カテゴリーアーカイブ:行政

犬丸淳著『自治体破綻の財政学』

2017年11月18日   岡本全勝

犬丸淳・島根県環境生活部長が、『自治体破綻の財政学 米国デトロイトの経験と日本への教訓』(2017年、日本経済評論社)を出版されました。
犬丸君は、1997年採用の自治省(総務省)官僚です。ニューヨーク勤務の際に、デトロイト市の財政破綻を研究し、論文を発表してきました。本書は、その成果をまとめたものです。450ページに上る大部な本です。

人口70万人、かつては自動車産業で栄えた大都市が、2013年に180億ドル、約2兆円の負債を抱え財政破綻しました。市はその後、連邦破産法の適用を受け、財政再建の道を進んでいます。
企業ならば、清算して会社を解散することができますが、自治体はそうはいきません。住民を抱え行政サービスを提供しなければならない自治体が財政破綻した場合に、どのようにするか。アメリカでは、その後も自治体の財政破綻が起きています。
日本でも、夕張市が同様な状態に陥り、再建が進められています。
本書では、夕張市との比較もされています。ご関心ある方は、一読ください。

日本政治、改革の時代の終わり?

2017年11月5日   岡本全勝

11月1日の朝日新聞オピニオン欄「平成の政治とは」、佐藤俊樹先生の発言から。

・・・平成は、グローバル化という潮流のなかで日本の「総中流社会」が崩壊し、格差が広がっていった時代です。その変化に対応しながら、より公平な社会をつくっていく。それがつねに政治の焦点になってきました。
小泉政権の郵政改革、マニフェスト選挙で政権交代を実現した民主党……。平成の政治の基本潮流は「改革路線」でした。保守・革新の枠を超えて、政党の崩壊や分裂を繰り返しながら、改革の旗印が消えることはありませんでした。ところが、今回の衆院選ではその旗手に名乗りをあげた希望と維新が票を伸ばせなかった。「改革の時代」の終わりではないでしょうか・・・

・・・背景にあるのは有権者の改革疲れだと思います。平成の初頭、日本は米国を脅かす経済大国でしたが、GDPは伸び悩み、今では中国に抜かれました。苦しい改革を重ねてきたのに、人々の暮らし向きはさほど変わっていません。
現在の日本経済は世界経済の動向に大きく左右されます。政府が打ち出す政策の効果はもともと限られている。さらに、以前は低成長や少子高齢化は日本特有の課題だとされていましたが、最近は多くの国で同じ状態になりつつある。横並び意識が強い日本人には危機感を感じにくい状況です。
安倍政権の安定ぶりにはそんな巡り合わせもあったように思います。「改革」の旗印がまだ説得力を持ちつつも、次第に政治への期待が低下していった・・・

いつもながら、鋭い指摘です。毎日の出来事を追いかけているだけでは、見えてこない視点です。
私もこの説には同意しますが、少し違う見方もしています。
一つには、改革という言葉がインフレ状態になり、あまりにも安易に=中身を伴わずに使われています。それに、国民が気がついているのです。××革命という言葉も、同様です。
二つ目には、改革によってどのような成果が出ているかを、政府も識者も十分に説明していないことです。国民には、改革でどのようなよいことが実現したかが、いまいち分かりません。改革は常に未来形であって、過去形では認識されていないのです。これも、政治家に幾分かの責任があります。未来に向かって「改革」を訴えますが、その結果について語りません。
三つ目に、このことにも関連しますが、改革さらに革命には痛みを伴います。既得権益、既存勢力を削減するのですから。しかし、痛みについては、多くが語られません。「敵」を明確にしてそれと闘うなら、それだけの覚悟が必要であり、「血」も流れます。かつては、国鉄と労働組合、郵政と郵政族、官僚などが「敵」とされました。

2017衆院選、問われたもの

2017年10月31日   岡本全勝

10月25日の朝日新聞オピニオン欄「2017衆院選 勝ったのは何か」、濱野智史さんの発言「昭和の利益誘導 なお強固」から。
・・・日本はもともと、外圧でもないと変化の起きにくい島でした。黒船が来たから仕方なく近代化し、形だけ民主主義をやり始めたけれど、革命のあったフランスや南北戦争のあった米国のように、過酷な歴史を経て有権者に根づいた意識もない。だから日本の政治は、「民主主義ごっこ」のような一種の借り物でした。
戦後、その「民主主義ごっこ」を日本流の利益分配システムに仕立て上げたのが、自民党であり角栄でした。その結果、組織票か、地元でずっと応援しているから、という利害と惰性中心で、政策は二の次という支持基盤が強固になりました。都市型無党派層の私から見ると、今回の結果は既得権益に頼る地方の人々が作り上げた分配システムの勝利にしか見えないのです・・・

砂原教授、選挙制度改革論

2017年10月29日   岡本全勝

砂原庸介・神戸大学教授が、今回の衆議院選挙を振り返って、選挙制度改革の論点を整理しておられます。「「フェアなゲーム」を作るための選挙制度改革」(2017年10月23日)。
・・・折しも,前回の選挙制度改革から20年が経過し,そろそろその総括をすべき時期になっているのではないだろうか。1994年当時といえば,まだShugart and Careyの極めて影響力の強い本が出た直後くらいであって,「小選挙区制が二大政党化を促す」と言ったような非常に単純化された言説は受け入れやすかったように思う。また,1990年代に入るころまでは福祉国家もそれなりに持続的で,ということは中央政府への集権の度合いも高くなっていっており,国政の主要な選挙での小選挙区制(のみ)が他の選挙にも影響を与えることで二党制の形成を促すといったところもなかったわけではないだろう。しかしその後各国で制度の多様化が進んだことを受けて行われた選挙制度研究の発展を考えれば,衆議院総選挙だけを小選挙区制にしたことで二党制が生まれるというのは相当に無理がある議論だということはわかるし,20年してその反省を踏まえて「フェアなゲーム」のルールを考え直すべきじゃないか。
制度を見直すといっても,元の中選挙区制に戻すべきではない。前回選挙制度改革での中選挙区制に対する問題意識自体は正しかったと思う・・・
と述べたあと、論点として、(1)安易な混合制を避ける、(2)参議院の選挙制度を変える、(3)地方の選挙制度を変えることを挙げています。

また、「投票方式よりも些細なことに見える制度群の扱いも重要である」とも指摘しています。その要素として、首相の解散権、任期や選挙サイクル、選挙運動期間などを挙げています。
原文をお読みください。

法律を作るか解釈で切り抜けるか

2017年10月19日   岡本全勝

先日、霞が関で、現役の後輩と出会いました。「今、何しているの?」と聞くと、「○○の件で、法律を作ろうとしているんです」とのこと。内容は、私も関与したことがあるものです。既に実施されているのですが、今後に備えて、法律で枠組みをきちんとしておこうとのことです。
「良い話じゃない。ぜひやってよ。誰も反対しないから、難しくないだろう」と励ますと、「いえいえ、関係省で反対するところがあるんです。『運用でできているんだから、法律を作らなくても良いだろう』と言うんです」。????

「官僚とは、できないという理屈を考える優秀な人間である」という批判があります。その手で言うと、「官僚とは、しなくてもよいという理屈を考える優秀な人間である」と言いたいですね。一部ですが、このような官僚がいることは、困ったものです。
国民のために政策を作る。それが、官僚の任務のはずです。仕事に取り組む職員と、逃げる職員。きちんと職員の評価をしなければなりません。売り上げという評価基準がないので、事務の職場は、それが難しいのですが。