カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

省庁再編6周年

1月6日は、2001年に省庁改革が行われた日です。もう、6年も経つのですね。その後、比較的順調に運営されていると、私は思います。日本の官僚は優秀ですから、器さえ与えられれば、それをうまく運用します(もっとも、それが本来の組織目的を十全に発揮しているかは、別の場合もあります)。もちろん、改善すべき点もあります。時代が変われば、行政のありようも変わります。また、運用してみて不都合な点は修正し、よりよいものが分かったら、それを取り入れればいいのです。当時の言葉を借りれば、省庁の組み合わせは家の間取りのようなものです。絶対なものでなく、必要があれば変えればいいのです。
ただし、私は、今度の再々編には、別の哲学がいると思います。前回は、省庁の数を減らす、官邸機能を強化するが哲学でした。1府12省庁の組み合わせを変更することも良いことですが、それは省庁再編とは言えないでしょう。
部局を再編することは、民間企業だけでなく県や市町村では、しょっちゅうやっています。国でも、食糧庁を廃止し内閣府に食品安全委員会が作られました。また、新しい課題に取り組むため、内閣官房にいくつもの組織が作られています。これらを含め各省の組織を、分離併合することも必要でしょう。しかしそれでは、再編とは言えないと思います。それ以上の哲学がいると思うのです。新車でいうと、マイナー・チェンジでなく、フルモデル・チェンジです。
例えば、産業・業界振興から国民・消費者保護へ、裁量的育成・事前調整からルールづくり・事後監視へと、行政の任務は大きく変わっています。そのような軸から省庁を作りかえるといったことが、必要だと思うのです。

省庁間調整

29日の日経新聞経済教室は、塩沢修平教授の「政府内の調整ルール築け」「戦略対応を迅速に。議論の過程も開示不可欠」でした。
「日本の行政機構は、地方自治体の権限が小さく、中央省庁に集まっているといわれる。しかし、ある一つの組織や人物に権限が集中しているわけではなく、必ずしも中央集権体制とはいえない。同等の権限を持つ組織の集まりであり、実態は中央分権体制とでもいうべきものである」
「根本的な問題は、そうした組織間の調整に明確なルールが存在しないという点にある。ある種の慣行はあっても、それぞれ個別の試行錯誤的に調整を続けなければならず、それがさらに時間と労力を要する原因となっている」
省庁間調整の改善については、中央省庁改革のテーマの一つでした。改善の仕組みを作ったのですが、残念ながら十分に機能していないようです(拙著「省庁改革の現場から」p33)。また、同じ行政であっても、地方団体の場合は霞ヶ関ほどひどくないことを、「新地方自治入門」p67で分析しました。詳しくは、それをご覧ください。

2006.06.25

23日の朝日新聞経済面が、「農水省に誕生3年。消費・安全局、農政変えた?」を解説していました。
私は、これまでの行政の任務は生産振興であり、結果として業界と一体となった生産者の保護が主であった。これからの行政に期待されるのは、競争のルール作りと、消費者の保護であることを、主張しています。そこで、手法も事前調整から、事前のルール作りと事後チェックになります。補助金行政から、アンパイアになるのです。
授業では、生産者重視で失敗した行政の例として、水俣病、薬害エイズ、金融行政、BSE牛、輸入肉偽装、B型・C型肝炎などを取り上げています。また、転換した行政の例として、大蔵省銀行局・証券局から金融庁へ、内閣府の食品安全委員会とこの農水省消費・安全局、航空・鉄道事故調査委員会を挙げています。

2006.02.12

行政減量会議での議論が、進んでいます。9日の日経新聞が、要領よく整理していました。重点削減分野(業務)を選ぶ作業で、すでに決めた8分野(農林統計など)に加え、7業務(官庁営繕など)を追加し、さらに4業務(国税・特許など)を検討対象としました。
これまでの定員削減が、全省庁一律に、人を減らすことに重点が置かれていたのに対し、今回の方法は重点業務を絞って行うことが特徴です。「全省庁一律」に対し「重点分野」、「人減らし」に対し「業務減らし」です。業務を減らさない限り、人は減らすことができないのです。
官僚が行う査定(予算・業務・人員)には、限界があります。財務省主計局も総務省行政管理局も、各省の反対を押し切って厳しい削減を押しつけるだけの権限と権威は持っていません。
各省の官僚は、予算・人員・権限を増やすことが目標の一つ(評価の基準)でした。減らすなんてことは、もってのほか。「わが省のこの業務は不要だから廃止しよう」と思っていても、そんなことは言えません。各省の官房が飲めるのは、「うちだけが削減されたのではない、横並びだから」という案です。
官僚に任せず大臣が査定をしても、同様です。各省大臣は対等であり、閣議で拒否権を持っています。内閣制にあっては、総理のリーダーシップがない限り、大胆な削減は難しいのです。
また、与党の政治主導も働きにくいです。各省・各業務分野に族議員がいるので、個別分野削減には抵抗します。党内での合意形成は難しいです。
いつも言うように、官僚主導・族議員政治ができたのは、右肩上がりだったからです。一律削減・シーリング方式は、その象徴です。よって、今回は、民間有識者による会議を使っています。問題は、これが実行の段階になったときです。当然、対象となった省庁、族議員は強く抵抗するでしょう。権限はそのままで補助金だけをなくすという三位一体改革ですら、ああだったのですから。有識者会議には、削減を実行するだけの権限と権威はありません。もちろん民主主義社会で、審議会がそこまで力を持つのは問題です。ここでも、「改革派」対「官僚・族議員・業界」の戦い、総理のリーダーシップ、各閣僚のセンスが見えるでしょう。
さて、日経新聞も指摘していましたが、業務を廃止縮小しても民間委託・独立行政法人化をしては、人件費が委託費に変わるだけで効果は少ないです。完全に廃止することが無理な業務も多いでしょう。直営から切り出したときに効率になるかどうかは、競争があるかどうかによります(拙著「新地方自治入門p245)。

行政機関スリム化意見募集

「「行政減量・効率化有識者会議」が発足しました」と書いたら、元部下からメールが来ました。「このHPだけでなく、もう一つのHPも紹介せよ」とのことです。以下、元部下からの指示です。
「岡本課長のHPでも、ぜひ機会がありましたらこの意見募集HPの宣伝をしてやってください。とても多くのかた、しかも勉強熱心なかたが多く見られているHPですし、影響力のあるHPですので」
そこまでほめられると、恥ずかしいね。でも、大堀君の指示なら喜んでPRしますよ。「国の機関でここが無駄」と思っている人は多いと思います。ぜひ、その声を届けてください。陰でこそこそ言うのは、良くないですよ。