カテゴリーアーカイブ:行政

官の役割、民の役割。養子縁組

2017年1月31日   岡本全勝

笹川陽平・日本財団会長のブログ、1月27日は「養子縁組あっせん法の成立」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。これを読んで、官の役割と民の役割を考えました。生みの親が育てることができない子どもを、誰がどのように支援するかです。
・・・日本の養子縁組の制度には、普通養子縁組と特別養子縁組がある。普通養子縁組は、古くから家の跡取りなどを迎えるために行われてきた。これに対して特別養子縁組は30年ほど前に創設され、生みの親が育てることのできない子どもに、あたたかい家庭を提供するための児童福祉としての制度である。諸外国では、養子縁組は子どもが家庭で健やかに育つための重要な児童福祉と捉えられているが、日本では、これまで児童相談所などの行政機関は積極的に取り組んでこなかった。
そのため、民間の養子縁組団体が、予期しない妊娠で悩む女性の相談にのり、子育てを希望する夫婦への仲介を担ってきた。不妊治療をしても子どもを授からず、養子を希望する夫婦は多く待機しており、赤ちゃんは安全で愛情にあふれた家庭ですこやかに育つことができる。日本の虐待死で最も多いのは0歳0ヶ月の赤ちゃんで、10年間で111人が死亡しており、その9割は実母によるものである。特別養子縁組は赤ちゃんの虐待死を防ぐ上でも重要な役割を果たすことが可能である・・・

これまでは、民間の団体が斡旋していましたが、中には営利目的で問題を起こす団体もありました。日本財団が支援している「ハッピーゆりかごプロジェクト」によると、次のようになっています。
・・・様々な家庭の事情で、生みの親と暮らせない子どもたちがこの日本にも約4万人います。こうした子どもたちは、国連のガイドラインによると養子縁組や里親制度を通じて家庭で暮らすことが望ましいとされていますが、日本では、社会的養護下にある子どものうち、約85%が乳児院や児童養護施設などの施設で、約15%が里親家庭やファミリーホームで暮らしています。諸外国では里親家庭で暮らす子どもの方が多く、日本でも子どもが家庭で暮らせるようにする取り組みがさらに必要です。
また、生みの親の元に戻ることができない子どもについては、養子縁組により新しい家庭を得ることが望ましいとされ、日本では公的機関である児童相談所と民間団体が、子どもの福祉を目的とした養子縁組を行っています。日本で特別養子縁組される子どもは年間540人程度ですが、アメリカでは毎年5万人以上、イギリスでは4,500人以上の子どもたちが養子縁組されています・・

このような恵まれない子どもたちへの支援を、誰が責任を持って行うか。これまでは民間に任せていましたが、それでは問題が出ることがわかってきました。また、なかなか養子縁組が進みません。「赤ちゃんポスト」も、様々な意見があります。しかし、恵まれない子供たち、困っている母親たちをどのように救うか。民間の力を、行政がどのように引き出すか。法的規制だけでなく、財政面やノウハウ面での支援も行うべきでしょう。
この項続く。

「トランプ大統領」が、民主主義と資本主義につきつけるもの

2017年1月25日   岡本全勝

1月22日の日経新聞、マイケル・サンデル・ハーバード大学教授の「これからの民主主義の話をしよう。市民の無力感 解消の道探れ」から。
・・・欧州では多くのポピュリズム政党が台頭しつつある。だからこそ、今こそ、民主主義と資本主義について根本から問い直す時期だ。民主主義についていえば、政府を代表する伝統的な組織や機関はお金や企業の利害によって左右され、普通の市民の声が反映されていない、と人々は感じている。それこそ、民主主義に対する不満の源だ。
資本主義についていえば、過去数十年間にわたるグローバリゼーションと技術革新の結果、生み出されたものは格差だけだったという点があげられる。この問題と向き合わなければならない。政治の世界において、我々はもっと普通の市民に意味ある発言をしてもらう方法を見つけなければならない。経済の世界では、グローバリゼーションと技術革新がもたらす利益を広く共有できる術を見いだす必要がある・・・

「そういう観点で見れば、トランプ政権の誕生はある種の社会革命ともいえますね」という問に。
・・・その通りだ。ブレグジット(英国による欧州連合離脱)も全く同じ構造だ。部分的には経済上の問題だが、実は社会的、そして文化的な反発が背景にはある。その反発とはつまり、エリート階層が普通の人たちを見下している、ということだ・・
・・・格差の問題は昨年、突然、表面化したわけではない。過去20年以上、我々はその問題を提起してきたが、本来、労働者に寄り添うはずの民主党がプロフェッショナルな階層や、ウォール街に近づいてしまった。この結果、民主党は普通の労働者から遠ざかってしまった。
米国ではこれまで、格差について人々はあまり心配していなかった。我々はいずれ上向くという信念があったからだ。貧しい出であっても、のし上がることはできる。それこそ、アメリカンドリームなのだ。
しかし、今、そうしたケースが急速に減っている。今は米国において、貧しい生まれなら、その7割は中間層にすら上がることができない。上位20%の層に入る率はわずかに4%だ。上位の層に上がる率は今や、米国よりも欧州の方が上だ。これはアメリカンドリームの危機といえる。もし、子供たちに「格差のことは心配しなくても、君たちはのし上がることができる」と言えなくなれば、もっと平等や団結といったことに注意を払わなければならなくなる・・・

原文をお読みください。

トランプ大統領とポピュリズム

2017年1月24日   岡本全勝

1月21日の朝日新聞オピニオン欄「分断の行方」、水島治郎・千葉大学教授の発言から。
・・・トランプ氏の政治手法はポピュリズム的です。欧州のポピュリログイン前の続きズムとも共通点が多いのですが、違いもある。
ポピュリズムにも「右」と「左」があります。左派ポピュリズムは、貧富の差が激しい中南米などに多く、分配を求める。右派ポピュリズムは、欧州のように福祉国家化が進み、格差が比較的小さい社会で、移民を排除する。
米国は、欧州と中南米の中間の社会です。先進国ですが福祉国家化が遅れ、西欧より格差が大きい。だからトランプ氏の右派ポピュリズムと、民主党のサンダース氏の左派ポピュリズムの両方が支持を得る。ハイブリッド型です。
既成政治かポピュリズムか、右か左かという2本の軸で分けると、「既成で左」がクリントン氏、「既成で右」がジェブ・ブッシュ氏ら共和党主流派、「ポピュリズムで左」がサンダース氏、「ポピュリズムで右」がトランプ氏を支持したといえます。中南米は「ポピュリズムで右」が弱く、欧州では「ポピュリズムで左」が弱いが、米国は四つがそろっている・・

水島先生は、昨年12月に、『ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か』(2016年、中公新書)を出しておられます。これを読むと、各国の社会・政治的背景によって、一概にポピュリズムが悪だとは言い切れないようです。その点については、別途書きましょう。

砂原庸介准教授、内閣のあり方

2017年1月22日   岡本全勝

先日、砂原庸介先生の日経新聞経済教室「個別政策、パッケージで議論」(1月10日)を紹介しました。その補遺を、ブログで書いておられます。「日本経済新聞「経済教室」への補遺」。
本文を読んでもらうとして、ここでは、次のような部分、内閣のあり方についての指摘を紹介します。
・・・もともと論じたいなあと思ったのは大きく二つあって,ひとつは複数の省庁にまたがる複合的な政策を決定するときにどういう問題があるか,どのように決定するか,ということ。もうひとつはそういった問題への対応という意味もあって実現した(と考えられる)2015年の内閣府改革の成果を紹介したいことでした。
後者については,しばしば「内閣府のスリム化」として議論されてきた話ですが,それは単に業務量を減らすというだけの話じゃなくて,背景には各省にわたる調整を首相のもとで実施しようとしていたことがあります。調整案件が増えると首相と官房長官の時間資源がどんどん侵食されていくわけですが,この改革では各省大臣に総合調整の権限を与えることで首相を相対的に身軽にして,代わりに相対的に「重い」大臣を設置する可能性が開かれることになりました。まあまだ明示的に使われているとはいえませんけど,非常に意義の大きい改革だと考えられるわけです。
なお,実質的にすでにそのような大臣が出現している可能性を指摘しているのは御厨貴先生だと思います。『政治の眼力』で菅官房長官や麻生大臣,甘利大臣(当時)をシニアミニスターと呼んでいるのがそれにあたります。TPPを担当していた甘利大臣はまさに拙稿で指摘したようなそういう性格を持っていたように思いますが,その辺もう少し分析できるかもしれません・・

日本独自のもの、多い首相の議会解散

2017年1月21日   岡本全勝

先日、日経新聞連載「日本の政治ここがフシギ」、第3回「議論深めぬ廃案戦術 「日程闘争」が常態化」を紹介しました(1月17日「日本独自の慣習、国会の会期」)。20日は、第5回「強すぎる?議会解散権  熟慮遮る選挙の影」でした。
・・・「解散風」。日本の政治ニュースではよくこんな言葉を目にする。最近では2009、12、14年と2~3年ごとに衆院解散があった。主要先進国をみると、ここまで頻繁に解散をする国は珍しい。世界では解散は時代遅れになりつつある・・・
・・・主要7カ国(G7)のうち、解散の制度があるのは米国を除く6カ国。過去60~70年でドイツは3回、フランスは5回しか解散していない。英国は11年、解散を任期満了か下院の可決時に限る法整備をした。安定政権で財政再建に取り組む目的だが、連立与党が「抜き打ち解散」封じを求めた面もある
・・・日本は47年の憲法施行後、解散は23回に上る。首相の主体的な判断で憲法7条に基づいて天皇の国事行為として解散する「7条解散」が定着し、回数は多い。解散権は首相の「伝家の宝刀」「専権事項」といわれ、いわゆる「大義」がなくてもいつでも国民に信を問える政治的な武器・・・
・・・「選挙が遠いなら、もっと政策に力を入れられるのに」。昨年暮れ。ある野党議員は地元で支援者との忘年会をハシゴして嘆いた。昨年は7月の衆参同日選、17年初めの解散が噂され、文字通り「常在戦場」だった・・・

政権の安定のためや、重要政策について民意を問うために、首相の議会解散を柔軟に認めるのか。議員が腰をすえて政策議論できるように、首相の解散権を制約するのか。
安定して政治を行う観点から、かつては首相がしばしば交代した日本の特性とともに、安定した国会議論や「政治における期間」というものをどう考えるかです。