カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

日本のソフトパワー

9日の東京新聞「時代を読む」で、ジェラルド・カーチス教授が、日本のソフトパワー外交について、次のような趣旨を書いておられました。
日本の伝統的外交は、世界に関する情報の収集に偏っており、日本の情報を世界に発信する重要性を認識していない。日本の国際交流基金は、イギリスのブリティシュ・カウンシル、ドイツのゲーテ・インスティチュート、中国の孔子学院に比べて、職員や海外拠点の数ではるかに劣る。日本のソフトパワーを広めるのに成功したプログラムに、JETプログラムがある。JETプログラムは外国人青年を日本に招き、小中高校で英語を教えたりする。将来への投資であり、費用をはるかに超える価値を持つ。

都市の統治

喜安朗著「パリ-都市統治の時代」(岩波新書、2009年)を読みました。パリという町が、王政の支配下に入り、さらに革命を経て、近代的国家の支配に引き継がれる過程を、描いています。
絶対王政が、分立していた権力を統一します。それは、都市においても同様です。本書では、別に、警察の強化という観点から、都市の統治を描きます。
さらに、そのような権力の視点だけでなく、地図の作成(都市の現状把握)、都市改造、上下水道整備、貧困層の調査など、行政サービスや機能を通じた都市の統治も描かれます。
また、いったん解体された中間集団が、再度復活して社会が安定することも、描かれています。もちろん中世的ギルドではなく、新しいアソシアシオンという形です。
都市の統治を、様々な観点から論じた、興味深い本です。新書ですが、読解するには少し力が必要な本です。

政府の売り込みと、企業の売り込み

24日の読売新聞に「地デジ、日本式南米攻略」という記事が出ていました。南米主要5か国、3億人市場で、日本方式の地上デジタル方式が採用されたのです。政府が、熱心に売り込んだことは、先日(9月28日の項)紹介しました。しかも、先行していた欧米方式を巻き返したのです。
・・「外交的には日本規格が勝利を収めた希有な例」(在ブラジル日本大使館の臼田昇1等書記官)となった・・・
ところが、記事にも書かれている通り、テレビの売上げでは、韓国が60%のシェアを占め、日本製は20%でしかないのです。

佐々木毅先生・衆参ねじれ、国会動かす改革協議を

19日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅先生の「衆参ねじれ、国会動かす改革協議を」でした。
・・言うまでもなく、政党政治は政党間の競争を大原則としつつ(それを通して国民に選択の可能性を与えつつ)、他方で統治能力も実証しなければならないという独特の構造を持っている。競争がなくなれば大政翼賛会的状況になるし、「動かない政治」では統治能力は麻痺してしまう・・
旧来のノウハウに囚われることなく、どうしたら政治を動かすことができるかという問いに、与野党は答えなければならない。端的に言えば、それは与野党全面対立と大連立との間の中間領域の開拓にほかならない。
「動かない政治」を現出している最大の原因は、国会運営についての固定観念を改めようとしない政党政治家たちの怠慢にある。彼らはほとんど何の努力もしないのみならず、しばしば根拠のない議論を動かしがたいものと(時には、わざと)誤解し、自縄自縛状態を作り出している・・
詳しくは、原文をお読みください。

野党の役割

11日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅先生の「全面対決と大連立の間」でした。
・・民主党が参院選で勝利した「にもかかわらず」というよりは、むしろ勝利した「ために」、民主党は与党との不断の接触、責任の分有を求められることになった・・。与党が衆参両院で多数を支配していた時期には、こうした厄介な関わりに巻き込まれる必要はなかった(野党が全面対決姿勢でも与党は困らなかった)。
与野党全面対決では国会は動かなくなり、政治は停滞する。他方、今のままでの大連立ということになれば、政治から競争が消え、結局のところは政治は生気を失ってしまう、今回の出来事から考えさせられるのは、与野党全面対決か大連立しかないのかという素朴な疑問である・・
政党政治の工夫のしどころは、むしろ全面対決と大連立という両極の間でさまざまな競争の場面をつくり、必要に応じて妥協や協力をさまざまな段階で演出することにある。もちろん、目指すところはそこでの自らの得点である。
全面対決か大連立かという発想しかないということは、こうした発想能力と演出能力が、極端に貧困であるということにほかならない・・