久しぶりに、ブログ「自治体のツボ」を紹介します。「2020年自治体のツボ」
相変わらず精力的に書き続けています。全国各地の地方行財政に関する話題を、丹念に拾っています。これは、かなり労力が必要でしょう。
話題に対する意見も、積極的で、辛口なものも多いです。かなりの専門家とお見受けします。自治体関係者には、役に立つことがあると思います。
記事についている写真も、楽しみです。記事とはほとんど関係なく、食べ物が多いようです。
地方行財政-地方行政
6月7日の読売新聞が「「増田リポート」10年 人口減 地方雇用創出が急務 格差是正で女性定着カギ」を解説していました。
・・・増田寛也・元総務相(現在は日本郵政社長)らがまとめ、人口減少問題に警鐘を鳴らした「増田リポート」の公表から、今年で10年となる。少子化の要因の一つとして、若い女性が東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)に流出する動きに着目したが、国の対策の効果は限定的で、「一極集中」に歯止めはかかっていない。地方で若い女性が魅力を感じる雇用の場を確保していくことが急務だ。
2040年までに全国の自治体の約半数が消滅する可能性がある——。13年11月から順次、公表されたリポートが示す将来像は衝撃をもって受け止められた。
リポートでは、人口減少対策には、次世代の子どもを産む、人口の「再生産力」が重要だと指摘し、20〜39歳の女性人口に着目した。都市部への人口流入が収束しない前提で将来人口を試算し、10年〜40年の間に若い女性が5割以下に減る自治体が、896自治体に上ると指摘。「消滅可能性都市」と呼びリスト化した。
896自治体のうち40年時点で人口が1万人を割り込む523自治体については、「このままでは消滅の可能性が高い」と踏み込み、「若年女性が減少し続ける限り、総人口の減少に歯止めがかからない」と訴えた。
増田リポートは、地方創生など、政府が取り組みを強化するきっかけとなったが、コロナ禍などを経て状況は悪化している・・・
・・・若い女性が職を求めて東京圏に流入しているとみられている。22年の女性の転入超過は約5万4000人。年齢別では、「20〜24歳」が約3万9000人にのぼった。公益財団法人「東北活性化研究センター」(仙台市)が20年、18〜29歳の女性を対象にした調査によると、東京圏への就職理由として「希望する就職先がその場所にあった」が53・4%でトップだった。
ニッセイ基礎研究所の天野馨南子(かなこ)・人口動態シニアリサーチャーは、「女性流出によって、地方では若い男女のバランスが崩れている。地元で結婚するカップルが少なくなれば人口減少は激しく進む」と指摘する。その上で「地方では子育て支援だけでなく、男女の賃金格差の是正によって女性定着に注力する必要がある」と強調している・・・
3月31日の日経新聞に「教職 魅力向上へ「2本柱」」が載っていました。
・・・教職の人気低迷を受け、学校の労働環境改善に向けた動きが活発になってきた。長時間労働の一因となっている事務作業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を急ぎ、給与制度は勤務状況に合うよう見直す議論が始まった。優秀な人材を確保するためには働き方と待遇の「2本柱」の改革が欠かせない。現場の人材不足は深刻で、取り組みのスピード感が求められる・・・
・・・日本の教員は事務作業に費やす時間が長い。18年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、中学教員が1週間で事務作業にあてる時間は5.6時間で、参加した48カ国・地域で最も長く、平均(2.7時間)の2倍を上回る。
教員のストレスにもなっており、同調査で「事務的な業務が多すぎる」と答えた割合は小学教員61.9%、中学教員52.5%だった。文部科学省幹部は「民間企業と比べ業務のDXが遅れたのが響いている」とみる・・・
時代遅れの事例や改善された具体例が載っています。でも、このようなことは、かなり以前から指摘されていましたよね。
学校行政の閉鎖性、市町村長が責任を持っていない、文科省が現場の問題を拾わないなどが、動きの鈍い原因でしょう。大学の教育学部も、役に立っていないのでしょうか。
3月30日の朝日新聞夕刊「どうなる寄宿舎4」「廃止の決定 当事者抜きで」から。
・・・2022年5月20日、栃木県立那須特別支援学校(那須塩原市)の体育館に保護者が集まった。県教育委員会は21年11月、那須、栃木(栃木市)両特別支援学校の寄宿舎を23年3月末で廃止する、と全校の保護者に通知した。通知から4カ月後の22年3月に1回目、この日が2回目の保護者への説明会だった。
約7年かけて廃止を検討してきた、と県教委の特別支援教育室長が説明すると、父親の1人が質問した。「検討の過程でなぜ、寄宿舎生とその親の意見を聞かなかったのですか」
室長が「検討の場には保護者の代表にも入っていただきました」と返すと、体育館はどよめいた。「聞いていない!」。母親の1人が立ち上がり、「ここ15年間のPTA会長がこの場に来ています。誰も聞いていません」と言った。
朝日新聞が開示請求で入手した県教委の会議録によると、21年5月、非公開の有識者会議が1度限りで開かれていた。特別支援学校の保護者1人が参加していたが、子どもは寄宿舎を利用していなかった。
県教委は、当事者の意見を聞かずに廃止を決めた過程をどう総括するのか。阿久沢真理教育長に取材を申し込んだが、「どの社の取材も受けていない。お断りします」(総務課)との返答だった・・・
「どの社の取材も受けていない。お断りします」が、取材を受けない理由になるのですかね。
議会はどのような議論をしたのでしょうか。知事や市町村長が責任を持たない教育委員制度は、問題が多いです。
(追記)
と書いたら、31日の夕刊に「5 密室の審議、存続の願いは」で、県議会の審議が書かれていました。委員会審議は、すべて非公開だそうです。会議録の開示も、ほとんどが塗りつぶされていたそうです。なぜこの議題が、秘密にしなければならないのでしょうか。
3月16日の日経新聞、斉藤徹弥・編集委員の「滝桜の三春、持続する自治 住民組織が土地利用も議論」から。
・・・人口減少で使われなくなった土地をどう管理していくのか。国が今夏に策定する国土計画は、地域の土地利用を住民が話し合って決める「国土の管理構想」という考え方を取り入れる。それを40年ほど前から実践している町があると聞き、福島県三春町を訪ねた・・・
・・・街づくりの中核は独自の住民自治組織「まちづくり協会」が担う。若い商業者らに街づくりの機運が高まっていた1982年、当時の伊藤寛町長が合併前の町村単位の7地区に設けた。
住民は同町出身の建築家、大高正人氏ら専門家を交えて三春らしい街づくりを考えた。「住民にとって何が必要か考え、住民との共同思考を重視する。そこで培われた住民自治の力が事業の成否を決める」。伊藤氏は退任後、日本建築学会でこう振り返っている。
住民自治は様々な分野で事業を前進させた。建築では三春住宅研究会や学校建築研究会といった公民連携に発展し、町に優れた建築を生んだ。
土地利用では農地や宅地などのゾーニングを協会が担った。住民は説明会やワークショップで土地の歴史や人口動向も踏まえた議論を重ね、土地利用計画をまとめた。会合は7地区で延べ205回に上ったという・・・
・・・国は国土の管理構想を市町村主体に進める方針で、三春の取り組みは一つの理想だ。そこでは首長の熱意や住民自治組織の力量が問われる。ただ住民自治組織は60〜70代が中心で、企業の定年延長もあり、人材確保は三春でも課題だ。
郡山市に隣接する岩江地区は子育て世代の流入が多い。新しい住民と関係を築くため、伊丹さんは通学や給食で子どもを見守る活動に力を入れ、健康づくりのサロン活動も始めた。地域に育てられた記憶が子どもに残れば、将来戻ってくるきっかけにもなる。
伊藤元町長は「住民がこだわりを持って造ったものには愛着が湧き、町を愛する心が生まれる」とも語っていた。住民自治の街づくりは人づくりでもある。時間と手間を要するが、地道に取り組み続けること自体が地域の持続につながる・・・