「政治の役割」カテゴリーアーカイブ

行政-政治の役割

政治主導の負の作用

4月26日の朝日新聞オピニオン欄「保育政策、いま国に言う」、無藤隆さん(保育学者)の発言から。

・・・日本は欧米諸国と比べ、保育士1人あたりが見る幼児の数が多いことは事実です。12年に自民・公明・民主の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」で、こうした配置基準の改善など保育の質について3千億円超を確保することが努力義務とされました。しかし、いまだに実現されていません。

その大きな理由は、幼保無償化ではないかと思います。17年、解散総選挙に踏み切る際に安倍晋三元首相が、消費増税分を使って行うと突然打ち出しました。私たち保育関係者ばかりでなく国の担当者にも驚きであったでしょう。結果、年約8千億円を割くことになり、保育にさらに予算をつける要望をする際の障壁となったことは否めません・・・

負担増はいや

4月10日の朝日新聞に世論調査結果が出ていました。「負担増「よくない」60% 「異次元の少子化対策」財源 朝日新聞社世論調査

・・・ 8、9日に実施した朝日新聞の世論調査で、政府の少子化対策の費用にあてるために国民負担が増えてもよいかを尋ねたところ、「増えるのはよくない」が60%で、「増えてもよい」の36%を上回った。岸田文雄首相の唱える「異次元の少子化対策」の実現には膨大な財源が必要となるが、国民負担の行く末には厳しい視線が注がれている・・・
・・・防衛費の大幅な増額と、そのために1兆円の増税をする方針への賛否も尋ねた。防衛費の増額は賛成41%、反対50%と割れたのに対し、増税方針には反対68%が賛成26%を大きく上回った。防衛費増額に賛成の人でも、増税には4割が反対と答えた・・・

では、財源はどこから調達するのでしょうか。

8割の国が複数国籍を容認

4月6日の日経新聞1面連載「人口と世界 逆転の発想4」は「複数国籍、8割近くが容認 高度人材獲得の選択肢」でした。

・・・移民が人口の1割超を占めるドイツで、国籍法改正が議論されている。欧州連合(EU)圏出身者らに限っていた複数国籍を、非EU圏出身者にも認める内容だ。連立与党で広報担当を務める「緑の党」のラムヤ・カドア連邦議会議員は「多くの人がハイブリッド(複合的)なアイデンティティーをもっている。祖国は一つしかないという考え方は完全に時代遅れだ」と説明する。
2022年の出生率が0.78と世界最低水準だった韓国も11年に国籍法を改正し、複数国籍を認めない「国籍唯一の原則」から転換した・・・

図が載っています。
複数国籍を完全に容認するのは、アメリカ、イギリス、フランスなど約90か国。
国内の外国人にのみ容認するのがマレーシアやタイなど約20か国。
国外の自国民にのみ容認するのがベトナムやイスラエルなど約30か国。
認めないが日本や中国、インドなど約40か国です。

アメリカ大統領の起訴

4月6日の朝日新聞「異例の前大統領立件、背景は」から。

・・・米大統領経験者として初めて起訴されたトランプ前大統領は、34件の「重罪」に問われた内容を全面的に否認した。検察官が立件に踏み切った背景には何があるのか。かつてクリントン元大統領の捜査に携わった米ジョージ・ワシントン大のポール・ローゼンツワイグ非常勤講師に、政治捜査の舞台裏を聞いた・・・

――米国では大統領経験者への起訴はありませんでした。なぜでしょうか。
最も明白な理由は、過去の大統領のほとんどが、起訴されるようなことをしていないためです。もう一つの理由は、間違ったことをした大統領たちは、交換条件に合意したことでしょう。暗黙の了解として、刑事責任を問われない代わりに、政界や公職からの引退に合意してきたのです。
ニクソン大統領はウォーターゲート事件で辞任し、特別恩赦を受けました。クリントン大統領も起訴されませんでしたが、(大統領退任後は)妻ヒラリー氏が出馬するまで、政界から遠ざかりました。
トランプ氏はどうか。表舞台から礼儀正しく退いたわけではない。それどころか、大統領に再び復帰しようとしています。

――かつてクリントン氏の捜査を担当しましたね。
クリントン氏が不倫をめぐってウソをついたとして、捜査を要請されたのです。結局、彼は刑事訴追されないための取引の一部として、大統領任期の最後の日に非を認めました。弁護士資格を返上し、民事上の罰金を支払うことに同意したのです。検察官は十分だと判断し、クリントン氏に訴追しないと告げました。

――米国では現職の大統領は起訴されない決まりがありますね。
司法省は、現職大統領を起訴しないと明言している。これは、司法省の法律顧問室の公式な意見として記されています。

――では、元大統領についてはどうでしょうか。
起訴しないという規定はありません。むしろ、退任後は起訴される可能性があるという点こそが大事です。たとえ大統領在任中の行為であっても、退任後には刑法の適用を受ける。だからこそ、現職大統領のうちだけは免責することが許されるのです。

忘れられた成長の「約束」

3月30日から日経新聞が「検証 異次元緩和10年」を始めました。
・・・10年にわたって異次元緩和を進めてきた日銀の黒田東彦総裁が4月8日、退任する。発行済み国債の半分以上を日銀が買い上げ、長短金利を押し下げてきたが、目標とした賃上げを伴う物価上昇の実現はいまだ道半ばだ。日銀と共同声明(アコード)を結んだ政府の成長戦略も十分だったとは言いがたい。日本経済をどう押し上げていくのか、実験的な金融政策の総括が必要となる・・・

第1回の「忘れられた成長の「約束」 日銀頼み空転で実質賃金5%減 政府、経済構造変革せず」から。
・・・金融緩和に消極的な白川氏から黒田氏に総裁が代わり、円相場は就任時の1ドル=90円台から2年で120円台まで下落。日経平均株価も1万2000円台から2万円台に上昇した。
ただ、異次元緩和が「虚像」だった面も否めない。緩和開始時の長期金利は0.6%前後で、現在の日銀の許容上限である0.5%と大きくは変わらない。国内銀行が融資する際の約定平均金利(新規)は1%から0.7%に下がったが、長く緩和を続けてきた日本に金利の低下余地はほとんど残されていなかった。

実体経済への影響も鮮明とはいえない。22年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は546兆円で、異次元緩和前から5%伸びた。戦後2番目に長いアベノミクス景気が実現したが、年率では0%台という低成長から抜け出せなかった。
民間企業の設備投資が16%増えたが、家計の最終消費支出は2%減った。賃上げは広がらず、成長のエンジンである個人消費は低迷した。22年の実質賃金(指数、従業員5人以上の事業所)は13年から5%減少した。
共同声明はなぜ成長押し上げにつながらなかったのか。とりまとめを政府側で担当した松山健士元内閣府次官は「日銀は合意に沿って最大限努力してきた。成長力や格差など政府に課題が多く残っている」と語る・・・

・・・科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2022」によると、日本の研究開発費総額は17.6兆円。米国(71.7兆円)、中国(59.0兆円)に続く主要国中3位だ。しかし、00年からの研究開発費の伸び(実質額ベース)は中国の14.2倍、韓国の4.6倍、米国の80%増と比べ、日本は30%増と見劣りする。
経済の実力を示す潜在成長率は10年間で0.9%から0.3%まで下がった。1人当たりGDP(購買力平価ベース)は17年にイタリアに抜かれて主要7カ国(G7)の最下位に転落。18年に韓国に逆転された。低金利下で低収益企業が温存され「生産性を引き上げる経済の新陳代謝が起きなかった」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)・・・