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行政-行政機構

食料自給率の低下

4月24日の日経新聞夕刊、山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の「食料自給率、EUと日本なぜ明暗」から。

・・・日本と同様にフランスやドイツなど欧州連合(EU)諸国も第2次世界大戦後は農業生産の激減による飢餓に見舞われ、食料増産に努めた。食料自給率は、1961年の78%から38%へ半減した日本に対し、フランスでは99%から125%、ドイツでは67%から86%へ上昇している。

60年ごろに食料自給が実現できるようになると、日本も独仏も農産物価格(コメ農家が大半を占めていた日本は米価)を上げて農家所得を引き上げようとした。需給が均衡する価格よりも高い価格を設けたので、生産は増えて消費は減り、供給過剰が生じた。
ここまでは同じだが、過剰処理の仕方が違った。日本は補助金を出して減反(生産調整)し生産を減らした。コメ生産は終戦直後の587万トンから67年には1445万トンに増えたが、今はエサ用などを入れても720万トンにすぎない。日本の食料自給率低下の原因は国内市場の縮小に合わせたコメ生産の減少だ。EUは生産を拡大して過剰分を補助金付きで輸出した。食料自給率は生産を消費で割ったものだから、輸出すると100%を超える。EU農業は食料安全保障のための生産確保という使命を忘れなかった。

次に93年にEUは価格を下げて農家への直接支払いに転換した。補助金なしでも輸出できる価格競争力がついたばかりか、輸入していた飼料穀物を域内産で代替し、さらに食料自給率は上昇した。今やEUは世界最大の小麦輸出地域である。
我が国も輸出を振興し始めた。しかし、小手先の対策ばかりで、減反をやめて米価を下げ、世界最高峰の品質を持つ日本米の輸出を大々的に行う考えはない。米国のコメ小売価格は日本よりも高くなっているが、米国のスーパーには数年前までなかった韓国産のコメが並んでいる・・・

経産省、一貫性なき半導体政策

4月11日の朝日新聞夕刊「取材考記」、大鹿靖明記者の「瞬発力のみ 経産省、一貫性なき半導体政策」から。

・・・自民党の萩生田光一前政調会長は文部科学相と経済産業相を歴任した。両省の官僚気質をこう例える。
「文科省は生徒会長の集まりのようなところで、地味だけどルールを守ってこつこつやる人が多い」
「それに対して経産省は文化祭実行委員長みたい。とても優秀で短時間にワーッとやるけれど、文化祭が終わったら関係ナシ。短期集中突破型で持続力がないんです」・・・

・・・ 前のめりになったかと思えば後ずさりし、「シリコンサイクル」とは経産省の半導体政策の「やる気度」のことを言うのかと思えてしまう。そう話すと、「まさしくそう」と萩生田氏。
「普通の役所は『引き継ぐ』でしょう。でも経産省は違います。自分の代に何かを『仕掛ける』。チャレンジングな文化なんです」
確かにそうだ。コロナ禍の半導体不足という一瞬の「市場のゆがみ」に飛びつく経産官僚の瞬発力たるや、すごい。それで台湾のTSMCを誘致し、ラピダスを設立するのだから。

50歳代の課長級が言う。「ウチの役所は大きなことを仕掛けることにロマンを感じる人が多い」。さらにこう付け加えた。「日本の農業を守る農林水産省や財政規律を大切にする財務省と違って、経産省は背負うものがないんです」
同省は過去にグーグルに対抗した検索エンジン構想や、脱ウィンドウズのOS構想などを打ち上げてきたが、成功したとは聞かない。その時々話題になりさえすればいいようである。過去の半導体の日の丸プロジェクトの資料を情報公開請求すると、担当課から「残っていない」との返答を受け取った。つい20年前のプロジェクトなのに。「ウチは2年で記憶喪失する役所」と元担当官は苦笑い。やはり文化祭実行委なのか・・・

公文書、政治の介入許すな

3月26日の朝日新聞オピニオン欄に、福田康夫・元首相の「国民のための公文書 歴史の生の記録は国家形づくる石垣、誠意の介入許すな」が載っていました。

・・・「その一つ一つが、国家を形づくっている石垣です」。公文書管理法の生みの親ともいえる福田康夫元首相は、公文書を城の石垣にたとえる。相次ぐ改ざんなどで、その石垣が揺らいでいる。国民共有の知的資源で、説明責任が求められる公文書。適切な管理に最も重要なことは「政治を介入させないこと」だと話す・・・

―なぜ公文書問題に取り組んだのですか。
「国家として歴史の事実の記録をきちんと残していく。それは当然のことです。事実を知ることは民主主義の原点、民主国家の義務です。しかし、その基礎となる法律が日本にはなかった。民主主義国家として恥ずかしいことです」
「米国の公文書館には国の歴史が詳細に保存され、それを国民が容易に見ることができる。国家がどのような歴史を経て今の形になったのか。事実の積み重ねを具体的な生の記録を通じて知ることで、歴史の事実を実感をもって理解してもらうことができる。それが、国民の国家への信頼につながり、対外的な信用も生まれる。その記録の豊富さ、閲覧のしやすさなどに驚かされました。日本にもこういうものをつくらないと、と痛感しました」

――公文書を見ればその国がわかるということですか。
「小さい事実、歴史の記録の一つ一つがお城の石垣のように積み上がって国家を形づくっている。その石垣が公文書です。公文書を通じてその国がどういうものかが読み取れる。その国がどんな歴史を経て今に至ったか、その姿を後世にきちんと引き継ぐ、その基礎となります」

―政治の責任はどうですか。
「大きくいえば、政治の責任です。きちんと記録を残すよう関係省庁に促したのかどうか。記録がないと、後々検証ができません。検証できなければ、教訓を後世にいかすこともできません。今回の裏金問題も同じ構図といえます。なぜ、このようなシステムができあがったのかを解明し検証しないと有効な対策がとれない、と野党が国会で追及している通りです」
「最も極端なケースは、敗戦直後に各省などで資料が一斉に焼却されたことです。戦争責任の追及を恐れた政治指導者が、責任追及を回避するために証拠隠滅をはかろうと指示したものでした」

――第2次安倍政権では、公文書改ざんが明らかになりました。
「事実を正しく記録したものでなければならない。その公文書が偏っていたり、事実と違っていたりしたら、国民にも、対外的にも信用されなくなります。改ざんがいけないのは公文書に限ったことではありませんが」

―財務省の公文書が改ざんされた森友学園問題がそうでした。
「官僚は、上から評価してもらうため、自らの身を守るために忖度して行動しがちです。内閣人事局ができたことで官僚に対する官邸の人事権が強まったこともその傾向を強めています。文書改ざんは過度に忖度したということでしょう。そこには政権が強力で長続きしそうだという判断も恐らくあったと思います」
「政治家が常に心しなければならないのは、権力行使は最低限にとどめなければいけないということです。権力者が長くその地位にとどまることは、決して好ましいことではない。そのことを政治家が自覚すべきです。官僚機構も同じです。要職に長くとどまると、新たな権力構造が生まれやすくなります」

――権力は腐敗すると。
「腐敗しがちだということです」
「中立性、公正性を保つには、公文書館は内閣から独立した存在にすることも改めて考えるべきでしょう。内閣だけでなく、三権に対して強い権限を持つ必要があります。たとえ政府や国家にとって都合が悪いことでも、事実を記録して公開する。それが国家としての信頼につながります。そのためには、政治を介入させないことが何より重要です」

日本版○○、劣化コピー

3月25日の日経新聞に「日本の観光司令塔「DMO」、看板倒れ 人や金に制約」が載っていました。
・・・国が観光立国の旗振り役として期待する観光地域づくり法人(DMO)の存在感が乏しい。地域の観光戦略の司令塔として300近くが登録されたが、人材や財源が足りず、自治体と事業が重なるといった課題がある。新型コロナウイルス禍後の訪日客急増でオーバーツーリズム(観光公害)などの弊害が表面化する中、実効性を高める取り組みが急務だ。
「予算を効果的な取り組みに使えていない」「プロモーションのみに終始している」。東京・霞が関で観光庁が1月に開いたDMOに関する有識者会議で、民間委員から厳しい指摘が相次いだ。
人口減少時代の地方創生策として、訪日外国人(インバウンド)需要が盛り上がる観光を起爆剤にしようと、国は2015年に欧米で先行したDMOを手本に「日本版DMO」の登録制度を始めた。戦略策定や実行のためのマネジメント、データを生かして来訪者を呼び込むマーケティングを担う地域の観光司令塔に位置づけた。
「器」はもくろみ通り増え、登録済みのDMOは282と5年で2.7倍に増えた。23年の訪日客数はコロナ禍前の19年の8割までに回復し、23年の消費額も5兆円を初めて超えた。DMO効果にも見えるが、実際は多くが機能不全に陥っている・・・

ここで紹介したいのは、その記事についている「日本版○○、劣化コピー脱却を」という記者の意見です。
・・・海外に範を取るのは明治以来のお家芸で、日本版○○政策は枚挙にいとまがないが、失敗が多い。例えば、中心市街地のまちづくり機関「日本版TMO」。甘い計画が乱立して霧消した。
なぜか。責任が曖昧で補助金狙いが先行し、地域特性を踏まえず形をまねる「劣化コピー」の愚が繰り返されるためだ。DMOでも「補助金を取ろうとコンサルティング会社や旅行会社に促されて立ち上げ、アイデア出しも丸投げするだけの、やる気のない団体が多い」とDMOで勤務した経験のある会社員の男性は証言する。
DMOでは国は当初、世界水準の団体を20年に100件にすると掲げ量的拡大を優先した。先進例を選んで底上げをめざすものの、多くがデータを使いこなせず活動目的もおぼろげだ・・・
として、日本版の、TMO、CCRC、MaaS、ライドシェア、ビッグバン、バイ・ドール制度、SOX法、EMP、DBSが載っています。

諸外国の先進的な試みに学ぶことは有用です。日本は明治以来、それで発展してきましたから。でも、日本の実情を勘案して、工夫すべきでしょう。名称がアルファベット略語である時点で、国民への普及を考えていませんね。

国際クルーズ船、入国者名簿を紙で提出

3月23日の日経新聞夕刊に「国際クルーズ船、また来て! 入港手続き軽減や港湾整備」が載っていました。そこに、次のような話が出ています。

クルーズ船の外国人観光客が日本に入国する際、船長または代理業者が入国前に、人数や船の名称を記載した申請書と、乗客の氏名や生年月日をまとめた名簿を、出入国在留管理官署に提出します。名簿は電子データで送ることができますが、申請書は紙で窓口に持って行く必要があったのです。
業者や審査官の負担軽減のため、オンライン化の要望があり、電子メールで送ることができるようにするとのことです。
「え~、今ごろ」と思うのは、私だけでしょうか。