橋は、明治時代の最大の事業は、戦争の勝利や植民地の発展ではなく、「政治、法律、社会の万般の制度および思想に、デモクラチックの改革を行ったことにある」(『東洋時論』「評論」)と述べる。私は石橋の議論に強く共感する・・・

・・・私は国連大使として国連で世界の紛争に関する議論に参加し、また国際協力機構(JICA)理事長として、途上国の発展に関わっている。その度に痛感させられることは途上国の発展の難しさである。
紛争を起こさず、あるいは収束させ、国家的統合を維持し、経済的、社会的、政治的に発展していくことがいかに難しいか。経済発展はできても、そこから民主主義へと発展していくのは極めて難しい。
したがって、多くの途上国にとって、非西洋から先進国になり、自由、民主主義、法の支配といった近代的諸価値と伝統を両立させている日本という国は、まぶしいようなすごい国なのである・・・