カテゴリーアーカイブ:行政

平成時代、先送りされた増税

2018年6月19日   岡本全勝

6月17日の朝日新聞連載「平成経済」は、「目を背けた不都合な真実。消費増税、官僚が語った舞台裏」でした。

・・・国家財政の面からみると、平成はその収支バランスが崩れ続けた時代だった。なぜ財政再建はできなかったのか。朝日新聞は今回、財務省(旧大蔵省)の歴代幹部が在任中の政策を振り返った「口述記録」を情報公開請求で入手した。開示された1982~2001年の25人分、1千ページ超にわたる官僚たちの証言をひもとくと少子高齢化による低成長時代に突入したという「不都合な真実」に向き合わず、消費増税が実現してもその成果を「浪費」し続けてきた政官の姿が浮かび上がってくる・・・

・・・野田政権時代、財務省官房長として消費増税案を推進した香川俊介氏。10%増税が延期された後の15年7月、失意の中で次官を退官し、わずか1カ月後に58歳の若さで急逝した。
彼の言葉は、今回公開された口述記録には出てこない。しかし記者は、香川氏が中堅時代に書いた論文を見つけた。97年、出向先の英王立国際問題研究所でまとめた、手書きの文章だ。
「『政治家は利益誘導的な判断しかできないから、官僚が政策決定しなければならない』という考え方があるが、誤りだ。政治家が将来まで考えた決定をし、なお選挙に勝てる仕組みにしなければならない」
その仕組みはどうすればできるのか――。未来に広がる黒い陰を取り除くために、私たちが答えを見いださなければならない・・・

各紙が様々な切り口で、平成時代の30年を検証しています。近過去のことは、教科書に載っていないので、このような企画は有用です。

官僚機構改善論3―人事政策が必要

2018年6月17日   岡本全勝

官僚機構改善論2―バックオフィスの管理の続きです。
さらに話を広げれば、これからの国家公務員をどのように育成するか、「人事政策」を明らかにする必要があると思います。

これまでは、各省単位で国家公務員を管理していました。その中で、上級職・中級職・初級職の区別、事務職・各種の技術職の区別で、管理していました。ところが、そこに「明示的な」人事方針はないようです。公表されていて、公務員たちが知っておくような文書・指針は、寡聞にして知りません。評価や面談については、この10年ほどの間に、整えられました。
人事課の仕事には、人事異動のほか、定数管理、採用、評価、給与、福利厚生、組合対応などがあります。そして、それらを統合して、どのような公務員を育てるか、目標と方法が必要です。ここでいう人事政策は、これを指しています。
制度に対する運用、さらには運用の方針と言ってもよいでしょう。国家公務員法があっても、それは制度であって、実際の運用と運用の方針は明示されていないのです。

これまでは、あまり問題にならなかったのです。国家のために働く、それが官僚の目標であり、生きがいでした。給与といった見返り以上に、このやりがい(と出世)が官僚たちに、私生活を犠牲にした働きに駆り立てたのです。
その際の目標と手法が、明白でした。欧米に学ぶという、わかりやすい目標と手法がありました。しかし、もうこれは終わりました。また右肩上がりの時代は、予算や人員を増やすことが善でした。これも、終わりました。新しい法律や制度も、増やせば良いという時代ではありません。すると、公務員特に官僚たち(幹部公務員)に、何を目標とさせるのかが、問われます。
他方で、国家のためなら滅私奉公、無限定な残業をする時代も、終わりました。部下に、ワークライフバランスを勧めなければなりません。また、かつてに比べ、心の病を発病する職員が増えています。
これらにどのように対応するかを、公務員全体に示し、さらに人事課長たちにも教えなければなりません。「官僚機構改善論4」へ。

官僚機構改善論2―バックオフィスの管理

2018年6月14日   岡本全勝

官僚機構改善論1―バックオフィスの重要性の続きです。

これまでは、バックオフィス=事務・組織管理部門は、前線を支える後方部隊と考えられ、日が当たりませんでした。また、誰でもやれる、難しくない仕事と思われていました。
ところが、技術の進歩と社会の変化で、従来通りでは対応しきれなくなりました。

平成になってからでも、次のようなことが大きな課題になりました。
情報公開、個人情報保護、公文書管理、IT技術の発達とパソコンの配備、情報管理、サイバー攻撃対応、カウンターインテリジェンス、セクハラやパワハラ対応、倫理法、コンプライアンス、リスク管理、災害対応・・・。
私が公務員になった頃は、そんなに問題にならなかったことです。その後、これらの課題が次々に出て、また事件や事故が起きて、その都度個別に対応しました。研修なども増えました。

これらの問題を大きく2つに分けると、「情報の取り扱いの問題」と「職員管理の問題」です。

このうち、「情報の取り扱いの問題」は、IT技術の発達への対応と、情報の管理が重要になりました。パソコンやコンピュータが導入され、職員は試行錯誤しながら使っています。
まず、組織から見て、コンピュータ化は効率的に行われているか。どうもそうでないようです。旅費や給与計算、電子決済、電子申請など、必ずしも効率になっていないようです。
他方で、職員については、これらの「職員として知っておく常識」は、系統だった教育は行われているか。職員が読んでおくべき教科書は、ないようです。
これは、新規採用職員だけでなく、管理職も中堅職員も必要なのです。なぜなら、次々と新しい課題と仕組みが導入されて、年配者もその都度教えてもらって身につけています。若い人の方が詳しいことも多いのです。

もう一つは、「職員管理の問題」です。ここで言う職員管理とは、部下の教育と管理、心の病の職員への対応、セクハラやパワハラ対応、ワークライフバランス、コンプライアンスなどです。これらも、組織的・系統立てた教育は十分ではないと思います。
昔は、そんなに気にすることはなかったのですが。
これらについても、系統だった研修と、教科書が必要です。「官僚機構改善論3」へ。

官僚機構改善論1―バックオフィスの重要性

2018年6月13日   岡本全勝

先日、日経新聞夕刊コラムに「内閣官僚」を書きました。また、5月23日の毎日新聞にインタビュー「現場の声 政策に生かせ」が載りました。そのほか、官僚の問題について、いくつかの取材も受けました。
そこで考えたことを整理して、簡単に書いておきます。私の基本的考え方は、官僚の劣化と言われる事象の背景にあるもの、構造的な問題です。
端的に言えば、社会が変わったのに、官僚と官僚機構が変革に遅れているということです。「バックオフィスの管理」「人事政策」「官僚のあり方論」に分けて書きます。

まず、バックオフィスの管理についてです。
組織を管理する際に、2つの部分に分けて考えます。
会社では、営業系と総務系があります。前者は、製品やサービスを作り、売ることを任務とする人たちです。後者は、その人たちを支える、会計、人事、庶務の人たちです。フロントと、バックオフィスです。
役所も同じです。政策を考え、実行する原局と、人事や予算で支える官房です。
後者は、「事務・組織管理部門」といったら良いでしょうか。
霞が関の各省あるいは全府省を通して、おろそかになっていることがあります。この事務・組織管理部門=バックオフィスの管理です。
会社にしろ役所にしろ、製品を売ったり、政策を考える部局が「花形」で、バックオフィスはそれを支える「縁の下の力持ち」です。しかし、営業系が活躍するためには、縁の下系がしっかりと支えなければなりません。

これまでは、後者については、系統だった職員育成や組織運営を考えることは少なかったようです。前例に従って処理する。新しい機械がでたらそれを取り込む、新しい課題が出たらその都度対処する。職員も、先輩たちのやり方を見て学ぶ。という「古典的な職場作法」でやってきました。「官僚機構改善論2」へ。

予算偏重の時代錯誤

2018年6月5日   岡本全勝

日本社会が大きく変わったのに、行政や国民の意識が変化していないことの一つが、予算偏重です。
かつては、モノとサービスを増やすことが、社会でも行政でも大きな目標でした。豊かになる、便利になるという「国家目標」を達成するために、先輩たちはがんばりました。電化製品、自動車、そして道路や学校、病院。そのおかげで、世界でも最高水準の豊かさと便利さを手に入れました。

一通りのモノが行き渡り、サービスの仕組みもできました。すると、モノとサービスを増やすことは、行政の第一の目標ではなくなったのです。
予算があれば、モノとサービスを増やすことができました。よって、予算を増やすことが官僚の身近な目標でした。その要求を査定する、財務省や財政課が権限を持ちました(私も官僚人生の3分の1は、予算や地方交付税を査定し配分することをしていました)。
社会の問題は、お金では解決できないことが多くなりました。

いまだにマスコミが、財務省を「最強の官庁」と呼ぶのも、時代錯誤でしょう。マスコミが、意識改革に遅れているように思えます。
国会でも、予算委員会が花形です。しかし、審議している国政の重要事項は、外交や安全保障、政治のあり方です。「予算委員会」という名称はそろそろやめてはどうでしょうか。いわゆる「党首討論」は、「国家基本政策委員会」という名称です。このような名前の方が、ふさわしいと思います。