カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

遅れている定住外国人子弟への教育

3月26日の日経新聞が「日本語苦手な子の5%が支援学級に 全小中生の1.4倍」を伝えていました。
・・・外国生まれなどで日本語が不得意な小中学生のうち5.1%が、本来は障害のある子らを対象とする特別支援学級に在籍していることが25日、文部科学省による初の全国調査で分かった。
小中学生全体の割合(3.6%)の1.4倍で、日本語の指導体制が整わないため少人数の支援学級で学ぶケースも多いとみられる。外国人材が日本経済に不可欠となり、家族の来日も増加が見込まれる。教員の追加配置や外部の専門家との連携による学習環境の改善が急務になる。
子どもの発達障害などに詳しいお茶の水女子大の榊原洋一名誉教授(小児神経学)は「日本生まれか否かで障害の発生率が大きく異なることは医学的に考えられない」と指摘。差について「障害の有無が適切に判断されていないか、通常の学級に余裕がないため少人数の支援学級に在籍させるケースが多いからではないか」と話す。

文科省によると、日本語指導が必要な児童生徒は2021年5月時点で約5万8千人おり、10年の1.7倍になった。公立小中に通う約5万2900人のうち約2700人が特別支援学級に在籍していた。
小中学校では14年度に授業として日本語を教える仕組みが導入されたが、実際に受けているのは対象児童生徒の約7割。約5割だった18年の前回調査より増えたが、授業として学んでいない子どもはなお多い。
対象者がいるのに日本語授業を実施していない学校に理由を尋ねると「担当教員がいない」との回答が最多だった。・・・

また次のような記事も。
日本語指導足りぬ教員、追加配置道半ば 地域差大きく
外国籍の1万人が不就学の可能性、19年比で半減
・・・外国籍で義務教育段階の年齢の子ども13万3310人のうち、7.5%にあたる1万46人が不就学か、就学していない可能性があることが25日、文部科学省の全国調査で分かった。初の調査となった前回2019年の1万9471人の半分程度になった。自治体による就学状況の把握が進んだことから大きく減少したとみられる。
文科省によると、外国籍の子に義務教育を受けさせる義務はない。希望する場合は国際人権規約などを踏まえ、日本人と同様に小中学校で受け入れる。
就学義務がないことから、子どもの氏名と就学状況を記載する「学齢簿」に外国籍児を記載しない自治体もあり、実態把握が進んでいなかった・・・

この問題は、このホームページでもかつて取り上げたことがあります。定住外国人が急増し、子どもたちも増えているのに、受け入れ環境が追いついていません。必要なところには教員を増やすべきです。いつまでも「公務員減らし」をしていることはよくないです。

児童福祉司の増員

3月19日の日経新聞が「島根、児童福祉司増やしケア拡充 一般職の資格取得支援」を伝えていました。
これまであまり注目されなかった児童福祉司が、脚光を浴びています。そして行革続きの中、思い切った人員増ができなかった行政で、このような増員ができるようになりました。

・・・児童虐待の相談件数が約20万件(2020年度)と過去最多を更新する中、子どもや保護者に対するケアの拡充が急務となっている。対応にあたるのは主に児童相談所に勤務する児童福祉司。国は22年度までに人口3万人に対し1人を配置するよう定めるが、人材不足もあり現時点で基準に達するのは36道府県(推計)にとどまる。トップクラスの島根県や神奈川県では採用手法の多様化が効果を生み出しつつある。

児童福祉司は保護者の育児相談に応じたり、虐待されるなどした子どもを保護したりする公務員。大学で教育学などを学んだ人や福祉施設で実務経験がある人などが就く。21年4月時点の従事者は全国4844人。相談が増え続けている現状を踏まえ、5年で1.6倍になった。
国はさらなる増員が不可欠として19年に「児相管轄地域の人口4万人に1人以上配置」としていた基準を改正。「22年度までに同3万人に1人以上」とした。ただ、なり手は限られ「自治体間で取り合いになっている」(立正大の鈴木浩之准教授)・・・

・・・増員はケア拡充に向け一定の成果を上げている。20年度の神奈川県の1人あたり相談受付件数(政令市などを除く)は、16年度比約5件減の44.8件となった。県福祉子どもみらい局は「一人ひとりに細かな対応が可能になった」と強調する。島根県青少年家庭課も「夜間など緊急案件への対応力が増した」と話す。
ただ、国内の児童福祉司数は現時点で英国(3万人)の6分の1程度。虐待問題などを研究する子どもの虹情報研修センターは「専門職が圧倒的に足りない」と指摘する。幅広い支援に向けNPO法人などと連携を図る自治体も増えてきた。埼玉県は「児童虐待防止サポーター」制度を17年度に開始。虐待抑止や早期発見につなげる狙いで、21年度は600人を募集した・・・

国立公文書館、近現代の文書管理の歴史

先日、国立公文書館に行ってきました。企画展「近現代の文書管理の歴史」を見るためです。官僚の一人として、公文書の作成や保管には関心があります。かつて知人が働いていたこともあり、何度か訪れています。

今回の展示は、明治以降の国家の公文書の変遷です。どのような様式が定められたか、どのように保管されたのか。勉強になりました。明治6年の宮殿の火事、大正の関東大震災、敗戦と焼却。保管されていたたくさんの文書が、灰になってしまいました。
昔から「文書が多すぎる」と、その是正をするための行政改革がされていたことも、驚きでした。

公務員でなくても、近現代史が好きな方には楽しめます。無料です。お土産には、平成と令和の文字が入ったクリアファイルなどもお勧めです。
国立公文書館の業務を簡単に紹介した動画があります。これは分かりやすいです。こちらも、ご覧ください。

復興政策の検証

読売新聞「記録誌作成へ」に載りました」の続きです。役所が自らの実績を評価することは良いことだと思います。

失敗をしでかしたときは、内部または外部の人を入れて、原因究明と再発防止のための検証委員会がつくられます。最近では国土交通省の統計書き換え事件です。
他方で、各省が出す白書には、政策とその成果が書かれます。これは、毎年という期間です。また、各省の局が持っている機関誌や関係業界の雑誌には、新年号に局長などが前年の振り返りと新年の取り組みを書くことが多いです。

ところが、5年や10年という期間で、その省や局の成果を振り返ることは、あまりされていないようです。多くの組織では「10年史」「20年史」が作られます。役所でもかつてはありました。しかし最近は見ません。5年とか10年は、適当な時間だと思います。それより長くなると、関係者もいなくなり、記憶も薄くなってしまいます。

評価をするためには、物差しが必要です。そして、成果を測る必要があります。白書に載っている数値は、多くの場合に成果ではありません。実は、役所のほとんどに、今年1年、これからの3年間に何をするかという「目標」がないのです。

実績を見る際に、3つのものがあります。
「投入量」(インプット)。予算額、つくった法律など
「産出量」(アウトプット)。復旧した道路、防潮堤の延長など
「成果」(アウトカム)。住民の暮らし、町のにぎわいがどの程度戻ったか
役所が行う評価は、しばしば投入量を測ります。「予算を確保した」「法律をつくった」は霞が関では成果ですが、被災地にとっては投入量でしかありません。
私が記事で「被災者の目線で検証をしてもらいたい」と言ったのは、被災地で見た、被災者から見た成果検証としてほしいのです。復興庁の使命は「被災地の要望に応えること」であって、それができたかどうかです。いくらたくさんの防潮堤と道路を造っても、町の暮らしが戻らないと意味がありません。

このような試みは、各省でも実施されませんかね。
まず東日本大震災では、原発事故復旧の検証をしてほしいです。今回の復興庁の検証では、その前身である緊急災害対策本部被災者生活支援本部(津波災害)は検証対象に含まれますが、原発事故の復旧は「原子力災害対策本部」の所管であり、復興庁の所管の外なのです。対策本部は会議体なので、資料の保存や検証はその事務局の仕事になります。
原発事故がなぜ防げなかったか、冷温停止になぜ失敗したかは、国会、政府、民間の事故調査委員会が検証しましたが、その後の復旧作業の検証がなされていません。

イノベーションに対応できない官僚機構

12月3日の日経新聞連載「ニッポンの統治」、冨山和彦氏の発言「統治構造、変化に対応できず」から。

――なぜ日本の統治が機能不全を起こしているのでしょうか。
「2つの要因がある。一つは明治以来中央省庁の形が変わっていないことだ。縦割りの構造がデジタル化など現代直面する課題とかみ合っていない。規制改革会議でも単独の省庁で完結する規制緩和はほぼ終わったが、省庁をまたいだ改革になると調整に時間を要し、動きが途端に鈍くなる。例えばドローンの規制緩和では5~6の省庁が関わり、改正する関連法令は数十に上るため、決まる頃には時代遅れになる」
「もう一つは霞が関の終身、一括採用モデルへの魅力が薄れている点だ。自分より若い世代からロールモデルが変わり、外資系証券など就職する間口が広がった。崇高な志を持ち、国家の役に立つために、キャリア官僚として40年近く働く必要がないと思われてきている。戦略的に人事を担う内閣人事局の仕組みも悪くはないが、終身雇用とは相性が悪い」

――日本では米国のようなイノベーションが生まれにくくなっているように見えます。こうしたことも統治構造に理由があるのでしょうか。
「日本でイノベーションが生まれにくい理由は、英米との法体系の違いにもあると考える。柔らかく法律を作り、もめた場合は裁判で解決する英米の判例法主義に対し、日本の法文化は法の前提となる規範概念を決めていく実定法主義だ。イノベーションを促すようなこれまで見たこともないものに規範概念を当てはめていくのは難しく、実定法主義に慣れた官僚は対応できない」