カテゴリーアーカイブ:行政機構

河合晃一著『政治権力と行政組織 中央省庁の日本型制度設計』

2019年3月24日   岡本全勝

河合晃一著『政治権力と行政組織: 中央省庁の日本型制度設計』(2019年、勁草書房)を紹介します。
金融庁、消費者庁、復興庁が、どのような経過でつくられたかを分析した本です。2001年の中央省庁再編は、私も記録しました。『省庁改革の現場から』。本書は、その後につくられた組織を対象としています。
中央省庁再編は、全体を見通した哲学と制度設計の下に行われました。それに対し、本書の対象となった組織は、それぞれの時代の課題を解決するためにつくられたもの、特に復興庁は急ごしらえでつくられたものです。

このほかに省庁の組織改編としては、次のようなものが思い浮かびます。
・スポーツ庁、観光庁の設置(組織の格上げ)
・出入国在留管理庁の設置(新しい課題に対応)
・社会保険庁、原子力安全・保安院の廃止(行政の失敗による)
・少し古いですが、厚生省薬務局、農水省畜産局の廃止

私も、著者からインタビューを受けて、復興庁の設置についてお話ししました。それも反映されているとのことで、名前を挙げてもらいました(P126)。お役に立てたら、うれしいです。

コロンビア大学国際公共政策大学院、知日派外国人を増やす日本旅行

2019年1月29日   岡本全勝

アメリカ、コロンビア大学・国際公共政策大学院SIPA)に留学している日本人学生たちが、世界各国から集まっている同級生たちを日本に連れてきて、日本を知ってもらう企画を立てています。
米国コロンビア大学の学生に、日本の実像を知ってもらいたい!!

・・・JASSA(SIPAに所属する日本研究の学生団体)は、2019年3月の春休みの期間(3月17日~23日)に、SIPAの学生約50人を日本(東京、京都、広島)に連れて行き、日本での文化体験や政治家・ビジネスリーダー等との議論、被爆者の方との対話を行うジャパントリップを企画しています。このジャパントリップを通じて、世界中に日本の政治・経済・文化・歴史等に関する実像を学んだ「知日派外国人」を増やし、日本のプレゼンスを高めていきたいと思っています・・・

良い試みと思いますが、費用の問題があるようです。
・・・しかし、高額な参加費用が彼ら彼女らには極めて重い負担となっており、ジャパントリップ参加への大きなハードルとなっています。実際に私の友人の学生たちにジャパントリップに関する意見を聞いてみると、ほぼ全員がその高額な費用を口にするほどです。
その一方で、中国やイスラエルへのトリップは政府機関などの関連団体の補助金によってほぼ無料で開催されているため、ジャパントリップへの参加をあきらめる学生が多くいます・・・
・・・私たちは、1人でも多くのSIPAの学生が実際に日本に来訪し、日本の実像を知ってほしいと思っています。ご支援の程、よろしくお願いいたします・・・

ご関心ある方は原文をお読みいただき、支援してください。

統計調査問題

2019年1月29日   岡本全勝

厚生労働省の毎月勤労統計調査が定めたとおりの調査をしていなかったことが、大きな問題になっています。
1月27日の日経新聞「統計不信 識者に聞く」、八代尚宏・昭和女子大特命教授の「合理化の発想なく放置」から。

・・・現行ルールでは、毎勤統計は500人以上の全事業所を調査しなければならないと定めている。法律違反は問題だが、なぜ全件調査をしなければならないのか。実態をみてルールを変えるべきだった。公務員は定員が減らされ、一方でやるべきことは増えている。過去のやり方が通用しなければ、正しく新しいやり方を考えるのが行政改革だ・・・

・・・専門職のため、組織の風通しが悪くなった面もあると思う。ミスがあるという前提で、あったらどう対応するかという雰囲気をつくらないと、ミスを隠蔽する組織になってしまう・・・

・・・大事なのは透明性だ。一部の統計を民間に任せてもよいのではないか。すべての統計を国がやる必要は必ずしもない。民間が主に手掛け、その過程でチェック機能を働かせる仕組みをつくればよいだろう。公務員は公務員にしかできないことに専念して、民間でもできることは民間に任せていくことが基本だ・・・
・・・専門家を民間から招いて人事交流を活発にするのも手だろう。統計の実務はプロが来ればすぐに改革ができる。米国では公務員は給与が低くて敬遠されがちだが、政府で働くのはキャリア形成になると数年は働く人は多い。日本でもこういう形をつくれればよい・・・

行政の役割、育成と規制

2019年1月17日   岡本全勝

1月8日の読売新聞が「保育改善指導公表1割」を大きく伝えていました(古くなってすみません)。
記事によると、保育施設への検査権限を持つ121自治体(都道府県、政令市、中核市)のうち、改善を指導した施設名と指導内容を公表している自治体は11団体で、1割に満たないことが、読売新聞の調査で分かったそうです。

保育施設での子供の事故が相次いでいます。そこで、市役所が調査に入り改善指導をします。問題は、ここからです。その指導内容を市役所が公表していないのです。
理由は、人手不足で余裕がない、保育施設の運営を妨げる、保護者の不安をあおるなどです。
しかし、改善指導をしているなら、それだけの事実と理由があるはずです。
子供を預けている保護者からすると、そのような情報は開示してもらいたいです。保育施設は、指導に対しどのような改善を行ったかを答えるべきでしょう。

業界を相手にした行政では、これまではその育成が任務でした。ところが、利用者の立場に立つと、育成とともに規制もしてもらわなければなりません。一定基準を満たすように、規制することです。
教育において、提供者側の学校や教師、学校法人を相手にするのか、利用者である生徒や保護者を相手にするのかで、視点が変わってきます。

提供者育成は、相手や業界団体があると比較的簡単です。補助金を出す、法令や指導を行うことです。ふだんからのつながりもできます。
それに対し、利用者は多数ですから、相手にするには違った行政手法が必要となります。

ボルカー元FRB議長、行政の重要性

2018年11月6日   岡本全勝

11月1日の日経新聞オピニオン欄、ジリアン・テット、ファイナンシャルタイムズ米国版編集長の「ボルカー氏が残す警鐘」から。
この記事は、ポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長の回顧録についてです。
記事の前段は、金融政策が後退しているとして、3つを挙げています。これはこれで重要なのですが、それは原文を読んでいただくとして。ここで紹介したいのは、行政への期待です。

・・・驚くのは、彼が次世代に残したいメッセージとしてトップに挙げるのは金融や経済ではない点だ。それどころか「自分としては、パブリックサービス、つまり公務員の仕事の重要性を理解してくれることを何よりも望む」と強調する。
20世紀には、政府は価値あるものと社会が受け止め、人々の支持を受けるべきものだという考え方が浸透していたが、これが21世紀が進むに従い、特に米国で廃れてきていると同氏は感じている。「私が育った時代は、『良い政府』というのは皆が響きのいい言葉だと捉えていた」と話す。1950年代にはパブリックサービスは尊敬を集める仕事とされ、プリンストンのような大学では「行政」は重要な学問と見なされていた。

「しかし今や『良い政府』という言葉は、あざけりの対象でしかない」と嘆く。大学は実践的な行政教育を事実上、捨ててしまっており、代わりに「政策」に焦点を置いている。ボルカー氏のように何十年も行政に携わる仕事をして、高額報酬を得られる機会を棒に振るような学生は今はほとんどいない。
この風潮を変えようと、同氏は、行政に関する教育をもっと重要な位置づけにするプロジェクトを立ち上げたが、「うまくいっていない」と言う。「このプロジェクトのために超富裕層から資金を調達できると期待したが駄目だった。彼らは政府は小さい方がいいという考え方で、政府がどっちを向こうが気にもしていない。今の時代、必要なのに支持が得られない」

これは憂慮すべき事態で、ほとんど議論されることがないからこそ、ボルカー氏の警鐘は重要だ。実際、地球温暖化から教育まで様々な問題に対処するため、あるいは自由市場が抱える問題点の解決法を選ぶためだけにでも、力ある行政が米国に必要な時があるとしたら、それはまさに今だ・・・
原文をお読みください。