日経新聞が17日から社会面で、連載「震える小さな命。児童虐待防止法10年」を始めました。児童虐待は、新聞報道の中で、最も涙が出る話です。記事にも書いてありますが、各家庭の問題から、社会全体で取り組むべき課題へと変わりました。しかし、家庭の中で起きる、子供は外に訴える手段を持たないことが多いことなどから、なかなか有効な手は打てません。
介護保険制度もできて10年なのですが、こちらは「見えるサービス」なので、問題点の改善が容易です。行政は、人間関係、家庭の中の問題は、得意ではありません。
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行政-再チャレンジ
誰が、地域社会の問題を解決するか
昨日の続きです。小中学校での問題行動、例えば、いじめ、教師への暴力、学級崩壊、さらには不登校など。これらの問題に、誰が取り組み、だれが解決するかです。
かつては、このような問題は、本人が悪い子であり、親のしつけが悪い、と片付けられていたのでしょう。しかし、これだけ数が増えると、一個人、一家庭の問題とは、言っておられなくなります。学校での問題だから、教師が悪い、教師の責任だとも、言っておられないのです。
では、学校での問題行動は、どうしたら減らすことができるのでしょうか。それを、誰が取り組むのでしょうか。教育委員会と教師に任せていては、改善しないでしょう。原因は、学校現場だけにあるのではないのです。
そこには、原因として、社会の変化があると言わざるを得ません。そして、家庭や当事者だけでは解決できない問題であるということは、個人の問題・自己責任の問題から、社会の問題に変化したのです。
たとえば、交通事故死者は、政府や自治体、国民の長年の取り組みで、大幅に減らすことに成功しました。速度違反や飲酒運転の取り締まり、シートベルトなど事故を起こしても安全な車の開発、信号機・ガードレールなど施設の整備によってです(2010年1月3日の記事)。
私は、「新地方自治入門-行政の現在と未来」で、地域の財産を、自然環境、公共施設、制度資本、関係資本、文化資本に分けて説明しました(p190)。そして、公共施設や制度資本はお金と技術があればできるが、関係資本や文化資本は人間関係であり、それをつくるのは簡単ではないと述べました。児童生徒の問題行動の多発は、この分野に属します。
しかし、地方自治体が取り組まなければならない課題です。もちろん、市役所だけで解決できるものではありませんが、地域の人たちや組織を巻き込んで、対策を考えることができるのは、市町村です。
地方自治体の仕事は、このような地域住民の不安を解消することに、重点が移っています。「モノを増やすことから、関係の充実へ」。これが、私の主張です。
児童の問題行動
文部科学省が、子どもの暴力行為などの調査結果を発表しました(児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査)。それによると、平成21年度中の、小・中・高等学校での暴力行為の発生件数は約6万1千件です。うち生徒間暴力が3万4千件、対教師暴力が8千件もあります。器物損壊が1万7千件です。
小・中・高・特別支援学校での、いじめの認知件数は約7万3千件です。高等学校での不登校生徒数は約5万2千人、小・中学校の不登校児童生徒数は12万2千人です(8月5日発表)。高等学校での中途退学者数は約5万7千人です。小・中・高等学校で自殺した児童生徒は165人もいます。
これらの問題は、依然として減っていません。困ったことです。
定住外国人施策
内閣府共生社会政策統括官(局に相当)に、定住外国人施策推進室があります。これは、平成21年1月に設置されました。定住外国人が日本での暮らしに困っている、地元住民とうまく共生できないといった問題に対処するためです。定住外国人が多く住んでいる市町村では、問題を放置できないので、さまざまな取り組みがされています。それを、中央政府でも支援しようという趣旨です。
今日8月31日に、「日系定住外国人施策に関する基本指針」を、策定しました(概要はこちら)。定住外国人のなかでも、日系人が、平成に入って急増し、しかし日本語が話せない、経済危機によって生活が苦しいという状況にあります。そこで今回は、日系人に的を絞った対策を、策定しようとしています。定住外国人を、地域社会から排除しないこと。これも、地域が抱える新しい課題です。
ありがとうございます、宮地参事官。
就職氷河期
今朝の新聞各紙が、大学卒業生の就職率を伝えていました。この春の大学卒業者数は、54万人。うち、就職した人は33万人で、61%です。進学も就職もしなかった人は8.7万人、16%です。大学院などの進学者は7.3万人、13%。アルバイトなど一時的な仕事に就いた人は1.9万人、4%です。