カテゴリーアーカイブ:地方行政

国が自治体に策定を求める行政計画

2022年8月22日   岡本全勝

8月9日の日経新聞に「計画策定に自治体悲鳴 分権改革会議、見直し議論へ」が載っていました。
・・・国が法令で自治体に策定を求める行政計画が増え、自治体から悲鳴が上がっている。全国知事会は「自治体の自由を縛る新たな形の関与だ」と指摘し、政府の「地方分権改革有識者会議」で見直しに向けた議論が本格的に始まった。国と地方を巡る分権改革の新しい課題だ。「計画漬け」にメスは入るだろうか・・・

内閣府によると、法律に計画策定が明記された条項数は2020年末で505もあるそうです。2010年時点では345だったので、この10年間に1.5倍になっています。
うち、義務づけが202、努力義務が87、できる規定が217です。できる規定は、つくるかどうかの判断を自治体に委ねているので問題なさそうですが、多くは計画を財政支援の条件にしていることと、自治体名が公表されるので、競わせることになります。

記事には、献血推進計画が取り上げられています。確かに、都道府県ができることには限りがあり、計画を作っても効果は疑問です。

安倍元首相の狙撃事件。県警警備の検証は

2022年7月21日   岡本全勝

安倍元首相の狙撃事件で、県警の警備が十分ではなかったのではないかと、国家公安委員長が現場を視察し、警察庁で検証が始まっています。元首相が殺害されたので、国での検証は必要でしょう。

ところで、県警察は県公安委員会の下にあり、県の組織です。県議会にも出席します。奈良県や県議会、県公安委員会の対応も問われます。「奈良県の組織」「7月13日、県公安委員会臨時会議

アメリカでの小学校での銃の乱射事件では、警察の対応を州議会が検証しています。警察の指揮官のリーダーシップ欠如だと指摘しています。

情報通信技術による救急搬送の効率化

2022年7月1日   岡本全勝

6月15日の朝日新聞に、「救急の時短・効率化、ICTでめざす 容体をタブレット入力→各病院に受け入れ一括要請」が載っていました。

・・・高齢化の急速な進行に伴い、搬送患者が増える救急医療現場で新たな情報通信技術(ICT)の導入を進める取り組みが本格化している。救急隊が患者を搬送する間、タブレット端末で病院と容体などの情報を共有し、病院到着後に迅速に治療を始められるようにする。急病の判別に活用するAI(人工知能)や、高速大容量回線を利用した検査画像の遠隔配信技術の開発も進み始めている。

119番通報で現場に到着した救急車の隊員が、患者の脈拍や血中の酸素濃度などの情報を手元のタブレット端末に音声入力していく。患者の情報やけがをした患部の写真をもとに、受け入れ可能と判断された救急病院がタブレット上に表示され、搬送先の医療機関が短時間で決まった。
千葉市消防局が2020年7月、本格的な運用を始めたのが、ICT(情報通信技術)を活用した新たな救急医療支援システムだ。
開発した「スマート119」(千葉市)が目指したのは、救急患者の搬送先がなかなか決まらない「たらい回し」の解決だ。119番通報による救急車の要請や指令の内容、患者の心肺情報、救急病院の受け入れ体制を、救急隊と医療機関、消防指令センターが端末を通じて共有。救急隊は患者の受け入れを各病院に一括要請できる。

従来、指令センターを通じた出動要請や、救急隊から各病院への受け入れ要請は、電話や無線を使った「アナログ・リレー方式」だった。搬送先が決まるまで救急隊が1件ずつ電話で呼吸や心拍などの情報を伝えて受け入れを求めていた。「電話では伝言ゲームのようになって全部の情報が病院に伝わらず、情報が制限されていた」と同社の最高経営責任者で千葉大大学院の中田孝明教授(救急集中治療医学)は話す。
病院にとっては患者の到着前により正確な情報を把握でき、事前に治療の準備を始めることで医療の質の向上にもつながる。山梨県東山梨消防本部で行ったシミュレーションでは、電話連絡に比べて搬送先が決まるまでにかかる時間が4分7秒短縮できたという・・・

NPOとの協働、地方の観光振興

2022年4月23日   岡本全勝

4月9日の日経新聞「データで読む地域再生」は「観光資源、NPOと磨く 企業参入少ない自治体で」でした。

・・・地方の観光振興の支え手としてNPO法人の存在が重要になっている。人口あたりの観光NPOの数で全国最多の鹿児島県は旅行消費額の伸び率が全国平均の3倍だ。民間企業が採算面で参入しづらい地域で、独自の観光資源を磨きあげようとするNPOの知恵と熱意は、新型コロナウイルス禍で注目を集める「マイクロツーリズム(近場の旅行)」時代に生きてくる・・・

過疎地域で、自治体が非営利団体と連携しています。民間企業がない、あるいは参入してくれない地域では、非営利団体は力強い味方です。
私もかつてはそう思っていたのですが、非営利団体・NPOと聞くと、ボランティア活動から連想して無償で活動する団体と思ってしまいます。それは間違いで、「もうけを会員で配らない」という意味です。すなわち、企業と同じように料金を取り、もうけを出してよいのです。違いは、そのもうけを会員に配らず、次の事業に充てることです。こうしてみると、非営利団体と企業とは、活動においてほとんど同じです。

1995年に起きた阪神・淡路大震災が、ボランティア元年と呼ばれました。2011年に起きた東日本大震災では、個人ボランティアだけでなく、法人格を持った非営利団体が大活躍しました。政府もそれらと積極的に連携して、被災者支援や町の復興に取り組んでもらいました。彼らには熱意や技術があるのですが、資金と信用力がありません。そこを、政府が補ったのです。
かつては「市民団体」は行政の敵とは言わないまでも、別世界の人でした。多くの人がそう考えていたのではないでしょうか。
東日本大震災での行政と非営利団体との協働は、その後の手本になったと考えています。この記事にある観光だけでなく、すでに孤立防止、引きこもり対策、子供の貧困対策などで、非営利団体の力を借りています。

小西砂千夫著『地方財政学』

2022年3月20日   岡本全勝

小西砂千夫先生が『地方財政学: 機能・制度・歴史』(2022年、有斐閣)を出版されました。500ページ近い大著です。これまでも先生はたくさんの地方財政の本を出版されていますが、それら研究成果の集大成でしょうか。

歳入と歳出の概要、国と地方の財政関係、財政調整制度の仕組みなど、日本の地方財政制度と実態を説明するだけでなく、次のような項目もあります。
 序章「統治」の学としての地方財政学
 第1部 地方財政をめぐる枠組み
  第1章 地方財政制度の起点
  第2章 地方財政をめぐる法的な枠組み
すなわち、制度の沿革にさかのぼり、なぜこのような制度ができているのか、政策制度の意図まで書かれています。学者による分析だけでなく、制度を設計した政府の側に立っての説明もあるのです。
これだけのことを書ける人は、なかなかいません。この本が定番になるでしょう。

冒頭のはしがきに、先生が、地方財政の制度運営(自治省)と研究(学界)との狭間を埋めることを任務とされた、いきさつが書かれています。私との対談(2004年)だそうです。光栄なことです。対談「地方交付税制度50年:三位一体改革とその先の分権へ」(月刊『地方財務』2005年1月号。対談の写真
先生は、総務省地方財政審議会会長に就任されました。