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社会

NPO、公共を担う思想の広がり

4月5日の朝日新聞オピニオン欄、「NPO埋もれていない?」、橋本努・北海道大学教授の発言「「公共を担う」、育った20年」から。
・・・NPOの活用や「新しい公共」など、政府機能を中間集団に担ってもらう発想は、1970年代の「新保守主義」から生まれたといえます。
米国の新保守主義、つまり「ネオコン」は、自国第一主義の外交政策というイメージです。しかし国内政策では、自発的に公の役割を担う精神や道徳性を強調し、ナショナリズムと結びつけて、NPOの活動を後押ししました。
英国では、79年に誕生したサッチャー政権がNPOを推進します。新自由主義と言われますが、「ビクトリア朝の美徳の再興」を訴え、人々の道徳や公共心を動員できると考えた点では、新保守主義的でした。
NPOの活用は、政府の財政危機を救うために人々の公共心を導入するという保守派も、政府に任せず市民が自発的に公共を担うべきだという急進的な左派も、賛成できた。だから広まりました。
活用の仕方は、アウトソーシング型と社会的起業型に大きく分けられます。アウトソーシング型は、政府機能を低コストで委託します。体育館運営などが典型で、新自由主義や「小さな国家」と親和性が高いです・・・

学校への満足度上昇

4月5日の朝日新聞に、朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所が共同で実施する「学校教育に対する保護者の意識調査」が載っていました。それによると、
・・・子どもが通う学校について「とても満足している」「まあ満足している」と答えた保護者は計83・8%だった。過去の調査の「満足度」をみると2004年73・1%、2008年77・9%、2013年80・7%となっており、年を追うに連れて上がっている。
内訳では「まあ満足」が70・3%で調査開始からほぼ横ばいが続く。一方、「とても満足」は13・5%で、2004年の4・9%から上昇し、「あまり満足していない」は2004年の20・6%から11・8%まで減った。また、小中学校を比べると、小学校の満足度は86・8%で、中学校の77・8%より、9・0ポイント高かった・・・

・・・お茶の水女子大の耳塚寛明教授は「満足度が上昇を続けているのは、学校の方針や指導状況を保護者に丁寧に伝える活動が定着してきたことが影響しているのではないか。かつての『上から目線』ではなく、保護者の声をきちんと聞く姿勢が浸透したことも高評価の要因だろう」と話す・・・

結構、保護者の満足度は高いのですね。教育内容とともに、保護者の声を聞く姿勢が高い評価になっている、との解説は納得します。

企業が重視するリスク

4月5日の産経新聞に「企業の重視するリスク」が載っていました。東京海上日動リスクコンサルティングの調査結果です。

それによると、特に重視しているリスク(国内)は、第 1 位「労働・雇用問題」( 61.5%)、第 2 位「コンプライアンス違反・ガバナンス問題」(60.7%)。続いて、「情報・システムリスク」(58.0%)、「地震・噴火・津波」(44.0%)、「製品・サービスの欠陥」(40.9%)です。労働・雇用問題は、前回2年前の調査では、第4位だったのが、1位になりました(記事に、変化が表になっています)。

・・・中でも人手不足が深刻とされる建設業や運輸・物流業は8割以上がリスクとして重視しており、人手不足により業務が滞ることへの心配や、長時間労働につながる懸念が広がっていることがうかがえる結果となった。また、大手広告会社、電通の違法残業事件をきっかけに労務管理の重要性が再認識されたことも影響しているとみられる・・・
・・・労務リスクが意識される背景には労働者の権利意識の高まりもある。18年に労働審判制度が導入されて以降、企業が従業員などから訴えられるリスクが高まっている。27年3月には、長時間労働による鬱病から自殺したJR西日本の男性社員の遺族に、約1億円の賠償を命じる判決が出るなど高額な損害賠償が認められる事例も発生している。
また、労務問題が発生すれば“ブラック企業”とのレッテルが貼られ、企業イメージが大幅に悪化する恐れがあるほか、訴訟で多額の賠償金が発生するケースもある。
こうした意識の変化は保険の加入にも表れており、三井住友海上火災保険と、同じグループのあいおいニッセイ同和損害保険では、企業が加入する保険に「使用者賠償特約」を付帯する割合が2年前の約2倍に急増。セクハラやパワハラ、不当解雇などで訴えられた場合に備える特約の付帯率も約2・5倍に増えているという・・・

災害やサイバー攻撃など、リスクは組織の外から来ると思いがちですが、労働問題、コンプライアンス問題、製品やサービスの欠陥など、組織の中から発生するリスクも大きいのですね。

両陛下の障害者施設訪問

4月7日の日経新聞「平成の天皇と皇后-30年の歩み 障害者と心を共に」から。詳しくは、記事をお読みください。

・・・「トランポリンで跳びはねていた子どもたちが突然、天皇陛下に抱きついて握手した。続いて皇后さまにも抱きついたんです」
東京都国立市の知的障害児の福祉施設「滝乃川学園」の常務理事、米川覚さん(61)は、1992(平成4)年6月4日に両陛下が訪問した際の“ハプニング”を語る。同学園は日本最初の知的障害児のための施設で、のちに成人も受け入れている。前年が創立100周年だった・・・
・・・しかし、意外なことに当時この訪問を報じたメディアは少なかった。両陛下の障害者施設訪問の意義について、世間一般の理解が追いついていなかったといえる・・・

・・・両陛下の地道な活動により、肢体不自由児療護施設「ねむの木学園」(静岡県)、障害者就労支援施設「太陽の家」(大分県)や知的障害児の支援学校「旭出学園」(東京都)など、障害者施設に対する社会の認知度、理解は徐々に深まっていった。
2007年12月13日、皇后さまは非公式な「お忍び」で再び滝乃川学園を訪問した。見学中、障害者の一人が感激して皇后さまの手の甲にキスをしようとした。周囲のスタッフが止めようとしたが、「いいのよ、大丈夫よ」と笑顔で受けとめられたという。
そして、学園関係者に「皆さん(施設を利用する障害者)のことをよろしくお願いします」と言い残していった。常務理事の米川さんは「まるでわが子を託すように言われるので、本当に驚いた」と話す。
皇后さまは01年の誕生日の文書回答で、昭和30年代後半に日本で重症心身障害児施設が設立され始めたことに触れ、「3人の子どもの母として過ごした時期が、これらの施設の揺籃(ようらん)期と重なっており、無関心であることは出来ませんでした」とつづられている。
天皇陛下は99年11月の即位10年の記者会見で、障害者などに心を寄せていくことは「私どもの大切な務め」であり、施設の訪問でこれらの人々と「少しでも心を共にしようと努めてきました」と述べられた。
社会のなかで孤立し、忘れられがちな人々の存在を常に視野に置く。人格を尊重し、心を共にする。その精神の「伝道」は、平成の天皇、皇后のあり方の柱だった・・・

世界幸福度調査、日本は54位

世界幸福度調査の2018年版が公表されたと報道されています。
日本は、156か国中、54位です。多少の変動はありますが、近年このあたりの順位です。上位は北欧諸国で、下位はアフリカが多いようです。
主観を問う調査なので、個人の考え方の違いや文化の違いが影響している部分も多いと思います。楽天的な国民性、慎重な国民性、控えめな国民性とで違うのでしょう。
金持ちでも満足していない人がいて、他方でそんなに金持ちでなくても(家族そろって元気なので)「幸せだ」と思う人もいます。

立派な贈り物を持ってきて、「粗品ですが」と言う日本人の奥ゆかしさは、たぶんこのような調査では控えめに点をつけていると思うのですが。「朝日新聞の記事」「解説