カテゴリー別アーカイブ: 地方行政

地方行財政-地方行政

地元へ戻らない若い女性

11月3日の朝日新聞に「地方創生旗振れど、若い女性は東京へ」が載っていました。

・・・地方で人口の減少が続いている。政府や自治体が「地方創生」の旗を振ってみても、若い女性らが地元を離れて東京圏に向かう流れに歯止めはかからない。なぜなのか・・・
・・・東京圏(1都3県)に向かって東北などの他の地域から転出したり、いったん転出した後に地元に戻ったりした全国の18~29歳の女性約2300人を対象に研究センターは昨年、調査を実施した。その結果、地元を離れる理由で最も多かったのは「やりたい仕事や、やりがいのある仕事が地方では見つからない」。全体の6割近くを占めた・・・

・・・しかし、地元を離れて東京圏などへ向かう人の流れは止まらない。総務省の住民基本台帳の人口移動報告によると、14~20年の合計で県外への転出者が転入者を上回った道府県は40に上る。
とりわけ流出が目立つのは女性だ。転出者から転入者を引いた「転出超過」を男女別にみると、女性の超過が男性を上回る道県は36あった。年齢別で見ると地元を離れるタイミングは20代前半が目立つ。人口動態に詳しいニッセイ基礎研究所の天野馨南子さんは、20代前半の移動は就職に伴うものが多いとみている。「地方の働く現場で男女の格差が是正されなければ、地方から東京圏への人口流出の問題は解消しない」と話す。
若い女性が地方から流出する傾向に歯止めがかからなければ、次世代を担う子どもの減少につながり、地域社会の維持が難しくなりかねない・・・

この話は、東日本大震災の被災地とその周辺地域でも聞きました。「消防団は最近の男女の比率はどれくらいですか」と聞いたら、「若い女性はいない。戻ってこないので、勧誘しようにもできない」という話もありました。若い男性が戻っても、結婚相手がいないのです。都会へのあこがれが生んだ、社会現象です。

分権後の自治体・知事会の役割

10月16日の朝日新聞夕刊「いま聞く」は、平井伸治・全国知事会新会長(鳥取県知事)の「対コロナ、地方からの「共闘」とは」でした。

・・・新型コロナへの対応を通じ、全国知事会の存在感が増した。国と意見を交わし、対策を引き出した。さらに「国民運動的な手法」で「共に闘う」という。このスローガンを提唱する新会長の平井伸治・鳥取県知事に具体策を尋ねた。
新型コロナの出現以後、全国知事会は多忙を極めた。平時なら、年に数回の会合を開き、国への要望をまとめる定型業務で事足りた。ところが地域住民の命が危険にさらされることとなり、現場で対応に当たる知事たちの状況は一変した。

昨年1月、新型コロナの感染拡大に対応するために知事会に緊急対策会議を立ち上げ、翌2月には緊急対策本部を設置。各知事がオンラインで参加し、問題提起や国への要望を共有する対策本部会議を30回近く開催した。総意としての「緊急提言」をまとめ、その都度、関係各大臣と意見交換した。
「新型コロナの副産物として、国と地方の対話の機会は飛躍的に増えました。そして地方の現場を預かる我々の声が、これまでになく尊重された1年半でもあった。知事会と政権との歴史において、初めての経験だったと思います」
「尊重された」という言葉通り、新型コロナ対応の中で知事会の議論が国を動かし、制度化されたものは複数ある。
例えば、事業者への休業補償。政府は当初、対応に否定的だったが、知事会の提言を受けて地方創生臨時交付金を使える仕組みが生まれ、「協力金」制度を法に明記するに至った。そして、緊急事態宣言に至らない予防措置としての「まん延防止等重点措置」も、知事会の議論から生まれたものだ・・・

2000年頃の地方分権改革の時代には、国に対し「戦う知事会」が脚光を浴びました。分権改革で一定の分権が進んだことから、その運用が問われる時代になっています。今回の新型コロナウイルス感染症対策では、その存在を高めたと思います。

朝日新聞「ふるさと納税見直しを」

8月13日の朝日新聞社説は「ふるさと納税「官製通販」見直しを」でした。

・・・ふるさと納税は、寄付額の多寡にかかわらず、自己負担は実質2千円だ。高所得者ほど返礼品を多く受け取れるうえ、税の優遇も大きい。コロナ禍による格差の是正が政策課題になるなか、不平等な仕組みをこれ以上放置することは許されない。
総務省によると、寄付額の45%が返礼品の購入費や、返礼品を選ぶ民間のポータルサイトへの手数料などに費やされている。昨年度の寄付額から換算すると、全体で約3千億円の税収が失われることになる・・・
・・・ふるさと納税の当初の趣旨は、寄付を通じて故郷に貢献してもらうことだった。しかし現状では「官製通信販売」になってしまっている。NTTグループの昨年の調査では、「出身地への貢献」のために制度を利用した人は12%しかいなかった・・・

政策勉強会「ポリシーガレージ」発足

政策勉強会「ポリシーガレージ」が発足します。
これは、自治体職員の学びと実践の場です。
1 ポリガレは、意欲ある自治体職員や市民とともに、地域の課題についてよりよい政策を作ること、そのような仲間を増やすことを目的としてます。
2 その手法として、ナッジ(そっと押す)などの科学的知見を使います。既にガン検診の受診率を上げるなどの成功例が出ています。
3 この組織に参加することで、月例研究会、オンラインゼミなど参加型の学びとともに、仲間を作るつながりの機会を提供します。

4月25日に、設立記念イベントがあります。有料です。それに先だって21日から、応援者による動画が配信されます。私も、23日夜に登場する予定です。代表者の津田君に、40分にわたり、インターネットを使って取材を受けました。
わが家の書斎で収録したので、背景に(乱雑でお見せしたくない)書棚が写っています。

緊急時の国と地方の役割分担

4月11日の読売新聞、辻哲夫・元厚労事務次官の「コロナで見えた予兆 増える高齢者 病床再編が必要」から。前回に続き、その2です。

・・・保健所の業務や機能についても逼迫が指摘されました。
保健所は1990年代の行政改革、地方分権推進の議論を受けて統廃合が進みましたが、国と自治体の権限、役割分担を改めて決める必要があります。もちろん「地方に任せるべき仕事は、任せる」のは当然です。しかし、コロナ禍のような危機的状況に直面した場合、国が司令塔として強い管理機能を持つことが重要です。
また、国は日頃から感染症対策の危機管理要員を育成し、いざという時、そのノウハウが自治体の保健所まで届く体制にする。

国は次期医療計画(2024~29年度)の重点事項に「新興感染症等の拡大時における医療」を加えました。国家プロジェクトとして感染症対策を見直す必要があります。感染症大流行との戦いは、いわば「有事」です。国際的な人口流動性を考えれば、今後も大流行は十数年に1度は起こりうる。安全保障の観点から感染症対策を考えるべきです・・・

東日本大震災の際も、通常の災害では県や市町村の役割である業務も、県や市町村の手に負えないため、国が乗り出しました。「地域でできることは地域で」というのが分権の思想ですが、緊急時には国が自治体を補完するべきです。