カテゴリーアーカイブ:行政

高校教科書、足し算や九九を教える

2021年5月12日   岡本全勝

5月8日の日経新聞夕刊に「高校教科書 学び直し対応」という記事が載っていました。
・・・「3×8=」「36+42=」……。来春から主に高校1年生が使う「数学Ⅰ」のある教科書には、2桁同士の足し算や引き算、九九といった演習問題が並ぶ。さまざまな事情で基礎学力が身に付かないまま高校に進学した生徒のために編集され、文部科学省の検定に合格。学習指導要領にも記載された「学び直し」のニーズの高まりに応えたものだ。
作ったのは東京書籍。数学Ⅰは難易度が異なる4種類があり、その中で最も易しいものに盛り込んだ。数学編集部の提橋正一部長が高校を訪れた際、教員が小学2年生用の算数教科書を使って教えているのを見て、必要性を強く感じた。「これまでは大学入試の方ばかりを向いて作っていた」と振り返る。

約170ページのうち、冒頭の約30ページが主に小学校の復習だ。整数の足し算と引き算から始まり、「37+28=65」などを筆算で解く方法を示す。九九では「7×5」を「7+7+7+7+7」と、7を5つ足したものだと丁寧に解説している。
続けて割り算、小数、分数、速さの求め方などを説明し、最後に中学1年で習う負の数を紹介する。項目ごとに演習問題があり、教科書に直接書き込めるよう余白を確保した。
高校の学習範囲も基礎的なものに絞り、漢字には極力ルビを振った。提橋部長によると、小中学校を休みがちだった生徒も含め、多様な学力層が在籍する通信制高校などでの採用を見込む・・・

なるほどと思うとともに、そのような学力でも小学校や中学校を卒業させることがよいのか、高校には何を求めて進学しているのか、疑問になります。
なんのための義務教育であり、なんのための高校なのでしょうか。

制度を所管するのか、問題を所管するのか。1

2021年5月11日   岡本全勝

広い視野と行動力、岡本行夫さん」の続きにもなります。
公務員にとって、広い視野と狭い視野との違いは何か、どうして生まれるのでしょうか。その一つの答として、「制度を所管するのか、問題を所管するのか」の違いに、思い至りました。

広い視野の反対の一つが、「法令に書いてありません」「予算にありません」「それは私の所管ではありません」という公務員のセリフです。これはこれで、正しいのです。法律に基づいて仕事をする公務員としては。
しかし、困っている住民からすると、これでは答えになりません。社会の問題を取り上げ解決するのが公務員の役割なら、思考と視野を所管の範囲に狭めてはこまります。

その基にあるのが、制度を所管するのか、問題を所管するのかの、思考の違いです。
ある課題について、制度(法令、予算)を所管していると考えると、その制度の範囲内で処理しようと考えます。それに対して、問題の解決を所管していると考えると、今ある制度を超えて、どのようにしたらその問題を解決できるかを考えるでしょう。

東日本大震災からの復興で、被災者支援本部と復興庁が、これまでにないことに取り組んだのも、これで理解できます。これらの組織は、制度を所管しているのではなく、被災者支援と被災地の復興が任務だったからです。
この項続く

行政の評価、努力と結果

2021年5月9日   岡本全勝

東日本大震災から10年が過ぎ、たくさんの評価や検証がされました。私も出番があり、考えたことをこのホームページに書いておきました。「大震災10年目に考えた成果と課題、目次

全体を見るには、『総合検証 東日本大震災からの復興』が良くできています。そして、阪神・淡路大震災の検証と比較すると、東日本大震災復興政策の特徴がわかりやすいと考えました。
阪神・淡路大震災復興政策の検証としては、兵庫県が作成した「復興10年総括検証・提言事業」があります。学識者54名による検証報告を元にとりまとめた、全4千ページ以上の検証報告書です。目次を見ると、さまざまな分野で詳細な検証がされています。ただしあまりにも大部で、読み物としては不向きです。いわば「辞書」としての機能と言ってよいでしょう。

もう一つ残念ですが、私の関心とは少々ズレています。阪神・淡路大震災の検証報告書には、新たに取られた施策がたくさん列記されています。しかし、復興政策を検証するには、目的がどの程度達成されたのか、どこが足りなかったのかを、見てみたいのです。
東日本大震災復興政策での目的は、安全な町を復興することと、住民の暮らしと街のにぎわいを再建することだったと言えるでしょう。安全な町づくりは、高台移転と現地かさ上げで達成できたと考えます。住民の暮らしと街のにぎわい再建は、取り戻せたところとまだ不十分なところがあります。
その目的のために、行政は十分なことをしたかどうか。これについては、これまでにない政策をたくさん打ちました。これも高く評価されているのですが、これは目的達成の手段でしかありません。

すると、行政の評価としては、どれだけ達成したかという成果の評価と、そのためにどれだけ政策を実行したかの、二つの面があります。阪神・淡路大震災の検証報告書は、後者の面が強いのです。それに対し、『総合検証 東日本大震災からの復興』は目次を見ていただくとわかるように、研究者が6つの分野で23の項目に分けて、やったこととその評価を分析しています。

M・ウェーバーの責任倫理と心情倫理の対比を利用すると、結果評価と努力評価でしょう。学生の勉強の評価でも、どれだけの点数を取ったかと、どれだけ努力したかの2つがあります。
大震災復興政策検証に限らず、行政の評価の際に役所が行うと、しばしば「これだけのことをしました」という項目が並びます。それは、役人にとって「産出量・アウトプット」であっても、現場では「投入量・インプット」でしかありません。現場での評価は、どれだけできたかという「成果・アウトカム」で行うべきです。

技能実習生の実態

2021年5月8日   岡本全勝

商売と人権」の続きです。佐藤暁子さんの「人権とビジネス、企業のあり方は」には、次のような指摘もあります。

・・・人権侵害は日本にもある。弁護士として案件に向き合ううち、日本の貧困や格差にもより敏感になった。
「『技能実習生』として海外から受け入れ、日本で働く人々の人権に、どう対応しているでしょうか。自らの基本的な権利は、必死で守らなければ権力者から奪われかねないという緊張感はあるでしょうか」・・・

これについては、5月2日の朝日新聞が1面「失踪村 ベトナム人技能実習生」でも取り上げています。「失踪村、お金も仕事もない 元実習生たち 過酷な労働、夢砕かれて」
・・・途上国への技術移転の名目で、安い労働力として働かされていると指摘されてきた技能実習生。その半数以上を占めるのがベトナム人だ。劣悪な労働環境などから失踪する例が後を絶たない。「失踪村」にたどりついた元実習生たちから何が見えるのか・・・
詳しくは、原文をお読みください。

砂原庸介教授による政治研究新刊書紹介

2021年5月7日   岡本全勝

最近載せていなかった、砂原庸介・神戸大学教授による、政治研究新刊書紹介を取り上げます。しばらく取り上げていなかったので、たまっています。

5月3日 政治参加
4月3日 地方自治・日本政治
3月15日 民主主義/権威主義
2月11日 日本の行政学/地域衰退

たくさんの新刊書が出ているのですね。政治・行政研究の最先端を、このように説明してもらえるのは、ありがたいです。
参考「現代日本政治、新しい研究成果