28日の産経新聞に、岡本行夫さんが「インド洋に補給艦戻せ」を書いておられました。前半部分は、HPでも読むことができます。私は外交防衛には疎いので、勉強になりました。
イラクでの戦いと違い、アフガニスタンでの戦いは、文明がテロから自衛する闘争であること。
アフガンへの関与には、危険な順から、1アルカーイダ・タリバン掃討作戦(不朽の自由作戦)、2国際治安支援部隊(ISAF)、3地方復興チーム(PRT)、4インド洋海上阻止活動(MIO)がある。1はまさに戦い、2は治安維持支援だけどテロリストの標的になっている。3も護衛部隊がつくように危険、4は比較的安全。そして、日本がやっていた洋上給油活動は、これらの欄外にある、超安全な活動であること。
世界から40か国が参加しているが、危険な行為は他国に任せ、日本は安全な活動しかしなかっただけでなく、それも中断してしまいました。さらに、日本人の安全確保を、他国の軍隊に頼っているのです。
1991年の第1次湾岸戦争時に、金だけ出して他国から批判を浴びたことに比べ、日本は人を出しての貢献をするまでになりました。しかし、まだ「世間並みの付き合い」はできていません。
カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割
行政-政治の役割
地域振興と国家行政機構
高松での地方版経済財政諮問会議に出席して、いくつかのことを考えました。
地域の経済振興を考えることは、地方自治体の仕事でしょう。しかし、現在のような国内での大きな不均衡が生じると、中央政府としても放っておけなくなります。しかし、各省にはそれを担当する部局がありません。総務省(旧自治省)は、主に地方制度と税財政です。国土交通省は、道路などのインフラ整備が主です。経済産業省は、中小企業などを所管していますが、各地域ごとの産業対策までは手が回っていないようです。農業は農水省の所管ですが、農業はGDPに占める割合が1%(従業者で4%。訂正します)でしかなく、農業振興では地域経済は支えられません。いずれにしても、「地域の振興」を総合的に所管する部局はないようです。
かつては、国土庁に地域振興局がありました。それがどれだけ機能したかは別として、今あれば、そこが主たる任務を担うと思われます。道州制になれば、中央政府でなく各道州の責任になるでしょう。
次に、地域の経済状況を、中央政府に吸い上げる機関がありません。それぞれのデータは、各省の系列で本省に上がっているのでしょうが。各省の出先機関は、中央で決めたことを実行する、あるいは地方自治体に伝達する機関であって、情報を吸い上げる機関ではないのです。
これまでは、地域間に差がありつつも、地方もそこそこに経済が発展しました。また、高度経済成長期には、人口が工業地帯に大移動することで、格差を吸収しました。組立型工場も、地方へ進出しました。中央政府は、公共事業、農業保護で「国土の均衡ある発展」を達成できました。そして、国庫補助金と地方交付税とで、地方自治体の財政力も平均化しました。
農業保護が行き詰まり、工場がアジアへ流失し、近年第二の失業対策としての機能を担っていた公共事業が削減されたことで、この仕組みが成り立たなくなりました。そして、日本全体がマイナス成長・低成長になることで、新たな成長産業を持たない地方の疲弊が目立つようになりました。
もっとも、かつてもエネルギー革命で、山村での炭焼きの暮らしが成り立たなくなり、石炭から石油への切り替えで、炭坑が成り立たなくなりました。それらも、経済成長はかなり吸収したのです。対応できなかった部分が、今になって、山村での限界集落、夕張などの旧産炭地の疲弊となって表れています。
コメ市場開放と農業強化
23日の朝日新聞「変転経済」は、辻陽明記者による「コメ市場開放」でした。
・・世界の貿易ルールづくりをめざす多角的貿易交渉「ウルグアイ・ラウンド」(1986~94年)で、日本はコメ開国を迫られた。このとき部分開放で逃げ切った日本は、農業の体質強化を怠ってきた・・
コメは聖域として、「一粒たりとも入れるな」がスローガンでした。1993年、細川内閣(非自民連立内閣)が、コメの部分輸入自由化を受け入れました。外圧によってです。最低輸入量を、国内消費の8%に増やすという内容です。農業団体が、当時の社会党本部にデモをかけてきたのを、覚えています。当時私は、自治大臣(社会党)の秘書官でした。党本部の職員が、「今まで、さんざん自民党を応援しておいて、こんな時だけ社会党に来てもねえ・・」とぼやいていました。
その後、最低輸入量制度はやめ、700%という高関税に切り替えました。また、農業を強くするために、「ウルグアイ・ラウンド対策予算」が組まれました。総額6兆円という、巨額なものです。記事の中にも出てくるように、多くは農業土木に投入されました。しかし、日本の農業が強くなったとは聞きません。このような予算・事業こそ、成果を評価する必要があります。
ある記者によれば、日本の農政問題は次のようなものです。
日本の農政は、兼業農家を保護したが、農業は強化しなかった。日本の農業問題は、コメでも作物でもなく、農地である。農地は宝くじであると、農家は思っている。つまり、一度目は農地解放で、小作地がただ同然で手に入った。二度目は公共事業や宅地化で、当たると高く売れた。これからも、このような宝くじに当たらないか待っている。だから手放さないし、貸しもしない。兼業農家にとって、農地は生産の資本でなく、売るための資産である。農地解放の記憶があるから、貸すと今度は逆に取られると思っている。
農家の半数以上が、65歳以上である。新たに農業に取り組む青年は少ない。そこで、あと10年もすれば、農業問題は「なくなる」。冷たい言い方だが、こうなる。毎年の新規農業従事者数より、農水省・自治体の農業部門・農協の新規採用職員の数の方が多い。この人たちは大変だが。
なるほどねえ。と、納得していては、だめなんですが。食料・農業・農村白書で調べたら、新規学卒就農者は2,500人で、39歳以下の新規就農青年は1万2千人でした。2,500人ということは、47県で割ると、1県当たり50人ほどですね。1,800市町村だと、1町に1人ちょっとです。農業高校や農業大学・農学部の卒業生って、農業には就かないのですね。保護される・保護が必要ということは、魅力がないということなのでしょう。何か途を間違ったようです。
論文紹介
「日本政治研究」第2巻第2号(2005年7月、木鐸社)に、木寺元君の「地方制度改革と専門家の参加」が載りました。近年の大きな地方制度改革(市町村合併と地方財政改革)がなぜ進んだか、その際に専門家の参加が重要だったことを分析した論文です。
政治家や自治官僚にとって利益にならない改革が進んだ要素として、「アイデアの力」と、それが専門家を通じて実現したということです。専門家の参加として、地方分権推進委員会と経済財政諮問会議を挙げています(地方分権推進改革会議は別)。
一時進まなかった市町村合併が、近年動き出した要因(アイデア)として、次のようなことを指摘しています。すなわち、シャウプ勧告の「市町村優先の原則」が、その後、国・県・市町村の「機能分担論」に置き替えられ、市町村が決められた事務の実施に「閉じこめられたこと」。それが、「補完性の原理」によって、市町村優先主義・市町村を総合行政主体とする方向に転換したこと。この分析は興味深いです。
地方財政改革(主に地方交付税改革)については、経済財政諮問会議の民間委員の役割が指摘されています。これら専門家の参加は、従来の審議会への参加を越えた働きをしているというのが、論文の主旨です。またそれは、これらの政策が不人気な政策であって、政治家はできるだけ決定を行わない「避難回避の政治」だからという指摘もあります。なるほどと思う指摘です。地方制度改革だけでなく、そのほかの政策についてもこの観点から、なぜ進まないか・進んでいるかを分析してほしいです。
「日本には地方自治に関心を持つ関係者が多数いて、その関係は政策共同体と呼ぶにふさわしい。この問題に関する数多くの月刊誌や書物がこの共同体の存在を物語っている」ことも紹介しています。そうなんです。行革や公務員改革などを議論するときに、このような政策共同体や媒体がないんです。
私の論文も、多く引用していただきました。木寺君は、私が東大大学院に教えに行っていた時の、塾頭の一人です。お礼を含めて、紹介しておきます(2005年9月11日)
13日の読売新聞は、見開きで日本地図を載せ、各県別の郵便局密度と今回の投票結果を分析していました。面積当たり郵便局の多い都市部の県では、自民党が得票を伸ばし民主党は減らしました。一方密度の低い地方部では、自民党も民主党も得票率を減らしています。
面積密度で比べるのが良いのか、人口当たり密度で比べるのが良いのか。また、無所属の候補者(郵政反対派)をどう数えるのか、といった問題はありますが、良い企画だと思います。引き続き、今回の選挙結果の分析を期待しましょう。単に、有識者の座談会で終わらせずに。(9月14日)
日本経済団体連合会は、9月20日に「平成18年度税制改正に関する提言」を発表しました。今回も、第一に税財政の抜本改革を主張する中で、2007年度を目途に消費税を10%に引き上げ、その後も段階的に引き上げることを提言しています。何度か書きましたが、日本で最大の納税者集団(?)が増税を訴え、政府はまだだと言う、不思議な構図です。