「行政機構」カテゴリーアーカイブ

行政-行政機構

行政組織のガバナンス

大連載を書く過程で、いろんなことを勉強しています。2月号に書き足したことに、ガバナンスがあります。気にはなっていたのですが、なかなか議論が整理できなかったのです。田村達也『コーポレート・ガバナンスー日本企業再生への道』(中公新書、2002年)を読み始めて、少し考えがまとまりました。
近年、企業統治(コーポレート・ガバナンス)が話題になっています。よく見ると、その中には、二つのものが含まれています。一つは、法令や社内規則、企業倫理を守ることです。有名企業で偽装などの不祥事が相次ぎました。これに対しては、内部管理体制の強化(コンプライアンスの強化)が求められます。もう一つは、業績の確保です。法令を守っていても、収益を上げないと、経営陣は株主から交代を求められます。
これを参考にすると、行政組織にあっても、法令順守と業績確保の二つが求められます。年金記録のずさんな仕事は、前者の法令違反に当たります。夕張市の「ヤミ起債と再建団体移行」は、企業の粉飾決算に当たるのでしょう。後者の業績確保にあっては、もちろん行政組織に求められるものは、収益ではありません。
さらに、企業にあっては、売れない商品を作っていたり、高価なサービスを提供していては、他社との競争に負けます。市場で淘汰されるのです。しかし、行政には市場原理は働きません。ムダな政策であっても、コストの高い事業でも続けられるおそれがあるのです。ただし、国家間の国際競争という観点から見れば、魅力ある国づくりに負けた政府は、国力を落としていくのでしょう。
このような視点からは、スリム化や効率化を超えた行政改革が、求められます。これまでの行政改革論では、NPMは議論されましたが、このような視点はあまり議論されていません。

規制改革

規制改革会議が、第2次答申をまとめました。各紙が解説しています。26日の日経新聞には、「後退目立つ」として、項目別採点表がついていました。表にして○×を付けると、わかりやすいですね。もちろん、微妙な点が表せない、という批判もあるでしょう。しかし、多くの場合は、まずは全体を簡単に理解したいのです。

政策の検証

17日の日経新聞「核心」西岡幸一コラムニストの「トップは20年後もつくる」は、今年亡くなられたNEC元社長と日立製作所元社長の功績と責任についてでした。本論も興味深かったのですが、次のようなくだりにも目がいきました。
・・1980年代から90年代の日本の電子産業絶頂期を築いた経営者・・
そのピークは半導体で米国を抜いて世界一に立った1987年、ちょうど20年前だ。当時の業界の自信を示す格好の材料がある。産業構造審議会が87年に発表した「2000年の情報産業ビジョン」だ。電子、通信、情報サービスを合わせた情報産業の生産額は2000年に140兆円、国内総生産(GDP)の20%を占め、電子産業だけで110兆円になるとした。電子産業は現在でも20数兆円にすぎない・・
私が関心を持ったのは、外れたかどうかよりも、外れたことの検証を行政が行ったかどうかです。官僚は新しいプランを打ち出すことは好きです。でも、それが5年後、10年後にどうなったかを検証しないのです。当事者は2年で異動。政策は引き継がれるより、新しいことを打ち出すと評価されるという風土があります。もちろん、この記事にあるのは民間活動の予測ですから、政策そのものではありません。しかし、この審議会は省庁の一組織です。

消費者や生活者の視点に立った行政へ

17日に関係閣僚会合が開かれ、「生活安心プロジェクト・緊急に講ずる具体的な施策」がまとまりました。
「消費者や生活者の視点に立った行政へ」として、「安全・安心を第一に大きく発想を転換」を掲げています。そして、「これまでの政府の仕事のやり方は,生産第一の視点から作られてきたため,国民生活の安全・安心の確保という視点が,政策立案の中心に置かれていなかった。国民が日々,安心して暮らせるようにしていくため,安全・安心を第一に,消費者や生活者の視点に立った行政へと大きく発想を転換すべき時代が来ている。」と述べています。

金融危機対応

8日の朝日新聞変転経済「金融危機10年」は、1990年代の公的資金投入の経緯です。
銀行の不良債権の存在と、それへの対応の必要性は、早い段階から指摘されていました。しかし、その手始めである住専への6,850億円投入が、大きな議論を招きました。その後遺症もあり、銀行への投入が進みませんでした。記事では、官邸・与党の動きが鈍かったこと、情報が十分開示されなかったこと、所管省が対応をとらなかったことを、指摘しています。
政策変更時や危機対応時の、政治と行政の役割を考える、よい材料です。