朝日新聞9月17日1面「危機の政党」曽我豪編集委員の「選挙偏重から抜け出せ」に、次のような記述があります。今回の民主党代表選挙結果についてです。
・・国民が期待する答えは、そこではない。選挙制度改革、官邸機能強化、脱官僚。政治再生の方策は多々繰り出されたが、今や権力をつくり出す政党の仕組みと作法のチェンジが必要な時代に移った・・
そうですね。1990年代前半に日本の政治のエネルギーの多くをつぎ込んだ選挙制度改革は、16年前に実現しました。そしてその後、「2大政党+その他の党」体制を生み、ついに1年前に、実質的には半世紀ぶりの政権交代を生みました。
官邸機能強化は、橋本行革、省庁再編、小泉政権で、いくつかの制度化と運用の成果を生みました。もっとも、官邸機能強化は、その時々の総理大臣と官邸の運用によるところが大きいです。それはまた、各省や党がどのような抵抗をするかにもよります。そして、脱官僚・・。
この1年で、政権交代だけでは、国民の期待する政策が立案され実行されるわけではない、ということが見えました。次の課題として、政党内での政策の集約と、大臣及び総理候補者の育成が、課題として浮かび上がりました。
民主主義とは、このようにして、一歩一歩進んでいくものなのでしょう。
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政治の限界、国民の支持
7日の朝日新聞「耕論・混迷の政治」、山崎正和さんの発言から。
・・グローバル化が進んで、一国の政治にとってはできることが小さくなっているのに、国民の期待は大きい。
・・冷戦期、日本は国内にも55年体制という対決の構造があった。大枠が決まっているから、逆に政権は政策の独自性を出しやすい。池田勇人内閣の所得倍増も、佐藤栄作内閣の沖縄返還も、政府が自分で行動したり自分で米国に働きかけたりして、結果を出せるテーマだった。
ところが冷戦が終わり、グローバル化が進むと、政府やリーダーができることが著しく小さくなってしまった。時代の大きな枠組みが変化した。金融、特にサブプライム問題は象徴的だ。状況は深刻なのに、どの政府も有効な手が打てないでいる。
「時の政権担当者はどうするのですか」という問に対して。
自分たちの権力を維持し国民の支持をつかむために、いわば「虚」のテーマ、実体の薄い課題を大きく取り上げ、ニセの対決を作る。平たく言えば劇場型政治だ。小泉元首相の発明ではない・・現代は虚の政治テーマを作りうる人物だけが、強いリーダーになれる時代だ・・
「今後の政治に期待できることは」という問に対して。
強力なリーダーシップではなく、調整型を地道にやってもらうことだ。今は矛盾する課題が多く、あれかこれかでは決められない。面白くしようと劇場型になっても困る・・
国際金融危機に学び備える
9月3日の日経新聞経済教室ゼミナールが、金融危機後の規制・監督改革の世界的取り組みを、整理していました。今回の世界金融危機・世界同時不況では、先進各国の協調が求められ、結構うまくいきました。1929年の大恐慌の再発にならなかったのは、そのおかげです。しかし、再発を防止するためには、各国が対応する(金融規制と経済政策)だけでなく、世界規模での対応の制度化が求められたのです。
それが、G20(20か国・地域首脳会議)であり、金融安定理事会(FSB、金融安定化フォーラムを改組)です。FSBは、銀行・証券・保険の各分野の規制・監督のあり方や国際会計基準に関する総合調整を行っているそうです。
国境を越えて動く金融に対して、国家を超えて規制しようとする試みです。世界政府への道のりというのは、評価しすぎかも知れませんが、重要な進展だと思います。危機に遭遇するたびに、人類は進化するという例です。
農業問題は農地問題
28日の日経新聞経済教室は、神門善久教授の「食料自給率向上は的外れ」でした。世界の肥満人口は10億人を超え、飢餓人口を上回るのだそうです。
・・日本が食料自給率を高める理由として、欧州、特に70%まで引き上げた英国の例がよく引き合いに出される。しかしこの裏に、前述の多額の農業助成金があったことを忘れてはならない。助成金はモルヒネのようなものであり、国内農業はますます助成金依存の脆弱体質になり、かえって国内農業は不安定になる。アジア太平洋地域でリーダーシップをとるべき立場にある日本が、自国の食料確保だけを考えることの副作用がどんなに大きいか、思いをはせるべきだろう。
・・すなわち、日本がめざすべきは、食料自給率の向上ではなく、食料の安定確保に向けて、相互に輸入・輸出しあう構造を構築し、農産物貿易の厚みを増すことだ。
・・日本の農業の真の危機は、食料自給率の低下ではなく、農地利用の崩壊にある。農業的にも環境的にも価値が高い平場の優良農地が、耕作放棄や蚕食的転用などで荒廃している。皮肉なことに、優良農地の保護を名目とした財政支援はさまざまに支給されている。
ところが、国土が狭い日本では、平場の優良農地ほど住宅や商業施設の建設候補地として狙われ、こうした農外転用がけた違いの利益を農地所有者にもたらす。農外転用規制をはじめとした農地利用に関する法制度の運用がずさんで、関係者の政治力次第では諸規制が有名無実化されるため、農地本来の利用がなされず、農外転用を当て込んだ農地保有がまん延。農業にたけたものに農地が集積するという通常の市場機能が働かず、農業が沈滞化している・・
高負担納得の理由
27日の朝日新聞「北欧に学ぶ、スウェーデン」から。
・・スウェーデンでは、確定申告が納税の基本だ。簡単な申告を可能にしているのが、生まれた瞬間に与えられる住民登録番号である。
企業など雇用側が払った給与や差し引いた保険料などを税務署に伝えるほか、金融機関も預金や株式売買による収入などの情報を、税務署に報告する。税務署がこれらをまとめて税額を計算し、国民は年度末に税額を計算し、自分のデータに間違いがないかを確認するだけ。
・・高負担を納得してもらうための一つの答が、地方分権だ。農村と都市、若者が多い町と高齢者が多い町ー地域事情にあった施設やサービスがあれば、それだけ満足度が増し、負担感は薄れる。
国、県、市町村が、役割を分担する。高齢者介護や障害者ケア、乳幼児保育などは市町村が、病院での医療は県が受け持つ。国は外交や防衛のほか、雇用や教育、住宅政策を担う。役割に合わせて、税源が地方に移された。
ウオメ大学のユナス・イドルンド助教授は「透明性が高いので、国民が仕組みを理解している。だから、選挙でむやみに減税を叫ぶ政党を、市民は怪しむ。そういう政党は、たいてい負けている」と言う。