第6回復興推進委員会の議論の中で、高橋紘士先生の「地域包括ケア」についてのお話が、勉強になりました。詳しくは資料(特にp2~6)を見ていただくとして、私が理解したことは次の通りです。
「地域」ということは、施設に入れて社会から切り離すのではなく、地域でみんなと一緒に支え合うことです。施設に入れてしまうと、社会から排除し、本人もやる気がなくなってぼけます。集中・排除型でなく、分散・溶け込み型です。
「包括」ということは、介護だけでなく、医療、そしてその前の保健・予防が一体となって支援することです。
さらにその際には、介護保険、病院、医療保険、検診といった「制度による支援」だけでなく、「その下」にインフォーマルな支援が必要です。先生がおっしゃったのは、「公的な制度が成り立つ前提には、親密性が必要である」「公助の前に、互助・共助が必要」ということでした。
互助はどのようにして作るかという点について、「互助は作るものではなく、生まれるものである。生まれるように誘導することだ」という発言にも、納得しました。
ところで、地域包括ケアの趣旨は、介護保険法に定められています。いずれ、「地域包括ケア法」あるいは「基本法」が必要なのでしょうね。
第5条第3項 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない。
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行政-再チャレンジ
パワハラの実態調査
厚生労働省が、12月12日に「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」報告書を公表しました。各紙が伝えていたので、ご覧になった方も多いと思います。
過去3年間にパワハラを受けた人は、25%に上っています。その内容は、精神的な攻撃、過大な要求、人間関係からの切り離し、個の侵害などです。具体的には、ひどい事例が並んでいます。
皆の前で大声で叱責。物をなげつけられる。ミスを皆の前で大声で言われる。就業間際に過大な仕事を毎回押し付ける。一人では無理だとわかっている仕事を一人でやらせる。挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった。プライベートな事を聞いてきたり、相手は既婚者であるにも関わらず独身の私にしつこく交際を迫ったなど(概要版p8)。
そのほかに、過小な要求(従業員全員に聞こえるように、程度の低い仕事を名指しで命じられた。草むしり)もあります。身体的な攻撃(胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げられた)に至っては、犯罪行為でしょう。
8割は上司から部下への行為ですが、部下から上司へが1%あります。
パワハラが発生する職場は、上司と部下のコミュニケーションが少ない職場や、正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場、残業が多い・休みが取り難い職場です。
2011年に労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」相談件数は、約4万6千件。2002年の7倍になっています。新しい職場での人間関係リスクが、認識されるようになったということでしょう。問題がわかれば、手を打つことができます。もっとも、これら家庭や職場の人間関係の問題に対しては、国による即効性のある対策は難しいです。
家庭内暴力、引きこもり、セクハラ、パワハラなど、家庭や職場の問題が、社会の問題だと認識されたということです。私は、これらを「社会関係リスク」としてとらえています。そして、政府と行政が取り組まなければならない、新しいフロンティアです。
小中学生の発達障害
小中学校の通常学級に在籍する生徒のうち、発達障害の可能性のある生徒がや6.5%いることが、文部科学省の調査でわかりました。6日の各紙が伝えています。全国で推計すると約60万人、40人学級だと1クラスに2~3人いることになります。2002年の調査でも6.3%でしたから、ほぼこれくらいいると考えられます。
この子どもたちは、「書く」「聞く」「計算する」の学習に困難を示す学習障害、注意力の欠如や衝動性といった注意欠陥多動性障害、知的発達に遅れのない高機能自閉症などです。なぜか、男子では9%、女子では4%です。
この問題について、これまでどのように対応してきたのでしょうか。また、この子たちは、成人してからどのような暮らしをしているのでしょうか。他人とのコミュニケーションがうまくいかないと、暮らしにくいです
人生の挫折を助ける
古くなりましたが、9月28日に、内閣官房の社会的包摂推進室が、「社会的排除にいたるプロセス~若年ケース・スタディから見る排除の過程」という調査報告書を公表しています。
この調査は、「現実に発生している様々な社会的排除状態に至る過程を、個々の人々のライフコースを追うことによって把握していく手法を採っている。いわばミクロの視点からの調査」です。
そこには、高校中退者(学校からの排除)、ホームレス(ネットカフェ等で生活する者も含む広義のホームレス)(住居からの排除)、非正規就労者(就労からの排除)、生活保護受給者(貧困)、シングル・マザー(機会からの排除)、自殺者(生からの排除)、薬物・アルコール依存症(機会からの排除)が取り上げられています。
社会的排除は、誤解を恐れずに言い換えると、「人生の挫折」というとわかりやすいと思います。単なる貧困(生活保護の対象)ではなく、社会で生きていく力を失った人たちです。
「人生に挫折する人は、弱い人だ」「運が悪いのだ」と、多くの人は考えます。それは当たっています。しかし、私もあなたも、そこに陥る可能性があるのです。
中退者も非正規就労も一定割合発生するということは、誰もが陥る可能性があるのです。交通事故、高齢による寝たきりや認知症と同じように、あなたやあなたの家族にも、可能性があります。他人事ではありません。その際に、立ち直る人もいれば、本人だけでは克服できず、家族でも支えきれない場合があります。
「人生でのリスク」という観点で考えましょう。病気については健康保険を、高齢による働けないリスクには年金制度を用意しました。これらは1961年です。交通事故については、自動車損害賠償責任保険(自賠責)を作りました。1955年です。高齢による衰えを、介護保険によって支えるようになったのは、2000年のことです。
それらのリスクと同じように、社会で支える仕組みと意識が必要です。
年金は金銭給付です。健康保険はお金の心配なく医者にかかることができる制度です。介護保険も、少しの負担で介護サービスを受けることができる仕組みです。
しかし、「人生での挫折」の場合は、お金や病院では救えません。一人ひとりに、寄り添って支える仕組みが必要です。
誰もが、病院や介護サービスを知っているように、これらの挫折を支える仕組みを作り、わかってもらえるようにしなければなりません。
そのためには、次のようなことが必要でしょう。挫折した人や家族が相談に行くことができる場所、相談に乗る職員の養成、社会への広報、それらへの投資(予算の増額)と責任を持つ役所の明確化です。
仮設住宅での包括ケア・2
引き続き、「仮設から医療を問う」、長純一先生の発言から。
・・たとえば感染症の時代は、抗生物質の登場で大勢の命が救われ、医療が劇的に効果を発揮しました。ところが医学はどんどん進歩し、医療技術の違いが命の長短に大きな差を生むことは少なくなった。むしろ生活習慣や貧困など、社会的要因のほうが寿命に大きな影響を持つ時代です。特に被災地では、社会的要因の影響が極めて大きい。医師にも社会性が求められています・・
・・病院で機械や管に囲まれて目いっぱい長生きをめざすだけではなく、自宅で自然に近い形で家族にみとられる選択肢もあっていい。生き死には本人の価値観で違ってくるはずです。老いや死は本来、哲学や宗教、倫理、経済も含む大きな枠の中で考えるべきことなんです。なのに日本では「医療の問題」と抱え込んできた。超高齢社会に正しく向き合えていないのだと思います・・
・・従来の医療は医学的な判断が中心の「治す医療」でした。もっと「支える医療」「寄り添う医療」を重視していく必要があると思います。患者さんの意見、希望にじっくり耳を傾ける。自己決定は民主主義の基本でもあります・・
・・低成長下における、超高齢社会の安定産業は間違いなく介護、福祉です。人が人のお世話をするから、海外に流出していくこともない。有力な地場産業です。ところが復興バブルの今は、建設ブームが起きている感じがします。やがてこのバブルが消え、被災地の経済が落ちていくときに、医療、保健、福祉が地域の基幹産業になっているよう、今から備えておく必要があります・・
今回の大震災で、初めて仮設住宅に介護のサポート拠点を作りました。今後のパイロット事業になると思います。