カテゴリー別アーカイブ: 官僚論

行政-官僚論

公務員の業績評価

霞ヶ関では、国家公務員の人事評価(目標による評価)の時期です。年に2回、3月末と9月末が基準日です。能力評価と業績評価の2つについて、自己申告をし、上司の評価を受けます。私も、提出しました。
私の場合は、達成したかどうかの業績評価をするために、その前に何を達成すべきかの目標を作ることが一番の仕事です。これまでにない仕事をしているので、職員が困ったり手戻りがないように、適切な課題=仕事を設定することです。それが間違っていると、いくらその目標を達成しても、世間からは良い評価をもらえません。
業績評価のための項目を書き出し、「こんな項目でよいのかなあ」と、部下職員に確認してもらいました。
目標による評価は、結構面倒ですが、自らの仕事について、考え直す良い機会です。さらに、仕事の目標について、上司と議論し共有できる良い機会です。これまでも、部下の自己申告を読んで、「おいおい、それば違うだろ。重要な仕事は××だよ」ということが、何度かありました。部下に対し、的確な指示をしてなかった私が悪いのですが。

政策思考力を養う

北海道大学の宮脇淳先生が、『政策を創る!考える力を身につける!「政策思考力」基礎講座』(2011年、ぎょうせい)を、出版されました。中央政府の職員にも、地方政府の職員にも、新しい課題に対し、政策を考えることが要求されます。
何度も書いていますが、先進諸国に学び、政策を輸入する時代は、とっくの昔に終わりました。例えば、世界一の高齢国になった日本に、お手本はありません。地域の産業をどう振興するか。課題は、地元にあります。
自治大学校などでは、いわゆるケーススタディで、具体的な課題について、どのように対策を考え実行に移すかを、練習してもらっています。
宮脇先生の新著は、ケーススタディではなく、その前に必要となる基礎力を養うものです。例えば、「全体の議論をしているはずなのに、個々の詳細な細部の議論に終始してしまうと、1つの枝(細部)の議論が終わると、次の枝の議論になってしまい、全体の議論に至らない。これを、ムササビ議論と呼ぶ」といった指摘(p239)は、皆さん思い当たるところがあるでしょう。長い会議や、回数だけ重ねているのに、結論が出ない会議です(笑い)。
読者としては、政策を創っている人やこれから政策を創っていく人、30~40代の町を盛り上げようとしている人を中心に、考えておられるそうです。この本は、政策基礎力原論ともいうべき書物で、読みこなすには少し努力が必要かもしれません。政策を作ることができる幹部を目指している職員の皆さん、チャレンジしてください。

10年間の公務員給与引き下げ

民間企業の給与が減っていることに合わせ、公務員の給与も削減されています。平成11年以降毎年のように、人事院勧告が引き下げられてきました。どの程度下がったのか、専門家に聞きました。平成22年夏の人事院勧告に、次のような記述があります。
・・公務員給与は、民間賃金が厳しい状況にあったことを反映して、平成11年に年間給与が減少に転じて以降、平成19年を除き、月例給又は特別給の減額による年間給与の減少(平成11年~平成15年、平成17年及び平成21年)又は据置き(平成16年、平成18年及び平成20年)が続いている。年間給与が減少に転じる前の平成10年と平成21年について、40歳の国家公務員のモデル例(配偶者・子2人)で比較してみると、その年間給与は、本府省勤務の係長で約12.8%、地方機関(地域手当非支給地)勤務の係長で約17.5%それぞれ減少している・・(別紙第1 職員の給与等に関する報告p1)。
累計では、1割以上も下がっているのですね。さらにこのあと、平成22年も引き下げられました。地方では地域手当見直しで、さらに大きく下がっています。
給与勧告の仕組みと本年の勧告のポイント」の7ページ(9枚目)に、わかりやすい表がついています。平成11年から22年までの間、19年は引き上げですが、16、18、20年は勧告なし、そのほかの年度は引き下げです。

公務員制度改革論

人事院の広報誌『人事院月報』2011年2月号が、ドイツとイギリスの幹部公務員人事を取り上げています。それぞれの人事委員会幹部を招いての、パネル・ディスカッションの報告です。そこで、大杉覚首都大学東京教授が、人事行政や公務員制度について、体系だった研究蓄積がなく、制度設計研究が必要であることを、指摘しておられます。
同感です。採用、昇進、評価、育成、退職とその後の処遇。また、幹部公務員にあっては、その任用方法や、政治家との関係をどうするかなど。公務員制度改革が長く議論になっていますが、議論の基礎となる共通の認識がないこと、議論する政策共同体が十分でないことから、百家争鳴になっているようです。公務員バッシングとも言われますが、その割には出口は見えません。
改革の目的と議論の対象者をそれぞれ明確にして議論しないと、結論が出ません。まずは、公務員一般と幹部公務員を分けて議論すべきです。そして、成果や能力による評価の議論と、スト権付与と、政官関係は、分けて議論すべきでしょう。公務員に何を求めるか、民間と何を変えるべきなのかです。
これまで「日本の官僚は優秀だ」と言われていたことから、その問題点や改革論が議論されなかったのだと思います。しかし、官僚と公務員が必要なことは、世界各国共通です。諸外国がどのような運用をしているのか参考にして、現在の日本に適したものを作ればよいのでしょう。その際に国によって違うのは、政治家との役割分担が各国の事情によって異なることや、民間での処遇や転職の状況でしょう。後者は、公務員の処遇を考える際や民間との交流、転職を考える場合に必要となります。

公務員制度改革、職員の意欲

9月21日、日経新聞経済教室、加藤創太教授「公務員制度改革の論点」の発言から。
・・公務員制度改革の目的は、①国家と公務員の目指す方向性を一致させ、②政官の役割分担を定め、③目指すべき方向性に向け「個」の公務員の意欲・活力を最大化させることに尽きるはずである。これは企業など他の組織改革と変わらない・・
そして、先進各国の人口1,000人当たり公務員数と、GDP比の公務員人件費の図が掲げられています。日本は極端に少ないのです。
・・日本は先進民主主義国家の中で、人口当たりの国家公務員数が非常に少ない。その上さらに公務員人件費を縮減しつつ、望ましい公務員制度改革を達成するためには、よほど効率よく①②③を達成しなければならない・・
・・企業などの組織改革でトップが最も重視するのは、構成員へのインセンティブ(誘因)の付与であろう。適切なインセンティブを与えることで構成員を前向きに正しい方向へと誘導できれば、構成員の意欲の最大化だけでなく、組織と構成員の方向性の一致も実現できるからだ。これに対し、トップが構成員を強権的に抑えつければ、方向性は一致できるかもしれないが、意欲が損なわれる。
だが、同じ人間の組織を扱っているにもかかわらず、公務員制度改革では公務員にインセンティブを与えるという前向きの議論は少なかった・・