カテゴリーアーカイブ:行政

引きこもりの長期化、高齢化

2017年6月10日   岡本全勝

6月3日の朝日新聞オピニオン欄「長引く引きこもり」、山本耕平・立命館大学教授の発言から。
・・・山梨県では、民生委員や児童委員に聞き取りしたところ、ひきこもりの人の6割が40代以上でした。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の調査では、平均年齢は2004年の27・6歳から、今年は33・5歳に上がりました。ひきこもっている期間は平均で7・5年から10・8年に延び、いずれも過去最高、最長になっています。
現在40歳前後の人は、およそ20年前に就職するときが就職氷河期と重なりました。非正規雇用を続け、キャリアを積めないことでひきこもる人もいます。
不登校が長引き、自室に閉じこもってゲームばかりする若者のイメージが強いかもしれませんが、こうした調査からは、長期化、高齢化の実態が見えてきます・・・

・・・一度社会に出て働いてからひきこもる中高年齢層への支援は、若年層に比べて手薄です。長期化、高齢化を招いている大きな要因の一つだと考えています。
要因は実に様々で、ひきこもるのを防ぐ、あるいは抜け出す単一の妙手はありません。発達障害や精神障害、中年以降に多いとされる内臓疾患など、直接的な原因が明らかな人は、医療面から解決につながる可能性が高まります。一方、自己責任論が蔓延(まんえん)する世の中で、自身の存在感を否定され、生きる価値を見失ってひきこもる人がはるかに多い。解決に時間がかかりますが、居場所づくり、一般企業とは違う代替的な働く場の提供など、いろいろな対策を総合的に組み合わせる必要があります。
行政はおしなべて「窓口に相談してくれたら、支援します」という姿勢です。外出できずひきこもらざるを得ないのに、ハードルが高くないですか。支援策が「現実社会への適応」に偏っているのも問題です。例えば相手の目を見て話す訓練があります。「同僚と会話が続かない人」向けの就労支援の一つですが、「自分には生きる価値がない」と感じている人に、根本原因を取り除かずに技能訓練だけを行っても、効果は薄い・・・
原文をお読みください。

行政の裁量と行政への監視

2017年6月10日   岡本全勝

日経新聞6月9日の夕刊「森友・加計 裁量の霧の中 行政監視や記録保存あいまい」から。
・・・2つの問題でまず指摘されるのは「日本の行政は裁量が大きい」という点だ。比較行政法が専門の南山大の榊原秀訓教授は「日本は英国に比べ、国会や司法のチェックが弱いので結果として行政裁量が広い」と話す。日本と同じ議院内閣制の英国と比べよう。
英国で行政の不祥事や疑惑が発生するとどうするか。通常はまず政府自身が第三者機関をつくって調査する。法律で調査委員会の組織、手続きや報告書提出などが定められている。退職した裁判官や弁護士らを委員長に据え、数カ月かけて調査する慣例だ・・・

・・・議会の行政監視も力の入れ方が違う。英国では法案審議を主に手掛ける「一般委員会」と別に「省別特別委員会」がある。こちらは各省の特定の問題で関係者を招致して聞き取り調査し、報告書も刊行する。予算や法案の審議をする委員会の中で並行して行政の疑惑も追及する日本より、集中的に取り組める。
司法も行政チェックを後押しする。日本では国を相手取って提訴するのはほぼ利害関係者だ。原告は、許認可を取り消された業者や、行政の過失で健康被害を受けた住民ら。ところが英国では直接利害関係になくても、公益性が高い案件は国民が提訴できる。
英最高裁は1月に「欧州連合(EU)への離脱通知には議会承認が必要」と判決を出した。この時の原告の提訴理由は不利益の被害を受けたからではなく、あくまでも「公益性」だった・・・

小西砂千夫著『日本地方財政史』

2017年5月27日   岡本全勝

小西砂千夫先生が、『日本地方財政史』(2017年、有斐閣)を出版されました。副題に「制度の背景と文脈をとらえる」とあります。
目次を見ていただくと、財政調整制度、国庫支出金、地方債などの主要項目の他、災害財政、財務会計なども含まれています。
そして、それらの各論をはさんで、「序章 統治の論理として」「第1章 制度の歴史的展開」「第12章 内務省解体」「終章 制度運営のパワー・ゲーム」という興味深い章があります。

「あとがき」p407に、次のような記述があります。
・・・編集者のお勧めに従って、書名を『日本地方財政史』としたが、本書は、いわゆる歴史の研究書ではない。歴史研究のアプローチならば、多面的にその時々の出来事を捉え、事実を再構成しなければならない。本書の内容は、そういった歴史的検証を加えたものではなく、「自治官僚による地方財政制度における内在的論理」、言い換えれば、地方財政における統治の論理を書き起こしたものである・・・

これは、なかなか書けるものではありません。これまで深く地方財政制度を研究してこられた先生でなければ、書けない本です。
各論の変遷をおさえつつ、なぜその時期にそのような制度ができたか。そして、先生も述べておられるように、理想だけでは実現せず、現実(実務、政治的力関係など)との妥協によってできたことなどを、考察する必要があります。その大きな流れを、「統治の理論」という言葉で象徴しておられます。
各論だけでなく、それらを通した視点・総論が重要なのです。今後、地方財政制度を議論する際には、必須の文献でしょう。

本来なら、地方財政制度を設計してきた関係者(自治官僚)が、書くべき本かもしれません。私も『地方交付税―仕組みと機能』や『地方財政改革論議』「近年の地方交付税の変化」(月刊『地方財政』2004年1月号)を書いていた頃は、それを意識していたのですが。小西先生と対談もしていました。その後、地方財政を離れ、官房や内閣の仕事に移ったので、できなくなりました。
小西先生、ありがとうございます。

フランス流バカンスの取り方

2017年5月25日   岡本全勝

5月21日の日経新聞、フロランス・ゴドフェルノーさん(フランスの出版社広報部長で駐日大使夫人)の発言から。
・・・もう5月下旬。私が広報部長を務める出版社では、みんな夏休みの取得予定を申告済みです。5月に入るとすぐにオフィスの壁に夏休みの日程表を貼りだし、希望日を全員が記入します。子どもがいる社員は学校の夏休みに合わせて7月や8月に3週間ほど休暇を取ることが多く、独身の人はその間を避け、6月に休む人もいます。早めに調整すれば、各自が長期間、休みを取っても夏の間オフィスが無人になることはありません・・・
・・・こうやってなんとか確保する8月の3週間の長期休み、私はひたすら「何もしない」ことに徹します・・・

原文をお読みください。

社会的孤立状態にある世帯

2017年5月20日   岡本全勝

全国民生委員児童委員連合会が、「社会的孤立状態にある世帯への支援」を調査し、その結果を公表しています。「朝日新聞の記事」。
今日の大きな社会問題の一つが、社会的孤立です。近年顕著になった問題であり、明確な所管がなく、対処方法も確立していません。問題を抱えた家族が、どこに相談してよいかわからない。あなたがそのような状況になったら、そうでしょう。行政としては、それが一番の問題なのです。

今回の調査は、福祉の第一線で苦労しておられる民生委員さん、23万人に対する調査結果です。詳しくは、調査結果をお読みください。
民生委員の4人に1人が、社会的孤立の人に対応した経験があります。年齢は高齢者が多く、40歳台、50歳台も多いです。
認知症、近隣住民とのトラブル、外出が困難、うつ病、知的障害、引きこもり、ゴミ屋敷などのほかに、親の年金頼みで子が無職、働く意思や教育を受けようとする意思がない、アルコール依存症、不登校、家庭内暴力、高齢者虐待、児童虐待などもあります。
民生委員は、このようなケースを見つけたときは、しかるべき所につなぐのですが、これが難しいのです。対象者は様々な事情を抱え、かつ複数の原因があります。

かつての福祉は、生活保護が中心でした。経済的貧困などです。しかし、人とのつながりがうまくできないという、新しい型の困難が見えてきました。
経済的支援は手法としては比較的に簡単です。しかし、社会的孤立は他者との関係がうまくできないことで、支援者・支援組織との関係も難しいのです。「放っておいてくれ」と言われたらどうするか。「公権力は家庭に踏み込まない」という制約もあります。かつては、個人や家庭の問題だったのが、社会の問題になったのです。

私は、市町村役場に「包括的窓口」をつくる、国にも窓口になる専門部署をつくるべきだと考えています。まずは、そこがすべてを受け付けるのです。そこから、それぞれの専門部署につなぎます。
現状では、民生委員さんに、過重な負担をかけているように思えます。

私は今、大学の授業「公共政策論」で、これら「新しく生まれた社会の問題」を取り上げるところです。かつて、それを含め「社会のリスクの変化と行政の役割」として、連載をしました。一冊の本にまとめておけば良かったのですが、途中で東日本大震災対応に駆りだされ、連載も中断しました。今回は、再度考え方を整理する良い機会です。
このテーマは、私の行政論の柱の一つです。このホームページに「再チャレンジ」という分類があります。第一次安倍政権で、再チャレンジが主要政策になり、私が担当になりました。そこで、この新しい社会の問題、それに行政がどのように対応するかを考えることになりました。その際は、「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』2007年8月号に、まとめておきました(もう10年も経つのですね)。