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「東日本大震災 復興の教訓・ノウハウ集」

復興庁が「東日本大震災 復興の教訓・ノウハウ集」を取りまとめ、発表しました。「教訓・ノウハウ編」(238ページ)と「事例集」(285ページ)の2冊です。いずれも大部です。
まず「教訓・ノウハウ編」冒頭のマトリックス(p4~p7、pdfでは9枚目から12枚目)をご覧ください。
・「被災者支援」「住まいとまちの復興」「産業・生業の再生」「協働と継承」の4つの分野で、
・時系列(応急期、復旧期、復興前期、復興後期)に分けて、
項目を整理してあります。これは見やすいです。
そして本文(各項目)では、
・課題を提示し、状況と取り組みを説明し、教訓・ノウハウを示してあります。

東日本大震災(津波被害)では、被災者支援から始まり、住まいとまちの復興、産業・生業の再生、コミュニティ再建にまで支援を広げました。施設の復旧だけでなく、町や暮らしの復興にまで及んだのです。そして、行政だけでなく、企業やNPO、住民などとも協働しました。冒頭のマトリックスを見ていただくと、それが一目瞭然になっています。
後輩たちが、良い資料をまとめてくれました。

各府省や各局も、1つの仕事を終えたら、このような成果物をまとめて欲しいですね。特に内閣官房に置かれる各種本部は、使命を終えると廃止されるので、記録を残す、それも次に役立つ資料をまとめることが重要です。今の時代は、それをインターネットで簡単に調べることができるのです。

報道にたくさん取り上げてもらいました。目次

3.11から10年の節目を迎えたこともあり、大震災の復興に関して、新聞やテレビにたくさん取り上げてもらいました。ありがたいことです。
私たちが何をしたか、何に気を配ったか、何ができたかを広く伝えるとともに、何ができなかったか、次回への教訓は何かを整理し伝える良い機会でした。役所も記録を残すのですが、広く国民や関係者に伝えるには、報道が一番です。

このホームページで、その都度報告しましたが、取り上げてもらった記事や報道を並べておきます。これで、ひとまず一段落です。「ホームページの分類、復興10年」につけておいたのを、再掲して更新しました。

朝日新聞「官邸の怪人、「民」と出会った衝撃 復興の現場で」(2020年10月11日)
朝日新聞インタビュー「ミスター復興が語った後悔と成果」」(12月10日)
打ち破った前例踏襲主義 霞が関のミスター復興に聞く」(2021年2月9日。12月10日と同じ)
福島民友インタビュー「政府の力が試された」」(2月18日)
NHKクローズアップ現代に出ました」(2月25日)
北日本新聞に載りました。「被災地支え続けた岡本全勝さん」」(3月5日。これは共同通信社の配信なので、いくつかの地方紙に載っています。3回連載です)
日経新聞1面「復興の哲学を変える必要があった」」(3月9日)
毎日新聞「人口減 議論足りず反省」」(3月10日)
公明新聞に出ました」(3月16日)
NHKウエッブサイトに載りました」(3月18日)
河北新報に出ました」(3月25日)
朝日新聞夕刊に出ました」(3月26日)
毎日新聞対談に出ました」(3月28日)

(講演など)
朝日新聞シンポジウム(1月21日)
世界銀行セミナー(3月18日)

大震災10年目に考えた成果と課題、目次

3.11から10年の節目を迎え、新聞などの取材をたくさん受けました。記者さんから鋭い質問をされると、私も頭の整理ができました。また、一般の方に理解してもらうために、なるべく簡単にお話しするようにすると、ますます考えが整理されました。
10年近く、責任ある立場で復興に携わりました。その経験から、成果と課題を伝えることは責務でもあります。

他方で、私以外にそのような職員がいないことも、気になります。公務員は数年で異動をすることが慣習になっていますが、何か工夫はできないのでしょうか。特に、原発事故側に全体を話す人がいないことは、大きな問題です。
一人で話す人がいない(通常はそうです)場合は、組織として成果と課題を取りまとめるのでしょう。関係者がどんどんいなくなり、記憶も薄れます。10年はその限界だと思います。

10年の評価や教訓について書いた記事を、並べておきます。「ホームページの分類、復興10年」につけておいたのを、再掲して更新しました。

復興事業の教訓」(2021年1月26日から4回)。人口の減少、過大な事業批判
日経新聞、大震災復興事業の検証」(2月9日から3回)。予算、産業再建など
復興事業の教訓、集落の集約」(2月12日)。漁港など分散した集落の集約案
復興政策、終わってからの教訓」(2月14日)。今後の人口減少下での復興
提言、原発事故復興基本法案」(3月3日から2回)。残っている原発事故からの復興について
町の復興、高台移転とかさ上げの違い」(3月24日)。住宅団地の建設と中心街の復興との違い

地域づくり、3つの意味

大震災からの復興で、町の復興には、インフラ復旧だけでなく、産業と生業の再建、コミュニティ再建が必要だと、私はくり返し主張しています。「町づくり」と言っても、道路など都市施設と住宅を造るだけでは町にならず、そこに住民の暮らしが成り立つようにするのが町づくりです。「町のにぎわいの3要素

その点で、興味深い事例を教えてもらいました。厚生労働省の社会福祉施策です。
社会福祉法を改正し(2017年、2020年)、支援を必要とする人たち(高齢者、子ども、障害者、生活困窮者など)に対し、地域で包括的な支援体制を作ろうとしています。
そこに、「地域共生社会」「地域づくり事業」が出てきます。地域づくり事業とは、世代や属性を超えて住民同士が交流できる多様な場や居場所を整備することです(社会福祉法第 106 条の4第2項 第3号)。厚労省資料「社会福祉法の改正趣旨・改正概要」43ページほか。
ここでは、地域づくりが、公共インフラでなく、人のつながりになっています。菊池馨実著『社会保障再考〈地域で支える〉』(2019年、岩波新書)

地域おこしとして、多くの地域で町の活性化に取り組んでいますが、それらは産業振興が主です。まち・ひと・しごと創生法が、「それぞれの地域で住みよい環境を確保」することを目標とし、「まち」を「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形」としました。
さらに進んで、社会福祉法では、住民のつながりが掲げられました。ここに、地域づくりについて、インフラ、産業、コミュニティの3つの面がそろいます。