カテゴリーアーカイブ:社会と政治

日本人の消費・モノから人のつながりへの変化

2012年5月12日   岡本全勝

三浦展著『第四の消費―つながりを生み出す社会へ』(2012年、朝日新書)を読みました。大正元年(1212年)から現在までを、国民の消費という切り口から4つの時代に分けて、日本社会と国民の意識の変化を分析しています。
私は、日本の行政を考える際に、社会の変化が重要な要素であると考えています。家族、地域社会、消費、幸福感、勤労、ライフステージなど。当然のことながら、社会の課題によって行政の任務が変化するのです。『新地方自治入門』でも、そのような観点を取り入れ、三浦さんの著書も紹介しました。ウイキペディアの三浦さんの項でも、取り上げてもらっています。
私の問題意識や社会の見方に、三浦さんの考えと共通するところが多く、今回もいくつも納得しながら読みました。詳しくは本を読んでいただくとして、私が最も共感を覚えた点は次のことです。
すなわち、消費が、モノの消費から、人的サービスの消費に変化すること。そしてそれは金銭を払うことでサービスを受けるだけでなく、人間の関係を求める人が増えること。すなわち、豊かさがモノからつながりに変化すること(例えばp204)。これは拙著『新地方自治入門』の基本テーマでした。三浦さんの本は家族・個人の消費についてであり、私の本は地方自治体の課題についてです。
そしてそれは、消費が個人にとって、時間や人生の消費(消耗)ではなく、時間や人生の充実に変わることです。人生を浪費するのか、人生を満足するのかの違いです(p246)。地方行政にあっては、「住民が行政サービスを受ける客体から、参加する主体になることです。モノとサービスの20世紀から、関係と参加の21世紀へ」と、拙著(p346)では書きました。

そのほかに、なるほどと思うことが、たくさん書いてあります。例えば、16~24歳の若者が自動車運転で起こした死亡事故で、スピード違反が主因になったものが、1990年には1,600件あったのに、2009年には120件に減少しています。若者の車の使い方・かっこよさが、変化しています。
近過去や現代を扱った教科書・概説書が少ない中で、この本は重要な教科書だと思います。日本社会の変化にご関心ある方は、ぜひお読みください。

スーパーマーケットで考えるマイケル・サンデル

2012年4月23日   岡本全勝

食品の安全を確保するため、食品中の放射性物質の基準が、4月1日から改められました。簡単に言うと、これまで1キログラム当たり500ベクレル以下であったものを、100ベクレル以下にと厳しくしました。すなわち、200ベクレルの魚は、売ってはいけなくなりました。
ところが、より高い安全を売り物にする商店にあっては、国の基準よりさらに厳しい基準で品揃えをしています。たとえば「我が店では、国の基準の半分である50ベクレル以下の商品しか扱いません」と宣伝するのです。
これは、より安心を求める消費者の求めに応じようとするものです。

排気ガスの少ない自動車や消費電力の少ないテレビが、消費者に喜ばれるのと同じです。これはよいことですよね。
ところが、農水産物の場合は、少し事情が異なります。水揚げされた80ベクレルの魚は、スーパーに引き取ってもらえなくなります。水産業としては困るのです。

さて、ここからがマイケル・サンデル教授の出番です。
あなたが、スーパーの店長だとします。あなたの弟が被災地で漁師をしていて、「兄貴、80ベクレルの魚を買ってくれ」と売り込んできたらどうしますか。もちろん、原発事故以前は、その魚を買い付けていました。
さらに、隣のライバル商店が、「国の基準より厳しい自主基準」を売りにしている場合は、どうですか。

(注)大手スーパーのイオンでは、主な食品を50ベクレルとしています。農林水産省では、業者が自主検査する場合も、国の基準に従うことを求めています(平成24年4月20日通知)。

インターネットに依存した社会への攻撃

2012年3月3日   岡本全勝

リチャード・クラーク+ロバート・ネイク著『核を超える脅威 世界サイバー戦争  見えない軍拡が始まった』(2011年、徳間書店)が、勉強になりました。
ハッカーによるインターネットへの不正な侵入や、フィッシングなど、新しい犯罪が多発していることは、よく知られています。それが、国家や社会に対する大がかりな攻撃になったらどうなるか。
インターネットに依存する社会になったことから、ミサイルや爆撃機を使わなくても、また兵士を戦場に動員しなくても、相手国に多大な被害を与えることができます。すなわち、国防では防空システムや軍隊の運用システム、兵站補給などのコンピュータ・システムに侵入し、混乱させるあるいは無能力な状態におけばよいのです。
軍隊のシステムに侵入しなくても、大手のインターネット・プロバイダや基幹通信網に侵入し、混乱させることで、情報通信で成り立っている経済などを大混乱に陥れることができます。
また、航空機の航空管制、新幹線などの運行管理システム、電力の監視システム、銀行の決済システムを混乱させるだけで、大事故が起こり、日常生活はほぼ壊滅します。一発の爆弾を落とさなくても、原爆を落とした以上の、あるいは東日本大震災並みの大被害を、全国や全世界にもたらすことができます。

やっかいなのは、敵国の軍隊だけでなく、市井のハッカーでも、この攻撃ができることです。そして、世界のどこからでも、攻撃できます。これまでの戦争や大がかりな犯罪は、必ず大きな基地やアジトがあって、目に付きました。偵察衛星や偵察機で、発見できたのです。しかし、どこかのマンションの1室で「こつこつと」不正なプログラムを組んでいる犯人を見つけることは不可能ですし、彼はどこか他国のコンピュータを乗っ取って、攻撃してくるのでしょう。攻撃が「安価に」できるだけでなく、防御が大変なのです。
ご関心ある方は、ご一読ください。いわれてみればなるほどと思うことですが、驚愕の事実です。「想定外だった」という言い訳は、許されませんね。
私は、政府や社会のリスク論に関心があって、勉強していたので、読んでみました。うーん、この連載も、危機対応(大震災対応)の現場に駆り出されて、中断したままです。反省。

空き屋対策

2012年2月29日   岡本全勝

「日経グローカル」1月23日号が、空き屋対策を特集していました。
総務省の調査では、人の住んでいない空き屋は、全国で757万戸、住宅全体に占める割合は13%だそうです。かつて土地と家屋は、第一の財産でした。しかし、地方では過疎化が進み、都会でも相続人がいなくて、空き屋が増えています。
今年の冬は積雪が多く、雪下ろしをしないと、積もった雪の重みで家が倒壊することも起きています。防犯や防火の観点からも、危険です。もちろん、景観も損ねます。
各地の自治体が、知恵を出して対策を講じています。土地を寄付してもらう代わりに、自治体が古家を取り壊すとか。時代が変わると、地域の課題も変化するという例の一つです。

送り出す際と受け入れる際の、使い分け

2012年2月22日   岡本全勝

2月18日の日経新聞夕刊、宮島喬お茶の水女子大名誉教授のインタビュー「築こう多文化社会」から。
・・バブル期の労働者不足を補うため、日系人の受け入れが決まった。受け入れるなら日本人労働者と平等にと思い、見守っていましたが、そうならなかった。多文化共生という言葉には、対等な関係を築くという響きがある。でも日本では、ほとんどの大企業が日系人を直接雇用しなかった。受け入れたのは、中小や下請け企業。それが対等の受け入れにならなかった原因です。日系人は、派遣や契約社員など非正規労働者になってしまった。ドイツのフォルクスワーゲンもフランスのルノーも、自社の生産ラインに移民を受け入れていました・・
・・日本は米国や南米などに、大量の移民を出してきた。それだけに戦前、米国で排日移民法が成立したときは、日本の世論が激高した。それなら日系人などが日本で働きたいと扉をたたくとき、自分たちの過去を思い、温かく迎えても良いのにと思います。送り出し国は、伝統的に受け入れの姿勢ができていない・・