カテゴリー別アーカイブ: 官僚論

行政-官僚論

国会質問の答弁案作成

10月31日、11月1日と衆議院本会議で代表質問が行われ、明日11月2日には参議院本会議が開かれます。毎日、復興関係の質問が出ています。職員は、その総理答弁案と復興大臣答弁案を作成しています。
1日の質問の中には、31日の夜11時過ぎに通告があったものがありました。それから答弁案を作るので、できるのは真夜中になります。いつものように、私は自宅のパソコンに答弁案を送ってもらって、確認しています。すみません、私だけ早く家に帰って。
でもねえ、23時過ぎに質問が通告されるとは・・。部下に常々「残業するな」「早く帰れ」と言っているのですが、これではどうにもなりません。

内弁慶の旧軍、官僚

「国内で威張っている」ことと「世界での評価」のズレを書いていて、思い出しました。先日紹介した、ハンチントン著『国家と軍人』です(9月26日の記事)。
そこでは、旧日本軍の軍人の特徴として、物質的要素がきわめて低く評価され、その代わりに精神的要素が決定的な意味を持っていたことが指摘されています(p127)。これは、通説になっています。私が考え込んだのは、次のような指摘です。
・・知性の低下と精神の高揚は、日本で職業軍人の著述の著しい欠如という結果をもたらした。1905年から1945年まで、日本は、強大な海軍力を持っていたが、海軍力の本質とその行使についての重要な理論を定式化した評論家は、日本には一人もいなかった。第二次世界大戦以前におけるこの問題についての日本人の著作は、人気取りのものか、極めて初歩的なものかのどちらかであった。学問的な分析はみられなかった。同じことは、陸上作戦についても当てはまる・・(p128)。
世界一の行政サービス水準を達成した後の、日本の官僚にも当てはまるかもしれません。日本の官僚機構は、「日本で最高のシンクタンク」と、高く評価されていました。しかし、各省の組織がどれくらい政策を提言し、官僚が個人として政策を提言しているでしょうか。
また国際的には、例えば発展途上国に対し、どれくらい知識を輸出することでそれらの国の近代化に貢献したでしょうか。我が身を振り返り、反省。
「海外協力庁」をつくって、制度や経験を「輸出」すれば良かったですね。モノの輸出やお金の支援以上に。後発国に比べ先に発展した日本の経験は、後発国にとって良いお手本(良い面も悪い面も)になると思います。日本が、法制度を輸入しながら輸出には熱心でなかったことについては、「2011年10月19日」の記述を見てください。

8月は休めない

職員との会話です。
職員A:夏休みを取って、良いですか?
全勝:もちろん。ところで、何日休むの?
職員A:3日です。
全:だめ。そんな短いのでは。1週間は、休みなさい。

全:あんたは、夏休みを取ったの?
職員B:いいえ、今は予算要求の時期ですから。統括官だって、休んでいないじゃないですか。
全:ごめん。

今は8月。世間では夏休みで、家族旅行なども多いと思います。ところが、霞ヶ関では、その世間の常識に反した(?)仕事のスケジュールが、永年続いています。
例年7月に、翌年度の予算要求の基準(いわゆるシーリング)が示されます。それを受けて、8月末に各省から予算要求書が、財務省に提出されます。今年は、8月17日に基準が示され、要求締め切りは9月7日です。
すなわち、要求する側の各省は、7月と8月は、来年に向かって予算要求書を作り・とりまとめる「真っ盛り」なのです。各課で原案を作り、局で調整し、さらに各省で調整します。そして、与党との調整も必要です。で、結局予算に関係する職員は、休めないのです。
代案は例えば、提出期限を9月末にしてもらって、予算査定は10月から。というようになれば、みんな休めるのですが。

民間から見た行政と官僚

今日は始業前に企業の方と、放課後にはNPOの方と、意見交換をしてきました。というか、外(民間)から見た、復興や官僚のあり方について、ご批判を頂く会でした(笑い)。それぞれ行政と関わりがあり、問題意識を持っておられる方からの「苦言」なので、きついですが、会話が成り立つのでその点では楽でした。
いくつかの指摘について、「それは私の責任ではありません」と言い訳したいところですが、この歳、この立場になると、そうもいかず。変な言い訳をするより、私が思っている「行政の悪い点」「官僚の欠点」を説明しました。
当然、向こうさんの反応は、「じゃあ、全勝さんはその欠点をどう変えるのですか」という突っ込みです。「復興に関しては、今まさに努力中」「官僚制については、時間ができたら論文を書いて、世に問います」としか答えられませんでした。
異業種の方との議論、そして中には初対面の方がおられ、これはいささか緊張する場面でした。どのように説明したら、理解していただけるか。初めての方は、その程度がわからないので。しかし、外からの批判は、勉強になります。

人事評価の季節

3月末。官庁では、人事評価の季節です。半年に一度、各人が目標を立て、申告する。半年後に、それを自己評価するとともに、上司が達成度を評価します。
私は、評価という行為とともに、部下と上司が、目標や何が欠けているか何を期待しているかを共有する、良い機会だと考えています。「2011年9月26日の記事」をお読みください。
私の経験でも、案外、意思疎通できないことがあり、驚きます。「言わなくてもわかるはずだ」とか、「ふだんからコミュニケーションをしているから、私は大丈夫。一緒に飲みにいっているし」は、通じませんよ。
優秀な部下と上司の場合は、問題ありません。部下が「私の上司は指示があいまいで、良くわからない」というような場合。上司が部下に対して「彼は期待通りの仕事をしてくれない」といった場合に、この「目標設定」「事後評価」そしてそのための「面談」が有用です。
期待する水準に達していない部下を導くこと。これが重要です。ボーナスに差を付けることだけが、主要な目的ではありません。
さらにその上の上司になると、もう一つの効用が付け加わります。例えば、課員AさんとBさんの評価を、課長Cさんがします。それを局長Dが見ているとします。C課長はA課員とB課員を評価しているのですが、その評価ぶりをD局長に評価されています。
D局長から見ると「C課長は、Aさんをこのように高く評価し、Bさんを低く評価している。Bさんの方が良く仕事ができるのに、相性が合わないのか、見る目がないのかなあ。一度探ってみる必要があるなあ」と。