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行政-行政機構

司法制度改革10年

7日の朝日新聞が、司法制度改革10年を特集していました。司法制度改革審議会が意見書を出して、10年になります。実際の改革は、その後、25本もの法律改正によって実施されました。
裁判員制度、法テラス、ADR、知財高裁、法科大学院、司法試験改革などです。司法を身近にすること、法曹の量を増やすこと、国民の司法参加が、目的でした。司法制度改革は戦後改革以来初のことで、これらは日本社会の大きな改革でした。
私は、行政改革の分類の中で、これらを、「事前調整から事後監視へ」や「公開と参加」などに位置づけました。このような改革は、ある日突然変わる、あるいは写真になるような改革ではないので、なかなか国民の実感には現れません。裁判員に選ばれると、実感するのでしょうが。

ところで先日、北村亘大阪大学教授から、この表について、地方分権改革は、「官の役割変更・経済活性化」に位置づけるより、「ガバナンス改革」に位置づける方がよいのではないか、との指摘を頂きました。
確かにそうですね。実はこの大分類は、後から考えたものです。何度も試行錯誤しました。その際に、国から地方への地方分権改革は、中央政府のスリム化であるとの位置づけからスタートしたので、それに引きずられた結果になっています。北村先生、御指摘ありがとうございました。

強い現場と弱い本部

5月16日の朝日新聞「大震災と経済」に、藤本隆宏東大教授のインタビューが載っていました。藤本先生は、日本のモノづくり現場の研究で有名です。先生は、日本の特徴を「強い現場、弱い本部(本社)」と表現しておられます。すなわち、品質が良いものを安く効率よく作るというように、目標がはっきりしている場合は、本社が目標を定め現場は目標に向かって頑張ります。しかし、目標が不明確になると、目標を定められず、弱い本部になってしまいました。
これは、行政機構にも当てはまります。欧米に追いつくという目標がはっきりしていた時は、官僚機構は効率的でした。その目標を達成し、次の目標がはっきりしなくなった時に、官僚制が効率的でなくなりました。決められたことをする職員と、次に何をするのかを考える立場の人との役割分担です。後者が、本部機能です。

記事では、「復興対策をどう評価しますか」との問いに、次のように答えておられます。
・・出張で海外に行ったが、識者の間でも、被災現場、原発事故現場に踏みとどまる人々の粘りと沈着さは高く評価される一方、官民とも対策本部の判断や発表の混乱は低い評価だった。日本の現場の強さと本部の弱さを、全世界が認識してしまったようだ・・
「復旧、復興に向けてどう改善すべきですか」という問いには、
・・高い組織力を維持している日本中の現場の力を一層活用することと、心もとなかった本部の失地回復が必要だ・・
「本部はどうすれば」という問いには、
・・本部は部門の壁の撤去が急務だ。具体的には、重要な復興テーマごとに、関連省庁・自治体から実務担当者を集めたプロジェクトチームを編成し、政府中枢に省庁横断のマトリックス組織を早急に作るべきだ。トヨタ自動車の製品開発組織、日産が復興期に使った部門横断チーム、英国内閣府のプロジェクト制など、成功例は多い・・省庁幹部間の連絡会だけではだめ・・
詳しくは、原文をお読みください。

内閣官房に置かれた組織

昨日、内閣官房に置かれた各種会議を紹介しました。今日は、内閣官房に置かれている組織(事務局)の数々を紹介しましょう。これだけの組織を知っている人は、国家公務員でも少ないでしょう。各種会議は主に合議制ですが、ここにある組織は、それら会議の事務局が多いです。
また、内閣府に置かれる組織もたくさんあります。こちらもいろんなものがあります。私たちの被災者生活支援チームも、内閣府に置かれた組織なのでこの図に出てくるべきものですが、臨時なのでか、載っていませんね。

終わった政府組織の記録

政府では、新しい課題について、いろいろな検討組織が作られます。これらは、任務を終えると廃止されます。
現在は、それらを調べることが、容易になっています。内閣官房のホームページに「各種本部・会議等の活動情報」のページがあり、そこに「現在活動中の会議」と「活動を停止・終了した会議」の一覧が載っています。そこをクリックすると、それぞれの会議の資料を見ることができるのです。便利なものですね。私の関係した組織でも、「再チャレンジ推進会議」と「安心社会実現会議」は載っています。「省庁改革本部」は載っていないようです。これは、内閣官房でなく、内閣に直属したからでしょうか。若い人は、これらの組織を知らないでしょうね。
私の記憶では、安倍晋三内閣の時に、このページ(終了した会議)が作られたと思います。当時、内閣府に出向していて、内閣官房の職員に「こんなページを作って欲しい」とお願いしていたのです。私以外にも、問題意識を持った幹部がいたのかもしれません。

各省に置かれた暫定的組織なら、どこかの部局に引き継がれるのでしょう。しかし、内閣や内閣官房につくられる組織は、そもそもが各省に属さない、あるいは各省にまたがる課題を扱います。どこにも引き継がれない可能性が、大きいのです。さらに、ファイルに綴じられた文書も重要ですが、一般の国民や若い公務員には、インターネットの方が便利でしょう。理想的には、各組織ごとにきちんとした文書が記録され、インターネットで公表資料が残り、できれば1冊解説書があれば、便利ですね。

行政改革の分類

以下の記述は、この論文を書くまでの道のりです。

日本が取り組んでいる行政改革を、目的別に整理してみました。「行政改革の分類」です。かなり前から試行錯誤していたのですが、ようやく一つの割り切りにたどり着きました。あわせて、行政の分類もやってみました。これはもう、10年以上前からの宿題です。もちろん、分類はその目的によって様々なものがあります。私の分類も、一つの試みでしかありません。でも、本人は、すごく意欲的な表と思っています。まだ改善の余地はありますが、ひとまず、すっきりしました。(2007年2月19日)

Ⅰ 行政改革の分類
(行政改革の目的別分類)

今日本が取り組んでいる行政改革を、分類したいと考えていました。かつて、省庁改革に携わったときに、少し試みたことがあります。「省庁改革の現場から」p218では、主に政治と行政機構の改革について分類しました(下の参考に載せてあります)。「新地方自治入門」p244では、行政のスリム化という観点で、図示しました。
その後も、いろいろな行政改革が続けられています。しかし、その中にはいろんなものが含まれていて、きれいに整理されていません。また、ある言葉の中に様々な目的のものが含まれています。例えば、「官から民へ」へといった場合、民営化・民間委託だけでなく、事前調整から事後監視へや、規制改革も含まれます。「規制改革」は小さな政府からスタートして、市場の活性化にシフトしてきました。これらの言葉も、整理してみたかったのです。
(行革を迫るもの、目的からの分類)
試行錯誤した結果が、「行政構造改革の分類」(目的・効果別の歴史)です。行政改革といわず、行政構造改革と名付けたのは、より深く構造的な改革を迫っていると考えるからです。
今回もうまく表にできないので、ファイルで載せます。うまく開かないときは、一度パソコンに(デスクトップにでも)保存して、それから開いてください。(2007年2月19日)

加筆修正しました。分類を大きく、「財政再建・経済活性化」「官の役割変更」「ガバナンス改革」に分けました。この順に、行政改革が対象範囲を広げ、意図も拡大したという意味を込めています。
一つの改革が、2つ以上の意味と効果を持つこともあり、いくつかの欄に分類されることもあります。ひとまずの割り切りだとご了解下さい。また、範囲が広がったこともあり、表題を「行政構造改革」と変更しました。副題は、「目的別・効果別の歴史」です。(2010年10月9日)
その後、さらに加筆しました。表題は「行政改革の分類」としました。(2010年12月11日)
行政改革の分類(ワード)

 

【歴史遺産】(古い表)
2007.5.3 gyouseikouzoukaikakubunnrui.doc
この表の作成には、山下哲夫総務省行政管理局管理官、福井仁史福岡大学法学部教授の協力を得ました。表の都合上、時期が必ずしも正確ではありません。
これはその名の通り、近年の行革をその目的や効果で分類したものです。もちろん、分類はその目的によって、いろいろなものが考えられるでしょう。この表は、日本の行政をめぐる「環境の変化」と「役割の変化」から、考えてあります。改革を迫るものは、一つには「日本社会の成熟」(右肩上がりの終了、発展途上国の終了)であり、もう一つは、「世界の進化に合わせること」(国際化への対応、新自由主義的改革、公開と参加)です。
「小さな政府」といっても、歳出削減のためのものもあり、官の役割縮小のためのものもあります。ここでは、それを目的別に分類したのです。もちろん、すべてがすっきりと分類できてはいません。

(環境の変化の分類)
日本に行政改革を迫る環境と、対応しなければならない役割の変化を整理すると、次のようになります。
環境の変化と役割の変化=改革を迫るもの
(1)日本社会の成熟
① 右肩上がりの終了
 →財政再建、行政改革(狭義)
② 発展途上国の終了
 →官の役割縮小、国から地方へ、官から民へ、事前調整から事後監視へ
(2)世界の進化に合わせる
① 国際化への対応
 →国際規格への適応
② 新自由主義的改革
 →規制改革、市場の活性化
③ 行政の管理運営改善(民主主義の補完)
 →官の独占を止める、公開と参加

Ⅱ 日本の構造改革の分類
「省庁改革の現場から」p218では、日本が取り組んでいる改革を、次のように分類しました。これは、対象別、領域別の分類です。

1 社会経済システムの改革
(1)税財政等(財政構造改革、税制改革、社会保障制度改革)
(2)社会システム(地方分権改革、司法制度改革、規制改革、教育改革、金融制度改革)
2 政治・行政の改革
(1)政治改革
 ① 政治制度(選挙制度改革)
 ② 政治主導(内閣機能の強化、副大臣・政務官の新設)
(2)行政改革
 ① 組織改革・縦割り是正(省庁改革)
 ② スリム化(局・課の削減、定員削減、審議会整理、独立行政法人化、特殊法人改革)
 ③ 透明化(政策評価、パブリックコメント、情報公開)
 ④ 公務員(公務員制度改革)
(2007年2月19日、24日)

構造改革の体系図を新しくしました。
元の表は、「省庁改革の現場から」p218です。(2011年1月9日)
「構造改革の体系図」
2010.12.9kouzoukaikautaikei.doc

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