5月17日の朝日新聞オピニオン欄、「世の中、便利すぎ?」、古屋一樹さん・セブン―イレブン・ジャパン社長の発言から。
・・・1974年に1号店を東京・豊洲に出して以来、コンビニエンスストア(便利なお店)という名前の通り、店では新しい商品やサービスを次々に加えてきました。
新しいものを始めるときに気をつけることは、二つあります。一つは、お客さまの要望を2歩も3歩も先取りしないことです・・・
・・・もう一つは、店員の負担を大きく増やさずに、全国どのお店でも24時間365日、同一のサービスを提供できるのか、見極めることです。公共料金は、どんな種類もバーコードを2回スキャンするだけで支払えるようにシステムを開発しました。公共料金がコンビニの店頭で払えるのは、おそらく日本だけでしょう。いれたてのコーヒーは、導入までに5年かけました。お客さまが自分でいれてもストレスを感じない方式をつくるのに、試行錯誤しました。
一方で、飛行機のチケットや電車の指定席券の販売は、要望は多いのですが、お断りしています。事故や運行の乱れがあったときに店で対応しきれず、ご迷惑をおかけする恐れがあるためです・・・
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製品の新陳代謝
6月16日の日経新聞オピニオン欄、アメリカの3M会長のインゲ・チューリンさんのインタビューから。3Mはアメリカの素材メーカー、ポスト・イットなどが有名です。
・・・3Mの商品は工業用の研磨材から医療材料、「ポスト・イット」のような文房具まで幅広いが、総じて言えば、既存の商品は陳腐化によって毎年4%程度売り上げが逓減していく。その結果、5年経つと2割減る。その穴を埋め、さらに会社全体の売上高を押し上げるには、切れ目なくイノベーションを起こし、製品群の新陳代謝を活発にしないといけない・・・
・・・当社のイノベーションには2種類ある。一つはカスタマー・インスパイアード(顧客触発型)イノベーションと呼んでいる、お客さんと一体になって新しいモノを創る仕組みだ。日本での最近の成果としては、電車の外装を丸ごとラッピングする特殊フィルム素材がある。東京メトロやJR東日本向けに開発した・・・
・・・(もう一つのイノベーションの類型は)社内用語でインサイト・ツー・イノベーション(洞察による革新)と名付けたもので、これは特定顧客向けというより、もっと幅広く新たな市場の創出を狙ったものだ。例えば従来製品に比べて耐久性を4倍に高めた内装用の研磨材や「アイガード」という患者の血液などから医療従事者の目を守る防護具は、日本の建設現場や病院でも広く使われている・・・
西條都夫・編集委員の言葉
・・・近年、経営学で「トランザクティブ・メモリー」という概念が注目されている。企業は膨大なメモリー(記憶=知)を蓄積しているが、それが活発にやりとり(トランザクト)されることで、イノベーションの生産性が上がる、という考え方だ。逆に言えば、せっかくの「知」もたこつぼ的な組織に埋もれたままでは有効に活用されず、宝の持ち腐れに終わる。
優れた文化は一朝一夕には生まれない。3Mは1951年から社内の技術見本市を毎年開き「誰が何に取り組んでいるか」の情報を共有してきた。異分野の技術者が集まるイベントや研究発表会も多く、組織内の「知の巡り」が向上する・・・
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企業の社会責任、青柳さんのインタビュー
4月30日の河北新報「トモノミクス」に、青柳光昌さんのインタビューが載っています。
・・・東日本大震災で芽生えた企業の復興CSR(企業の社会的責任)は、熊本地震でどう生かされたのか。日本財団の職員として、二つの大災害で企業と被災地の橋渡し役を務めた社会的投資推進財団(東京)の青柳光昌代表理事に聞いた・・・
・・・初動は東日本大震災に比べ、格段に早かった。災害に対する企業の準備や構えのレベルは上がっている。水や食料、生活必需品を被災者に届けることに議論の余地はない。災害支援はCSRの柱になっている。
問題はその次の復旧、復興期の段階。企業が本業を通し、支援を続けられるかどうかが問われている・・・
場の提供者の責任
4月27日の朝日新聞オピニオン欄、津田大介さんの「「場」の提供者、問われる倫理」から。
・・・4月初旬、生後6カ月の男児が蜂蜜入り離乳食を摂取したことで「乳児ボツリヌス症」を発症、日本初の死亡事例となった件で日本最大のレシピサイト「クックパッド」に非難の声が集まった。国や自治体が母子手帳や乳児健診で1歳以下の乳児に蜂蜜を与えてはいけないと注意喚起していたにもかかわらず、同サイト上に蜂蜜を使った離乳食レシピが約140件も掲載されていたからだ。
クックパッドのIR資料によると、月次利用者数は6327万人。実に日本人の2人に1人が日常的に利用していることになる。それだけ影響力の大きなサイトに、一部とはいえ人体に危険を与える情報が掲載されていたわけだが、同社に法的責任を問う声は聞こえてこない。彼らは一般市民がレシピ情報を投稿する「場」を提供している存在――「プラットフォーム事業者」に過ぎないからだ。同社の利用規約には「本サービスの利用により発生した利用者の損害については、一切の賠償責任を負いません」と記載されている。レシピの利用はあくまで閲覧者の自己責任で、という立場だ。
だが、蜂蜜を使った離乳食レシピがもし書籍、あるいは新聞に掲載されていたら大問題になったはずだ。通常、大手出版・新聞社には情報が正しいか確認する「校閲」という部署がある。レシピのように専門性の高い分野では、管理栄養士などの専門家が監修を行うのも通例だ。普段我々が意識することは少ないが、雑誌や新聞の定価にはそうした「情報の検証コスト」も含まれている・・・
情報を商品ととらえるなら、個別の情報はそれを書いて発信した人が、「売り主」としての責任をもつことになります。その情報が正しいのか間違いなのか、賛成か反対かも、買い手である読者が、判断することになります。では、それを並べる場所を提供した人は、どこまでその「商品」に責任を持つのか。
他方で、場の提供者が過度な「情報統制」をしたら、自由な発言が制限されます。難しい問題です。技術の進歩と多くの人が利用できるようになることで、新しい問題が出てきます。原文をお読みください。
ニワトリと日本人の歴史
NHKカルチャーラジオ、4月からの「ニワトリはいつから庭にいるのか 人間と鶏の民俗誌」が面白いです。私は、「テキスト」を読んだだけですが。
その名のとおり、人間(日本人)とニワトリとの歴史です。かつては、鶏肉を食べるためでなく、時を告げるため、闘鶏をすることが、主だったのだそうです。天然記念物なのに食べても良いとか、人口をはるかに上回る数のニワトリが飼われていることとか。へ~、と思うことがあります。