カテゴリーアーカイブ:官僚論

官僚の勤務の実態

2019年3月29日   岡本全勝

NHKニュースウエッブが「官僚の妻・夫の叫び ~子どもが持てない、残業代がでない」を載せています。中央省庁の若手官僚の、残業の実態と安い給料が説明されています。原文をお読みください。

かつて「官僚は、給料も良く、身分も保障されている」とうらやましがられ、時に批判の対象となりました。いまや、実情は大きく変わっています。
給料は民間に準拠している建前ですが、難関大学を卒業し、大企業に就職した同級生たちがもらっている給料と比べると、恥ずかしくなります。原因の一つには、企業の場合は同じ学歴同じ年齢でも競争が激しく、給料の差も大きいことに対して、公務員の場合は平等性が強いこともあると思います。

残念ながら、仕事のやりがいの少ない場合、そして給料の低さを実感して、若手官僚が民間企業に転職する例が多くなりました。

統計不正問題2、仕事の流儀

2019年3月4日   岡本全勝

統計不正問題」の続きです。2つめは、失敗の原因です。
詳細は、調査によって明らかになっていくでしょうが、私は職場慣行の問題と関連させて考えています。
すなわち、「前例通りに仕事をする」「引継書で仕事をする」という職場慣習が、今回の問題の背景にあるのではないでしょうか。

日本の役所では(企業でも同じと思いますが)、異動した際に、新しい職に就いたときに、上司から「あなたのすることはこれだ」と指示を受けることが少ないです。前任者の資料と引継書を見て、また周りの同僚たちに聞きながら、仕事を覚え処理します。大部屋でみんなと一緒に仕事をしている場合は、これで効率的だったのです。

しかし、
・新しい事態に対応できない
・目標と執行管理が不十分になる
・管理職が責任を持たない
などの欠点があります。

今回の統計不正(法令に定められたとおりに実施せず手を抜いたこと)も、「前任者と同じように仕事をする」ことが、間違いが続いた理由の一つでしょう。上司が確認していたら、あるいは職員が入れ替わった際に仕事の内容を指示していたら、防げたはずです。

現場の事実を確認せずに書いているので、間違っていたらごめんなさい。

統計不正問題、官僚の責任

2019年3月2日   岡本全勝

厚生労働省の統計不正が、問題になっています。まだ究明途中なので、意見を書くことは難しいのですが。現時点で気になったことを、書いてみます。
その一つは、政治家の責任と官僚の責任です。

2月18日の日経新聞の世論調査結果では、厚生労働省の毎月勤労統計の不正問題で最も責任があるのは誰かを聞くと、
「これまでの厚生労働大臣」が34%、「厚生労働省の官僚」が31%でした。
厚生労働省の最高責任者は大臣ですから、大臣に責任があるという回答も、わからなくはありません。
しかし、統計調査の実施は、官僚たち事務方が責任を持って行うべきことです。統計の対象や手法について大きな見直しを行う際は、大臣らによる判断が必要な場合もあるでしょうが。

かつてなら、官僚の責任範囲はもっと大きかったと思います。大臣ら政治家の責任範囲が、近年広がってきたようです。
例えば、2018年に問題になった財務省での文書破棄問題も、大臣が記者会見で説明していましたが、事務方が説明し責任を取るべき問題でしょう。大臣が、局長以下の文書管理や文書の扱いを細かく知っているはずもなく、またそんなことまで管理していたら重要な仕事ができません。
近年の「政治主導」は良いことと考えていますが、事務的なことまで大臣に責任を持たせることは、かえって政治主導が効果的でなくなる恐れがあります。この項続く

公務員の専門性向上策

2019年2月4日   岡本全勝

2月1日の日経新聞経済教室、藤田由紀子・学習院大学教授の「公務員制度改革の視点 専門性向上へ評価明確に」は、公務員の能力や専門性について、イギリスの経験を引きながら論じておられます。

・・・日本の国家公務員制度にはこうした専門性を基軸とする府省横断的ネットワークはほぼ皆無だ。人事管理は府省ごとに行われ、帰属する府省への忠誠心の強さがセクショナリズムの一因と指摘される。

人材育成の基本は、新卒で一括採用した者を業務を通じた職場内訓練(OJT)で育成し、数年ごとの異動であらゆる分野・業務に対応できるゼネラリストにすることだ。また「大部屋主義」と呼ばれる集団的執務体制の伝統により、職務記述書が作成される慣行もないため、各職員の職務や責任が曖昧で、その専門性も「暗黙知」とされてきた。
現行の人事評価制度での能力評価も、倫理、構想、判断、説明・調整など、公務員としての一般的能力を示す項目を中心に構成される。今日の行政課題に対応しうる具体的な専門性を問うものではない。

さらに日本の公務員制度は一括採用や内部者の定期異動などでポストが補充され、個人のキャリア形成が人事部門の決定に委ねられる面が大きい。この点も専門性への関心の薄さに影響を与えている・・・

『現代日本の公務員人事』

2019年2月3日   岡本全勝

現代日本の公務員人事-政治・行政改革は人事システムをどう変えたか』(2019年、第一法規)を紹介します。この本は、稲継裕昭・早稲田大学教授の還暦記念論文集です。先生にゆかりのある方による、共同研究の成果です。

はしがきに、次のように書かれています。
・・・戦後半世紀もの間、日本の発展を支えてきた社会経済システムは、21世紀の到来を前に深刻な制度疲労に陥り、内外の大きな情勢変化に的確に対応することが困難となった。そこで、1990年代から「明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革」というスローガンの下、様々な制度改革が連続的に行われてきた。
本書の狙いは、そのような一連の改革を経験した日本の公務員人事システムがどのように「変化」したかを多角的に捉えることである・・
そして、様々な観点からの分析が集められています。

公務員人事行政も、近年いくつも改革が行われるとともに、期待される役割、社会での位置づけなどが変化し、過去の教科書が使えなくなりました。さらに、政治主導の強化とともに、特に国家公務員がかかわる不祥事・不正が続き、制度でなく実態や運用の変化も大きくなっています。そして、その変化はさらに続くでしょう。
この本は、時宜を得たものです。ありがとうございます。

稲継先生は、公務員経験もあり、日本の公務員人事を研究してこられました。そして、行政関係の著作もたくさんあります。そのエネルギーに感心しつつ、このホームページでも紹介してきました。
これだけの研究者が集まり、還暦記念論文集を出版してもらえるのは、稲継先生の人徳ですね。