「官僚論」カテゴリーアーカイブ

行政-官僚論

東大生の官僚離れ

NHKウエッブニュースに「なぜ?東大生の“官僚離れ”」が載っていました。原文を読んでいただくとして、数カ所引用します。

・・・かつて東京大学から霞が関といえば、典型的なエリートコースでした。しかし、今の東大生には自分たちが進む道として魅力的に思えないようです・・・
・・・これは人事院が公表した去年のキャリア官僚試験の合格者を出身大学別にまとめた表です。
東京大学は329人で最も多く、2位の京都大学とはダブルスコアです。でも合格者に占める東大生の比率を計算すると、16.8%。この10年間のピークだった平成22年度の、およそ半分に減っていました・・・

・・・なぜ東大生は官僚を目指さなくなったのか。その理由を、毎年の卒業生の進路を調べている「東京大学新聞」の編集部に聞きました。
就職記事を担当している衛藤健さん(教養学部4年)が、理由を整理してくれました。
1官僚の長時間労働に対する忌避感が強まっている。
2景気が回復し、就職先として民間企業の魅力が増した。
3待遇は大企業に比べて低いのに国民の評価は低く、報われない。
4衰退に向かう日本という「沈む船」には乗りたくない。・・・

官僚の勤務の実態

NHKニュースウエッブが「官僚の妻・夫の叫び ~子どもが持てない、残業代がでない」を載せています。中央省庁の若手官僚の、残業の実態と安い給料が説明されています。原文をお読みください。

かつて「官僚は、給料も良く、身分も保障されている」とうらやましがられ、時に批判の対象となりました。いまや、実情は大きく変わっています。
給料は民間に準拠している建前ですが、難関大学を卒業し、大企業に就職した同級生たちがもらっている給料と比べると、恥ずかしくなります。原因の一つには、企業の場合は同じ学歴同じ年齢でも競争が激しく、給料の差も大きいことに対して、公務員の場合は平等性が強いこともあると思います。

残念ながら、仕事のやりがいの少ない場合、そして給料の低さを実感して、若手官僚が民間企業に転職する例が多くなりました。

統計不正問題2、仕事の流儀

統計不正問題」の続きです。2つめは、失敗の原因です。
詳細は、調査によって明らかになっていくでしょうが、私は職場慣行の問題と関連させて考えています。
すなわち、「前例通りに仕事をする」「引継書で仕事をする」という職場慣習が、今回の問題の背景にあるのではないでしょうか。

日本の役所では(企業でも同じと思いますが)、異動した際に、新しい職に就いたときに、上司から「あなたのすることはこれだ」と指示を受けることが少ないです。前任者の資料と引継書を見て、また周りの同僚たちに聞きながら、仕事を覚え処理します。大部屋でみんなと一緒に仕事をしている場合は、これで効率的だったのです。

しかし、
・新しい事態に対応できない
・目標と執行管理が不十分になる
・管理職が責任を持たない
などの欠点があります。

今回の統計不正(法令に定められたとおりに実施せず手を抜いたこと)も、「前任者と同じように仕事をする」ことが、間違いが続いた理由の一つでしょう。上司が確認していたら、あるいは職員が入れ替わった際に仕事の内容を指示していたら、防げたはずです。

現場の事実を確認せずに書いているので、間違っていたらごめんなさい。

統計不正問題、官僚の責任

厚生労働省の統計不正が、問題になっています。まだ究明途中なので、意見を書くことは難しいのですが。現時点で気になったことを、書いてみます。
その一つは、政治家の責任と官僚の責任です。

2月18日の日経新聞の世論調査結果では、厚生労働省の毎月勤労統計の不正問題で最も責任があるのは誰かを聞くと、
「これまでの厚生労働大臣」が34%、「厚生労働省の官僚」が31%でした。
厚生労働省の最高責任者は大臣ですから、大臣に責任があるという回答も、わからなくはありません。
しかし、統計調査の実施は、官僚たち事務方が責任を持って行うべきことです。統計の対象や手法について大きな見直しを行う際は、大臣らによる判断が必要な場合もあるでしょうが。

かつてなら、官僚の責任範囲はもっと大きかったと思います。大臣ら政治家の責任範囲が、近年広がってきたようです。
例えば、2018年に問題になった財務省での文書破棄問題も、大臣が記者会見で説明していましたが、事務方が説明し責任を取るべき問題でしょう。大臣が、局長以下の文書管理や文書の扱いを細かく知っているはずもなく、またそんなことまで管理していたら重要な仕事ができません。
近年の「政治主導」は良いことと考えていますが、事務的なことまで大臣に責任を持たせることは、かえって政治主導が効果的でなくなる恐れがあります。この項続く

公務員の専門性向上策

2月1日の日経新聞経済教室、藤田由紀子・学習院大学教授の「公務員制度改革の視点 専門性向上へ評価明確に」は、公務員の能力や専門性について、イギリスの経験を引きながら論じておられます。

・・・日本の国家公務員制度にはこうした専門性を基軸とする府省横断的ネットワークはほぼ皆無だ。人事管理は府省ごとに行われ、帰属する府省への忠誠心の強さがセクショナリズムの一因と指摘される。

人材育成の基本は、新卒で一括採用した者を業務を通じた職場内訓練(OJT)で育成し、数年ごとの異動であらゆる分野・業務に対応できるゼネラリストにすることだ。また「大部屋主義」と呼ばれる集団的執務体制の伝統により、職務記述書が作成される慣行もないため、各職員の職務や責任が曖昧で、その専門性も「暗黙知」とされてきた。
現行の人事評価制度での能力評価も、倫理、構想、判断、説明・調整など、公務員としての一般的能力を示す項目を中心に構成される。今日の行政課題に対応しうる具体的な専門性を問うものではない。

さらに日本の公務員制度は一括採用や内部者の定期異動などでポストが補充され、個人のキャリア形成が人事部門の決定に委ねられる面が大きい。この点も専門性への関心の薄さに影響を与えている・・・