カテゴリーアーカイブ:行政

日本の公務員の質は

2017年4月16日   岡本全勝

4月8日の日経新聞読書欄に、真渕勝・立命館大学教授(京都大学名誉教授)が「日本の官僚、公務員の質は。行政サービスは効率的か」を書いておられます。
・・・キャリア官僚は近年、何かにつけて批判の的になっている。
筆者が大学生であった40年ほど前、キャリア官僚がやり玉にあげられることはまずなかった。多くが東京大学を優秀な成績で卒業していることを知ってか、国民は畏怖の目で見ていた。この傾向は「官尊民卑」という「前近代性」の現れとして指弾されたこともある。官僚バッシングが「国民情緒」に指示される現在、悪しき伝統は完全に打破されたかに見える。
それにしても評価の振れ幅が大きい。もっと距離をとって眺めることはできないものか・・・

・・・日本の公務員は数が多く、能率が悪いと指摘されることがある。まず、前段は「都市伝説」である・・・政府が毎年度発表する「公務員の数と種類」における公務員数は約338万人(2016年度)、人口千人あたり36.2人である。この数字には、独立行政法人や特殊法人の職員、国立大学法人の教職員も含まれている。他の先進国の人口千人あたりの公務員数はフランス89.1人、英国69.3人、米国64.1人、ドイツ60.4人であるから、日本は5か国のなかで、最も「小さな政府」に当たる・・・

(反対の主張を紹介した後で)・・・ここでの論点は、公務員数が相対的に少ないとしても、それはただちに行政の効率性の高さを意味するわけではないという厄介な現実があることである・・・
ごく一部を紹介したので、原文をお読みください。

先生がご指摘の通り、高い評価から批判の的へと、日本の官僚は尊敬を失いました。それだけの理由はあります。求められている機能を果たしているか、日本社会の問題を適確に解決しているかという機能論とともに、官官接待や権限を利用した天下りという倫理面からの問題によってです。
としても、官僚も公務員もなくすことができない職業です。では、どのように改革したら、国民の期待に応えることができるか。私の職業生活と研究テーマは、これを追求してきました。かつて連載していた「行政構造改革ー日本の行政と官僚の未来ー」もこれを考えていたのですが、総理秘書官になって中断しました。慶應大学での講義では、このテーマに再度取り組みます。

政党が政治を制御できなくなった

2017年4月12日   岡本全勝

4月11日の朝日新聞オピニオン欄は、パリ政治学院教授パスカル・ペリノーさんの「前例なき仏大統領選」でした。
・・・今年の仏大統領選は、1958年からの仏第5共和制で前例のない選挙です。一つは、大規模テロの影響を受けて非常事態宣言下で実施されること。従来の関心事だった「失業」に代わって「テロ」が最重要テーマに浮上しました。もう一つは、有権者の投票で候補者を事前に決める「予備選」を右派も左派も導入したことです。政治家の意識や大統領候補のあり方が根本的に変わりました。
これまでの政治では、候補者は政党の中から生まれてきました。閣僚や首相を務め、経験を重ねたうえで、大統領を目指していたのです。そのような構造に対する革命を、予備選は起こしました。政党を破壊し、古い形の政治を葬り去りました・・・
・・・これは、政党が政治をコントロールできなくなっていることを意味しています。予備選は政党をむしばむのです。
同様の現象は、フランス以外にも見られます。イタリアでも、首相候補の予備選を導入したことが、政党の弱体化につながりました。米大統領選では、民主党と共和党で候補者争いが激化しましたが、政党自体が制御する力を失っているからです・・・

・・・今は、戦後に定着した政治的世界が解体され、新しい世界が生まれようとしている時期だと考えられます。ポピュリズムは、その新しい世界の一つの要素です。
フランスの社会学者ギ・エルメ氏は、民主主義に代わる新たな政治制度の中心として、ポピュリズムとガバナンス(統治)を挙げました。ポピュリズムが人々の声を吸い上げる一方で、実際の政治はエリート官僚中心のガバナンスが担う。そこにかかわるのは一部の意識の高い人だけで、一般市民は無縁です。民衆の代表が政府をつくる時代は終わるのです・・・

長い歴史や、大きな視野から見ると、このような見方もできます。立憲民主主義、代議制は、絶対的なものではなく、歴史の中で経験を経てつくられたものです。代議制は、直接民主主義が実務的に困難である代用であるとともに、熟議の機能を期待されています。また、政党も、利害や思想を同じくする国民を代表する機能とともに、熟議の機能も期待されています。もっとも、日本国憲法には、「政党」は出てきません。
現実社会が、この教授の指摘する方向に進むのかどうか。その方向に進めるのも、回避するのも、国民です。
原文をお読みください。

家庭内事件

2017年4月10日   岡本全勝

読売新聞が、4月2日から「孤絶 家庭内事件」を連載しています。初日の記事には、子供の障害や病気に悩んだ親が、子供を手にかけてしまう殺人・心中事件が相次いでいることを紹介しています。
2010年からこれまでに起きた50件を分析したところ、加害者の7割が65歳以上です。子供(といっても成人、かなりの年齢です)の引きこもりや暴力に悩み、しかし周囲の支援を受けられず、介護疲れや将来を悲観して、親が子供を殺すのです。読んでいて、悲しくなります。そして、もし自分もそのような状況になったら、どうするか。
相談するところがない、どこに相談したらよいかわからないのです。
これまでは、各人の各家庭の問題だと片付けられていました。しかし、社会が考えなければならない新しいリスクです。行政による相談窓口をつくる必要があります。

日本政治の運用の特殊性

2017年4月10日   岡本全勝

日経新聞の連載「日本の政治 ここがフシギ」を紹介しました(4月6日)。第3回(4月7日)は「議員縛る党議拘束 審議空洞化のリスク」、第4回(4月8日)は「「劇的」遠い党首討論 国民巻き込む力なく」でした。
それぞれ原文を読んでいただくとして。明治以来、西欧先進諸国をお手本に、立憲政治、内閣制度、代議制などを導入しました。それは成功したのですが、その後の運用は、いくつかの部分で独自の発展を遂げたようです。制度の輸入で満足したようです。
そして、研究者も「制度の輸入と解説」には熱心でしたが、運用までは研究の視野に入っていなかったようです。それは、研究対象が「書かれたもの」だったことにもよると思います。
すべてを西欧のまねをするべきとは思いませんが、運用のどこが異なり、それはどのような意図で、そしてどのような長所と欠点を持っているのかを、検証すべきだと思います。

官僚が支える国会審議

2017年4月6日   岡本全勝

日経新聞が、4月5日から「日本の政治 ここがフシギ」を連載しています。5日は、「見えぬ議員の懐事情 遅い収支報告公開」、6日は「国会質問、前日までに通告 官僚頼みの閣僚答弁」でした。

・・・学校法人「森友学園」(大阪市)の問題を国会で追及された稲田朋美防衛相。時折、手元の書類に目を落とし、言葉を選ぶように答弁した。この書類が通常「答弁書」と言われる、官僚が作成したペーパーだ。日本では閣僚答弁のほとんどを省庁が作る。
政府方針を踏み外さず、問題発言を避けるためだ。
それを支えるのが質問通告だ。本会議や委員会で質問する議員は前日までに省庁に質問を紙で連絡する慣例だ。官僚が出向いて聞く例も多い。
通告後、役所の担当部署が中心に答弁を作り、当日朝に閣僚へ説明する。曖昧な通告は想定問答は複数必要。作業が明け方になることもある・・・

・・・財務省職員の高田英樹氏は10年ほど前まで英国財務省に出向していた。「投資市場改革の進捗を聞きたい」。審議3日前に国会から議員の質問が送られてきた。簡潔な答弁を作成し、メールで送り返して作業は終わり。
「日本で丸1日の仕事が実質3時間で終わった」。高田氏は振り返る。英国では質問は3営業日前までに書面で通告する。閣僚は冒頭の簡潔な受け答え以外は答弁書に頼らず、自分で答える。
ドイツでは質問形式で期限が決まる。答弁に最も近い締め切りでも、週末を挟んで5日前までに通告する決まりだ・・・

これは、以前から指摘されている、日本独自の慣習です。霞が関官僚の時間外勤務のかなりを、この仕事が占めています。質問がもう少し早く通告されると、効率的になるのですが。原文をお読みください。