カテゴリーアーカイブ:行政

企業の採用面接に見る「日本型雇用」

2019年7月17日   岡本全勝

7月15日の日経新聞教育欄、吉田文・早稲田大学教授の「日系企業の採用「空気読む人材」優先続く」が、興味深かったです。日本の企業(国内型)が、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待していることが分かります。

・・・近年の大学教育改革の喫緊の課題は「学修成果の可視化」、すなわち、学生がどのような能力を獲得したのかをエビデンスで示すことである。ここには、新たなタイプの人材を求める産業界からの要請があるという。確かに、グローバル人材、イノベーション人材という言葉はすっかり人口に膾炙した。
しかし、企業はそうした学生を求めているのか。新卒総合職の採用面接経験がある企業人を対象に行った調査(2014年10月実施、調査会社のモニターから過去5年間の経験者を抽出し、ウェブで調査。有効回答2470人)から検討する。
日本企業の特性を浮かび上がらせるため、回答者の勤務先を日本企業と外資系企業に分け、日本企業も事業をグローバル展開している企業と、そうでない企業に区分し、日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の3つのタイプ別に比較する・・・

・・・だが、それだけではない。そもそも企業が求める人材が異なっているとも考えられるからだ。その一例を表に示す。日本企業の採用担当者は事業のグローバル展開の有無にかかわらず、事務系総合職には「空気を読んで、円満な人間関係を築くことのできる人材」の方が、「論理的に相手を説得できる人材」よりも望ましいと考えている。
外資系は70%が「論理的に相手を説得できる人材」が望ましいとするのと対照的である。技術系も事務系ほどではないものの同様の傾向がある。面接で学習だけでなく、サークル、アルバイト、趣味などを聞くことで、空気を読める者を選ぼうとしているのだろう。
ところで、空気を読むという、暗黙裡に状況を推察しての行動が重要だとするのは、それを可能とする同質的な空間があるからではないだろうか。「男子、学部卒、日本人」から構成された環境である。
そこで、その対極にある「女子、大学院生、外国人留学生」に抱いているイメージを見よう。自社で「採用したい者が多くいると思う」か否かを聞くと、全カテゴリーにおいて、見事なほどに日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の順で「多くいる」比率が高くなる・・・
この項続く

日本型雇用の変化

2019年7月14日   岡本全勝

7月9日の読売新聞に「脱日本型雇用の波」が載っていました。

・・・大手企業の間で、若手社員の賃金水準を引き上げる一方、中高年社員には早期希望退職などを募って削減を進める動きが目立ち始めた。グローバル競争や産業構造の変化に対応するため、人員の構成を転換する狙いがある。だが、欧米に比べて非効率的とされる働き方の改革は道半ばだ・・・

その中に、電機や製薬業界での早期希望退職の動きが紹介されていました。
・・・人手不足にもかかわらず、企業が希望退職を実施するのは、事業や人員構成の構造転換を図るためだ。バブル崩壊後や2008年のリーマン・ショック後に目立った「リストラ型」とは様相が異なる側面がある。
中外製薬は、18年12月期の売上高が過去最高を記録したが、今年4月、172人の希望退職を発表した。「新薬開発にAI人材が必要」とされるなど、事業環境が大きく変わってきた」(広報)ことが理由という・・・

新卒一括採用、終身雇用を前提に、社員は社内で職場を移り、仕事の内容の変更も受け入れました。しかし、かつてのような組立型工場だった時代から、IT時代の職場になると、「企業内転職」では対応できなくなったようです。社員はどのような技能を身につけて、どの技能を売ることで生きていくか。難しい時代になりました。

就職氷河期世代の支援

2019年7月12日   岡本全勝

7月5日の読売新聞解説欄、山田昌弘・中央大学教授の「氷河期世代支援 30万人正社員化 間に合うか
・・・バブル崩壊後の景気低迷期に就職時期を迎えた「就職氷河期世代」に対し、政府が支援策を本格化させようとしている。何が課題になっているのか・・・
・・・政府は6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、就職氷河期世代を対象に職業訓練や採用企業への助成金拡充などを集中的に行い、正規雇用を30万人増やす目標を掲げた・・・

紙面には、「骨太の方針」のポイントが表になっています。その中に、地域若者サポートステーションや引きこもり支援NPOなどが載っています。第一次安倍内閣で、「再チャレンジ政策」が進められましたが、まさにそのときの問題意識は、就職氷河期世代、正規になれなかった人たちだったのです。私は、担当室長でした。
簡単な資料」「保存されている当時の官邸資料

「正規と非正規」「勝ち組と負け組」という言葉が、はやりました。そのような観点から見ると、日本社会は「標準的人生」からはずれた人、何らかの制約を持った人には冷たい社会でした。
アルバイト・パートタイマー・派遣社員は正職員と同じ仕事をしても待遇は悪く、技能を向上させる機会もありません。女性は、補助的業務しかさせてもらえせんでした。学校を中退した若者は、誰もかまってくれません。事業に一度失敗すると、再挑戦の機会は与えられませんでした。

これらの問題は、それぞれに対策が進められています。しかし、これら「標準的と言われる人生を歩めなかった人」という視点で、統一して考える必要があると思います。
その人たちに、どのような支援をするのか。子供たちに「正しい生き方」を教えるとともに、「失敗した際の対応策」をどのように教えるか。
これが、成熟社会日本の課題です。ちょうど、連載「公共を創る」で、そこを書いているところです。

質問主意書

2019年7月10日   岡本全勝

質問主意書」って、ご存じですか。国会議員の他は、霞が関の官僚しか知らないのではないでしょうか。NHKウエッブニュースが、取り上げていました。「霞が関の嫌われ者 “質問主意書”って何?

簡単に言うと、国会議員が、国会での質疑と同じことを、文書で行うことです。国会法に決められた、重要な仕組みです。しかし、ニュースで取り上げられることも少なく、政治学の本にも出てきません。ちなみに、「趣意書」でなく、「主意書」です。

その重要性を理解しつつ、多くの官僚にとっては、この記事が伝えているように、負担に感じることもあります。もちろん、仕事が増えることもあるのですが、時間の制約が大きいのです。
特定議員から大量の質問主意書が出され、「これ本当に、議員がすべて目を通しているのかな」と思うこともありました。

松井孝治教授、国会改革のあり方

2019年7月4日   岡本全勝

6月29日の毎日新聞オピニオン欄「国会改革のあり方」に、松井孝治・慶應大学教授(元民主党参議院議員、官房副長官)が「首相縛らぬ討論型に」を書いておられました。

・・・首相や閣僚が国会対応に多くの時間を取られ、外交交渉や政策面でのリーダーシップを発揮しづらいのが現状だ。首相や閣僚の国会での拘束時間は各国に比べて突出して長く、大きなハンディキャップを負う。首相や閣僚を時間的に拘束して追い詰めていく、昭和から続く「質疑型」の国会から、短い時間でより濃密な議論をする「討論型」に変えていくべきだ・・・

・・・各国首脳・閣僚は議会の拘束が少ない分、日々濃密な政策ブリーフを受け、海外を飛び回ってカウンターパートと日常的に交渉している。官僚時代の経験では、国会開会中は日程の合間を縫って閣僚らにいかに短い時間で政策を説明し、決裁を取るかに役所全体が追われる。省内で議論し、政策を研ぎ澄ますという他国では当たり前のことにかける時間は余りに短い。
国会で政策的な論争を交わしているならいいが、多くの場合、政府側は単に防戦に徹する。政府側の見解を述べ、問い返せば「そんなことは聞いていない。質問に答えろ」と言われる。重箱の隅をつつくような質問や揚げ足取りの質問も少なくない・・・

原文をお読みください。